自然と魂 利根山光人の旅 異文化にみた畏敬と創造
世田谷美術館|東京都
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色の魔術、奔放な心象表現、莫大なエネルギー
本年4月の埼玉県美「メキシコへのまなざし」展で、メキシコ主題の絵画をまとめて見る機会があり、利根山光人を好きになった。
その流れから、この大回顧展を楽しみにしていた。
利根山光人は、世田谷に長く活動拠点を置いていた所縁もあり、ご遺族も含めて、当館との関係が深いようだ。当館は、没年直後の1995年に個展を開催しており、今回はその30年後に大回顧展を再び開催する運びである。
そのきっかけが、2019年から5年間、遺族の依頼を受けて、利根山の残したアトリエに美術館スタッフが調査に入り、資料を整理するなかで回顧展をやろうという企画に至ったというから、興味深い。そのおかげで、本展は、大きいモノから小さいモノまで、絵画だけでなく色々なモノまで、画業が捉えた多様な主題が、幅広く大量にある。
とは言いながらも、展示を主導するのはやはり、色で圧倒する大画面絵画の数々。賑やか、迫力、実に楽しく、利根山の真骨頂だと思う。
画家としての活動は、始まりがやや遅く、30代から本格化するようだ。初期の作品、佐久間ダムシリーズ等には、戦後の暗い時代感を映すかのように、思想的、社会派的な視線が画面に漂う。
これが、後代に語り継がれる1955年の「大メキシコ展」からのインスパイア、その後40歳頃になってメキシコに初渡航した辺りからは、作り出すイメージがどんどんと奔放に、心象表現的に、広がってゆく。メキシコ、祭り、といった主題の画面を、彩度高い色彩と変幻自在の筆触が、支配する。
このエネルギーが、私は好きだ。
50歳代には、木版肖像画の作品群で、マチスのような原色配置の幾何学的造形にも展開している。岡本太郎とは一時期ご近所同士であったとか、相互影響の跡がみられる。利根山も十分に「芸術は爆発だ」していると思う。割と知的に。この持ち前のエネルギーは、晩年の大画面のドン・キホーテ・シリーズにまで、衰えることはない。驚かされる。
展示作品の所蔵先は、自身の設立したアルテトネヤマ、勤務先の聖徳大学が大半を占める。その傍らで、世田谷美術館、岩手県北上市の利根山記念美術館、も相当数持っている。
何十年先にも末永く、安定して続けられる収蔵・展示体制が展開してゆくことを期待したいと感じた。
なお、同時開催のコレクション展「もうひとつの物語―女性美術家たちの100年」も、硬派なメッセージとともに作品の密度も高く、見応えあり。
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