
相国寺展―金閣・銀閣 鳳凰がみつめた美の歴史
東京藝術大学大学美術館|東京都
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都の粋(すい)
連休前に訪問です。承天閣美術館開館40周年を記念した相国寺展。
インバウンドで上京ハードルが上がった東人(あずまびと)としては大歓迎wお待ちしておりました!
------------『吾れ、新たに小寺を建てんと欲す』
黄金に眩い金閣寺(鹿苑寺)で有名な室町3代将軍・足利義満の発願で創建された相国寺。
創建当時は144万坪(ディズニーリゾートが複数入る規模)の広さを誇ったと伝えられ、1399年-応永6年-敷地内に建てられた七重大塔は高さ109.1m(大体20階のビル)で、なんと1914年-大正3年-まで500年以上建築物の高さ記録日本一を誇っていたそうで、現在も広い敷地を持つ洛北の大伽藍です。
京都にある5つの禅宗寺院の格付ランキング(京都五山)で堂々の2位だし、キラキラな金閣寺(鹿苑寺)も渋い銀閣寺(慈照寺)も【相国寺】の山外塔頭(一部の施設)という位置付けという、壮大な寺院相国寺。
…義満将軍、『小寺』って言ってなかったっけ?
寺院規模には首を捻りますが、文化財愛好者としては、数々の芸術家を育てて日本美術の粋を究める名作品の誕生を導いた相国寺という存在にはひたすら感謝。
私的な出色作品は①『渡唐天神図』雪舟筆 室町時代 15世紀、②『萩芒図屏風』長谷川等伯筆 桃山時代 16~17世紀、③『玉熨斗図』伊藤若冲筆 江戸時代 18世紀。
①の初出品作は、雪舟の若い頃の作品と言われています。相国寺の絵仏師(僧籍の絵師)だった雪舟の描く天神様は、紅梅の枝を背中に背負ったふっくらした輪郭の理知的な若々しい姿。なんだか作者本人を投影しているのでは?と思えます。しかし雪舟の作品を個人蔵で持ってるのも凄い。
②は初お目見えの等伯作品。金屏風に白い萩の花が精緻かつ絶妙な配置で描かれています。
右側に真っ白な花を配して、左側は金色の余白が大きく取られ、より奥行きを感じさせますね。眺めているとそよそよと風に揺れる様が想像されます。
花の白と枝葉の緑、背景の金色という最低限の色彩は、同じく金の背景に緑と藍の花の光琳の燕子花屏風にも共通するシンプルな日本の美を感じます。
③は若冲のデザイン性の先進さが伺える作品。画面に太く真っ黒な墨の一筆書きで宝珠と打ち出の小槌、蓑が描かれていて、いかにも縁起物な掛軸。
花びらのひとひら、雄蕊やニワトリの羽根1片まで精密に描く若冲の特徴とはまるで真逆な絵で、ふり幅広いよなぁとしみじみ思います。
大店のお正月、玄関正面に飾ってあったら似合いそうと思いましたが、実際鹿苑寺のお正月に飾られたそうです。
また、作品ではありませんが面白かったのが鹿苑寺(金閣寺)の襖絵を、訪問者目線で紹介したショート映像。
全て若冲の作品で、建物に入って最初の襖絵はウネウネとデフォルメの強い竹の画。
襖を開け進むと広間にて葡萄の襖絵に囲まれて、奥の間はお寺では珍しい芭蕉の絵がまるで異世界のような独自の空間を作り出しています。
訪問者を迎え入れる相国寺の美の空間、なんというかお寺そのものが京都(上方)の美意識である粋(すい)の結晶のようです。
至宝達をお手軽に都内で堪能できる展覧会でした。うーん、ありがたいわぁと噛み締めながらの鑑賞。
ちょっと残念だったのがお茶道具類等の物品キャプションで素材表記が無かったのと、会場の休憩椅子スペースが少ない点。
あとはグッズの価格がお財布に優しくない点で、世知辛さに夢見心地から現実に戻りました。
しかし連休明けの後期には雪舟、俵屋宗達、丸山応挙の重文作品展示も控えており、また再訪の予感です。
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