4.0
面白かったです。
知識も何もない、ただの「椅子好き」の私ですが、とても面白かったです。私達くらいの世代の者は、金属と集成材の、シンプルで機能的で工場量産型の家具が、なんとなく懐かしい記憶の中にあります。高度経済成長期にとにかく安く大量生産できるものに走った日本。そんな日本の大量生産家具とは違う、彼のデザインは、とても凛とした美しさがあります。学校の椅子と机セットの展示がありましたが、とてもかっこいいと思いました。それからランウェイを歩くモデルよろしく、壇上にずらっとスタンダードチェアーの並ぶ光景は、何とも圧巻でした。機能的なモノも本当はとても美しいのですね。ジャン・プルーヴェと、私の好きなシャルロット・ぺリアンの家具も、八木保氏は蒐集してきていて、その本がこの春出て、なんとなく、きっと全然分からないのだろうけれど、この展覧会には行かなければ、と思ってしまいました。分からないなりに展示の仕方も面白く、前半家具で後半建築になる展示なのですが、前半の途中、吹き抜けの上階通路から下階の建造物の展示が見られるのは、なかなかない体験で面白かったです。家具のように、簡単に解体できて、軽量で運搬や移築できる建築を目指した彼の建築の数々を見るにつけ、その良さが発揮された場所が、少し羨ましく思えました。避難所施設などがこうして簡単に出来たなら…。でも日本には、その資材や工法があったとしても先ず、土地がありません。気候的にも難があるかもしれません。デザインとは関係のないそんな思いが湧いてしまいました。そうして最後に、1時間とかなり長いのでしんどくはあったのですが、映画が上映されていて、これがとても分かりやすかったと思います。これを見てやっとこの展覧会を見に来た、という実感を得ました。