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威厳に満ちた像に思わず掌を合わせる
聖林寺の国宝「十一面観音菩薩立像」木心乾漆造り、漆箔 は、像高が209.1㎝もあり、そのお像が1mほどの台座の上に立っておいでになる。
がっしりした身体つきで、口元はきつく結ばれて、前に立つ私たちを厳しく見下ろしておられる。
お像のすぐそばに展示されている「台座蓮弁」1枚からもその大きさは目の前で観ている以上なのかもしれない。
お像の周りを360度から拝見できるのだが、圧倒的な存在感にこの「十一面観音菩薩立像」を前に私も周りにいらした方々も無言で見上げるだけ。
コロナ禍、ウクライナ、東北の震災からちょうど11年と様々なことも過ぎる方もいたでしょう。
手の指には細い鉄の芯が通っており、手の指先まで繊細な表現となっていました。
正面から観ると両側に天衣が垂れ、左手には水瓶を持ち、右手は下ろされてこのお像がとてもバランスが良いように感じました。
江戸時代までは、日本最古の神社とも言われる「大神神社」の神宮寺「大御輪寺」にありましたが、明治の神仏分離令によって現在の聖林寺へ。
ここでも明治期吹き荒れた「廃仏毀釈」を思い、またこの大きなお像を大神神社から聖林寺へ運び、天平彫刻の傑作を現在まで大切に伝えられてきたことに感謝です。
和辻哲郎『古寺巡礼』毎度ながら永遠の名著です。