3.0
素材の豊かさ+人々の想像力=「和食」
和食の本質を地理的・歴史的観点から体系的に解き明かす構成となっています。
和食の土台となる日本列島の地質や気候が和食に与えた根本的影響を4階で学ぶことができます。軟水という地質的特徴が出汁文化を育み、豊かな生物多様性が多彩な食材を提供してきたという、至極当たり前のことでも科学的データとして提示されると新鮮な驚きがありました。日本の魚類が4,500種近く生息するのに対し、同じ島国のイギリスでは300種程度という比較データなど、和食の豊かさの背景が具体的に理解できます。醤油や酒を生み出すカビ菌など、微生物レベルでの和食の基盤も製造工程を踏まえて紹介されています。
3階では縄文時代から現代までの食文化の変遷を辿ります。「米と魚」の基本パッケージが弥生時代に確立され、禅僧による調理技術の導入、江戸時代の流通網発達による食文化の開花、そして明治以降の洋食流入という歴史の流れに沿って展示を回っていく構成です。
会場で1番盛り上がっていた展示は「雑煮」の地理的なバラエティーでした。餅の形が西日本は丸餅、東日本は角餅という違いや、味付け・具材の地域性が一目でわかる日本地図の展示で、自分の出身地を探しながら「うちはこれだ!」と盛り上がれます。
特に印象に残ったのは、西洋料理が入ってきたことで初めて「和食」を意識した結果、カレー、とんかつ、コロッケなどご飯に合う日本独自の「洋食」も生まれたという指摘です。和食は決して閉鎖的ではなく、外来文化を巧みに取り入れながら進化し続けてきた文化であることがよく理解できる展覧会でした。