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企画展「版画×写真 ― 1839-1900」@町田市立版画美

レンブラント「夜警」の版画版

現在町田市立国際版画美術館で開催中の企画展「版画×写真 ― 1839-1900」のほぼ鑑賞レポートです。

自信がなく間違っていたらご指摘いただければと思い、コメント欄が使用できるアートブログから失礼致します。


まず初めに、今回アートアジェンダ運営様より招待チケットを頂いて鑑賞の機会を得られたこと、心より感謝です。そして、いつも大変楽しんでサイトを使用させて頂いておりますこと、双方ともに、ありがとうございます。


企画展ですが、もう一カ月前に観たのに、一カ月間どう書こうか悩むくらい難しかったです。

何がそんなに難しいのか?というのを考えるのにもえらい時間掛ったわけですが・・・

とにかく展示ボリュームが半端ない。章立てもすごく多い。解説もえらい多い。

なので、もう少し整理しながらざっくりと説明を試みてみようと思います。



1番目 カメラと写真の展示(カメラとそのカメラで撮影した写真の展示+技法の説明)


↑ 段々カメラはなくなっていき、写真と技法の説明になる。この技法の紹介が「そこまで必要なのか?」ってくらい詳しい。詳しすぎる(笑)。「?! この技法、聞いたことないんですけど・・・」というのまであって、マニアはいいんでしょうけど、私が行ったときは家族連れのお子さん達が背伸びしてカメラ見てたんで、そこは正直「う~ん」と思ったんですね。

で、カメラの歴史で知っておくといいのって、


・カメラ・オブスクラ・・・でかいカメラみたいな箱を覗くと四角く向こう側の景色が見える。スケッチとかに使われた。これで見えるものを何とか固定することはできないかと思って・・・

・ダゲレオタイプ・・・金属板に固定化することに成功。だけど撮影にえらい時間がかかる。カメラもでかけりゃ写真も持ち運びが不便。

→以降「カメラの小型化(カメラがでかすぎる)」と「露光時間の短縮(何十分も動かないの無理っす)」、「写真の携帯性(重いし、錆びるし、もっと手軽なのがほしい)」の3点が課題に。

・鶏卵紙の登場・・・紙に焼くのに成功した後、これが出てきて細かくきれいに写ってるし、携帯性もいいから徐々に主流になっていく。→色々あって現在


・・・絵や版画を見るときに必要なのってこれ位かなぁ・・・っていうのが少々乱暴ですが、私程度の素人の正直な感想です。絵が好きな人はこれくらいは知ってる人ばかりだと思いますが。ネガポジ、湿板から乾板へ、とかは特に覚えてなくてもいいんでないかと。写真見れば違うんで見比べればわかると思いますけれど。カメラ好きな人には必要ですが。

で、今図録見てて「この図録の20倍位現地の説明あったよな・・・」と青ざめてます(笑)。


この辺り、横浜市民ギャラリーあざみのが全面バックアップで、ほぼそちらの持ち物じゃないかと思うので、少しあざみ野ギャラリーに触れておきます。

今年の1~2月にあざみ野ギャラリーで行われた「視る装置 19~20世紀のカメラの変遷 横浜市所蔵カメラ・写真コレクション」をご覧になったカメラ好きの方は、今回の企画展で出ている多くのものをすでにこちらでご覧になっているかと思います。

こちらは約12.000件に及ぶ横浜市所蔵カメラ・写真コレクションを収蔵しており、そのコレクションを紹介する展覧会を度々行っている(年1位はやってるような感じ)施設です。

何でもコレクターの方が亡くなって寄付していただいたものが多い、というお話だったので、本来であれば〇〇コレクションというはずなんですけど、公式HPにもないのでお名前わからず。確かお一人分寄付があって、そこにさらに外国人のカメラ・写真双方のコレクターの方がすごい量寄付を(大抵どちらかですよね)、というお話だったかと記憶しておりますが、間違いだったらごめんなさいです・・・。とにかくえらい持ってます。版画美のこの展示見てカメラに興味が向くようでしたら、是非ご覧になって頂きたいです。本当にすごい量、すごいカメラがたくさんあります。しかもそれで撮影した写真も見られるので本当に素晴らしい!


そう、この企画展の写真の部で最も素晴らしい点は、カメラの歴史がわかることと同じくらい、カメラの現物が展示されていて、かつそのカメラで撮影した写真が見られることです。これ意外とセットじゃない展示って多いんですよね。カメラだけとか写真だけとかね。これは横浜市民ギャラリーあざみのの力が大きいと思います。東京都写真美術館とか行くと、たまに「技法の説明もいいけどカメラの実物も見たいわ~」とやっぱり思っちゃうことあるんですよね。そういうストレスがないので、ストレートに理解できるのは素晴らしいです。

ただここまで詳しいと、次の章行くまでにぐったりだよ~っていう(笑)。

カメラにそんなに興味ない方は、技法の説明は飛ばして、昔のでっかいカメラと美しい写真をお楽しみ頂けたらと十分と個人的には思います。見ていけば違いはわかりますから。



2番目 版画 vs 写真


↑ もう皆さんご存じの通り、「版画と写真の関係」という前に「版画と絵」「写真と絵」、つまり「vs絵」があり、どっちかと言うとそっちの方が多分長いこと考察されてきたはずですよね。だからか、この項で実際「絵との関係について」が章のタイトルすっ飛ばして出てきちゃってるんですよ(笑)。

いくつかありましたが、例えばレンブラントの「夜警」の版画が展示されてます。完全にコピってるやつ。「絵」の話が出てくると三つ巴になってわかりにくくなる・・・。

これは混乱するよねぇ・・・。「vs絵」ということがある、って既にわかってることが前提の説明文なんですよ。その上での「版画 vs 写真」。

写真には「写実性・報道性・美術性」の3種類あるよ、ってことで。ホントに素人考えで書いてて自信ないんですが。それが説明ではまとまって出てこなかったような感じだったんですが、ただこれが前提で次の版画の歴史に行くので・・・

版画には「美術的価値の高い絵の簡易版(写実性はこの段階から既にある)→枚数擦れるから報道性を帯びていく→本・新聞等の挿絵などに使用され→美術的にも発展していく」みたいな歴史があるよ、というのがこの章の展示内容です(全部がこんなに一直線ではないでしょうが・・・)。最初は上記の通り写真も不便だったんで、いきなり版画に取って代わることもなかったが徐々に・・・ってところですね。

確かにこう比べれば版画って写真と似てますよね。だからこそ仕事の奪い合いになっちゃった、って話がメインかなと。そうじゃない例外があって面白いって話がこの後の章です。

特にこの辺では「肖像写真がブームになってみんな写真撮ってもらいに行った」例がわかりやすいですよね。それまで肖像画描いてた絵描きも、絵の簡易版として扱われてた版画も仕事が減っちゃうという。

で、初めて知ったんですけど、マネのいつも出てくる写真ってナダールが撮ったものなんですね。クールベもナダールだった。ロートレックはセスコーが撮ってますね。この人はロートレックのリトグラフで有名な人ですね。この二人の名前は絵画観てると良く出てきますし。こういう画家の肖像写真も展示されていていつも見てるものをあらためて見るのもなかなか新鮮でした。

ちなみにチラシに使用されている版画で、気球に乗ってて写真撮ろうとしてる人物がナダールですね。



3.風景:記録と芸術+報道:主観と客観


こっからもめっちゃ量あるんだよ(笑)。

版画と写真の腕比べみたいな感じで、例えばエジプト旅行の記録を版画と写真両方でしてみたらこんなになった、みたいな内容。

超絶技巧の版画が出てきてすごいの。普通に「写真・・・じゃない!?」ってびっくりしましたよ。

写真への対抗意識というか、職人魂というか、いやこれはあっぱれでございます。

ただこれだけ写真みたいな版画があって、同じ景色の写真と交互にあるとさ・・・(笑)・・・差がわかんなくなってきてどっちがいいんだか、段々ただひたすら写真見てるみたいな気分になったのも事実です・・・。

面白いのは、写真の方が若干地味。版画の方がやっぱり盛ってるからきれいな感じがする。


これが報道って分野へ踏み込むと対比がもっと激しくなる。炎とか煙とか、版画の方は盛ってるのがはっきりわかってかなり劇場型に作ってて、写真はシーンとしてるという対比がはっきりわかる展示になってます。



ということで、この企画展は、

「色んなカメラと写真がセットで見られて楽しいよ」

「版画と写真は随分似ていて、写真が出てきたとき版画は困っちゃった、ということがわかるよ」

「似てるけど差がこんなにあって色んな版画があるよ」

ということで、後は作品それぞれの色んな表現をそれぞれ楽しめればそれでいいんじゃないかと思います。

版画マニアの方にも勿論充分な内容だと思いますが、もし写真やカメラにさらにご興味がありましたら、重複になりますが、横浜市民ギャラリーあざみのや東京都写真美術館、日本カメラ博物館などをチェックしてみて下さいね。




で、少しだけ同敷地内に建設予定の(仮)国際工芸美術館建設及び国際版画美術館の大改修反対運動について触れたいと思います。

展示には関係ないので、興味ない方はスルーして下さいね。


「? 大改修って? 建設って何?」という方が多いかと思います。私も現地で反対運動をされている方々に「署名していただけませんか?」と声を掛けられるまで知りませんでした。さらに、「この手の話題をここへ記事として上げることは、運営の方へ迷惑をかける可能性もありまずいのではないか?」との考えで、かなり悩みました。

ですが、例えば「自分のおうちが森のある大きな公園の横にあって、その中にある美術館にはとても親しんでいて・・・」という観点であれば誰でも当事者になり得ると考え、かつ今回建設しようとしているのは美術に関する建物だということもあり、少しだけ美術館の在り方ということについて考えたくなりました。


反対派は 1.木が沢山切られる(地滑りが起きる懸念が専門家から指摘されている) 2.近隣住民は工事車両が頻回するのが怖い 3.版画美の1Fを改修し、工房・喫茶室を館外へ移設させる必要がない。このままがいい。今の版画美が大好き 4.事業費が甚大 5.版画美の素晴らしい建物が壊され、景観も損傷される(これは建築家と市側で裁判に発展している) 6.まともな説明がない というのが主な主張です。市側は、どうやら町田市立博物館が閉館になり、新しく建物を建ててそこに作品を収蔵したいという趣旨のようです。ちなみに市側は「ボーリング調査やってるから地盤は大丈夫」と言ってるとのこと。


・・・皆様どうでしょうか?

自分だったらまず地滑りが一番きついです。可能性があるだけで怖いです。自分が横に住んでたら、いくら公共のものだって言われてもそこまでして建設しなきゃいけないのか?と思ってしまう。

その上作るのが工芸館って、木を守ろうって意識高い人が多いのに、工芸家の人たち可哀相ですよ・・・。

やっぱり地域住民が反対してる中でのこういう施設の建設は辛いとういうのが自分の感覚です。

私、米軍住宅のある土地で生まれたもんで、未だにそこの市のいびつなでかさの〇〇ホールやら図書館やらの建物見ると居たたまれなくなっちゃうんですよね。

これじゃ多くが幸せにならない気がする。今からでも話し合いが行われることを願っています。


皆様はどうお感じになりますか?

自分ちの傍にいきなりこういう話が持ち上がったらどうされますか?

キャンベルスープかけられたりしてるのを見ても思うのですが、

美術館って誰のためのものなんでしょうかね?・・・


※どちらかの意見を擁護・拡散する為のコメント欄の使用は控えて頂けますようお願い致します。

あくまで個人的な意見の範囲内でのコメントをお願い致します。

また当方もどちらか一方を擁護する意図がないことを特記しておきます。

宜しくお願いします。


プロフィール

さい
アート初心者です。主に神奈川・東京の美術館などに出掛けております。とりあえず右も左もわからないまま、チラシでピンときたら行ってみようというゆる~い感じです。特に写真観ることと、版画家の浜口陽三、日本画家の山口蓬春が好きです。
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