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山口蓬春記念館はご存知でしょうか?

庭から眺めた山口蓬春の画室。

ほぼ鑑賞レポートなのですが、山口蓬春記念館の登録がない為こちらから失礼致します。

簡単に遠方の方向けにこちらの施設のご紹介と(※施設の回し者ではありません)、

「令和4年度 秋季特別展 山口蓬春と皇室」の感想と、11/6に同記念館で行われた呈茶会に参加致しましたのでその模様をお送りしたいと思います。



 山口蓬春記念館は、昭和23年・蓬春が55歳から亡くなるまで住んでいた邸宅を改装した小さな美術館です。旧邸宅は名建築家・吉田五十八が設計しており(同窓とか書いてありますが、写真見たり彼が出てくる箇所を読んだりするとマブダチいうやつですよね)、その部分は改装された今もかなり残っておりますので、建築好きの方にもお楽しみいただけると思います。昔の建物なのに、全体で柱が少なく、窓が大きく日の光がさんさんと差し込んでくるようなモダンな感じです。個人的に葉山の海岸が一望できる2Fからの絶景込みで、住みたいおうちNO1!です。

美術館と紹介しましたが、実際の雰囲気は、大きなお庭の中におうちが2件ある、という感じで、この庭がまたとてもいい感じです。本館裏は枯山水っぽくなっておりますが、ここを日本庭園と言ってもいいのかモダンさも感じるため悩ましいところです。蓬春の画室は中も素敵ですが、外から見てもいい。特に向かって左側の大きなもみじの木がすごく良くて、今は紅葉を待ちわびているところです。画室の辺りだけこちららから少しだけ見ることができます。

♦♦♦10月2日(火)夜9時【ぶらぶら美術・博物館】#284秋の海辺・葉山でアート旅!山口蓬春記念館~皇室のお宝巡りと名画・庭園も楽しめる邸宅ミュージアム~ https://youtu.be/b9-8tQlV12I


簡単に中をご紹介しますと、本館=展示室①~③(普通の部屋位の大きさでぐるりと絵があります)・画室・茶の間(普段使用していたそうです)・桔梗の間(お客様対応用)・2F旧画室(特に何もないですが素晴らしい眺めです)から成り、画室には少しですが蓬春が蒐集したりゆかりのある品された品が飾ってあります。こちら解説あり。展示内容もたまに変わるので毎回楽しみにしています。

別館は普通のおうちで、1階が映像コーナー・2階が小さな資料コーナーです。展示を見終わって、こちらの2階に座って葉山の海を一望しながらしばしぼ~っとするのが我が人生最高の時間です。日曜でもそんな感じですが(呈茶会の時10人位人がいて本気で驚いた)、小さな空間なので譲り合ってお楽しみ頂けたらと思います。ちなみに本館にロッカー完備、全体にトイレ充実、受付前に物販ありです。


また、神奈川県立近代美術館(葉山館)から徒歩2分なので、観光目的の方は 山口蓬春記念館~葉山近美~しおさい公園 と回る方が多いかと思われます。この日も「何て名前の人だっけ~?」とわいわい話しながら4人組のマダムが猛スピードで去っていきました(笑)。私、展示品を見る目がとても遅くて、他に人がいると必ず抜かれます。展示数少ないにも関わらずどうしても1時間ちょっとは掛かってしまうんですよねぇ・・・。季節のお花が楽しめる素敵な庭もあるので、できたら余裕を持ってご鑑賞して頂けたら嬉しいなぁと思います。



ここからは企画展の感想です。



タイトルから想像するのは皇居宮殿正殿松の間杉戸「楓」です。多分これの下絵や楓のデッサンかなぁと思って行ました。

展示室①は「楓」ネタで想像通りでしたが、チラシにも載っている東山魁夷「夜明けの潮」のための下図1/6という作品が何故かここにあって、これがとても良かった。仲良しだし宮殿の壁画用という共通項なのでしょうが、個人的に海の絵が好きなのでとてもテンション上がりました。チラシだと伝わってないかもですが、これまた構図・色彩ともかっこよくて気持ちよく、とてもモダンな感触の絵で、東山魁夷そんなに・・・でしたが一発でひっくり返りました。国立近美から借りてきたみたいですがあっちで観た記憶ないんだよなぁ・・・。

展示室②は、物販でクリアファイルも売ってる蓬春「緑庭」も何度見てもいいですが、この日のベストは蓬春「秋意」。蓬春もリンパーしてるのね、というたらしこみで葉っぱと鳥描いてるやつです。色の配置が完璧。蓬春はやっぱり色彩感覚が他の人と違う気がする。

あ、ちなみに結構な頻度で入口のところで蓬春「望郷」(しろくまのやつ)があります。

展示室③の土屋禮一の屏風の下絵で金閣寺と京都タワーが描いてあるものがあって(蓬春蔵のようです)、非常にインパクトあり気に入りました。


次は呈茶会の様子。


時間になるまで、普段は入れない茶の間(吉田五十八設計)で待ち。学芸員さんが「茶の間」を解説してくださいました。

①和室に隣接のサンルーム(これ日本語度忘れしました・・・)の天井が斜めになっていて開放感を感じる作りになっている。時代を考えると非常にモダンな発想で、和室の設計としてはとても珍しい。

②日本家屋なのにこの部屋は柱がない。これも開放的な空間にする為。

③説明しずらいのですが、障子の上に明り取りのためにさらに小さな障子があったりしますよね。その小さな障子のレールの強度を維持するために真ん中に柱の役割をする枠のようなものがあるのが普通だそうなのですが、それがないとのこと。その代わりに障子を明け切ったときに、障子の真ん中寄りの縦枠がくるところに縦に金属を仕込んである。金属棒は外からは簡単には見えないようにしてある。

・・・などなど、大変細やかな工夫が色々な場所にされていると。いかにマブダチだったかって話ですね。

旧邸宅を建てる為に、蓬春は大事なライカを売ってお金を工面したそうです。当時は「ライカ一個で家一軒」という時代だったそう。


時間がきたので、今度は「茶の間」から外を通って(「桔梗の間」の庭正面口を見ることができます)「桔梗の間」へ。

ここで本館入り口の向かって右にある梅の木が文豪の〇〇さんからのプレゼントだった、というお話をして頂いたのですが、メモらなかった為に完全に度忘れ・・・(´;ω;`)ウッ…鳥頭すぎる・・・。

ここからは立礼でかなり砕けた感じの呈茶会が始まったのですが、最後に入って端に座った私の後ろにはお花が活けてあり、その上に絵が掛けてありました。金地に扇形の台紙にたらしこみで葉っぱ描いてある、リンパーしてるやつだった。企画展で展示されてる、蓬春「秋意」に雰囲気が似ている。

お菓子から始まって、お茶を頂き、「こちらの棗は龍田川でございまして、お花が活けてあるのは備前焼の・・・」などとお話を伺いながら、「さすが美術館の呈茶会、上品な絵だなぁ~」と何度も振り返りながらその絵を下から眺めた。

最後に学芸員さんが「端で見えにくいんですが、そちらの絵は蓬春の筆でございまして、たらしこみという琳派の手法で描かれておりまして・・・」←「!!!!!・・・」まじか、と思いました。こんな贅沢あっていいのかよぉ~ん・・・興奮で血の気が引く・・・。学芸員さんに丁寧にお礼を言って外に出た時にはどっと汗が出た。これ本当に贅沢ですよ、本当に。


こんな感じの超贅沢な呈茶会を、こちらの施設では春と秋に行っているそうです。基本予約制のようですが、今回は定員が空いている回に限り当日でも受け入れておられました。

ご興味ありましたらHPチェックして頂いて、次回の春開催時に是非ご参加してみてくださいね!


山口蓬春記念館 (hoshun.jp)

「令和4年度 秋季特別展 山口蓬春と皇室 ー現代へ続く蓬春レガシーの系譜ー」

2022年10月1日(土)~11月27日(日)

開館時間:午前9時30分~午後3時30分(入館は午後3時まで)


プロフィール

さい
アート初心者です。主に神奈川・東京の美術館などに出掛けております。とりあえず右も左もわからないまま、チラシでピンときたら行ってみようというゆる~い感じです。特に写真観ることと、版画家の浜口陽三、日本画家の山口蓬春が好きです。
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