アルフレド・ジャー あなたと私、そして世界のすべての人たち

はじめに.
東京オペラシティ アートギャラリーで、アルフレド・ジャーの個展を見た。南米チリ出身の彼は、チリの政変を機に渡米し、以後はニューヨークを拠点に国際的に活躍している。その作品は、時々の社会情勢を取り込み、様々な悲劇を取り上げ、作品を見る人々に静かに、深く考えることを促す。そこには、単純な善悪で割り切れない、遠い世界の他人ごとでは済まない出来事が、とても詩的な表現で提示されている。
≪あなたと私、そして世界のすべての人たち≫
展覧会のタイトルにもなっている≪あなたと私、そして世界のすべての人たち≫は、ガラスと鏡で構成された3個の立方体だ。作品の周りを歩くと、他の作品や観客が立方体に映りこみ、自分を取り巻く室内の様子や、それぞれの距離感が様々に変化する。奥側の壁面に展示された≪彼らにも考えがある≫と重ねて見ると、異なる価値観を持つ他者の存在を強く意識させられる。また、鏡写しの像を見て、作品の表現に使われる英語という言語は、意思伝達の手段であると同時に支配の道具にもなることに気づく。本当に、作品から読み取れる意味の多層性に驚かされる。

≪エウロパ≫
その他にも、鏡を印象的に使った作品がある。≪エウロパ≫は、炎を写したライトボックスと、その背後に並んだ多数の鏡で構成される。炎の裏側にもイメージが展示されているが、そのイメージは隠され、直接見ることができない。作品に近づき、鏡をのぞき込むことで現れるイメージは、よく見ること、見ようとすることの困難さと、隠されがちな真実の存在の暗喩だろうか。

≪写真はとるのではない。つくるものだ。≫
展示室入口のすぐ横に大判のポスターが積み上げられている。白地に黒い文字で大きくメッセージが印刷されている。英語で「写真はとるのではない。つくるものだ。」と書かれたこのポスターは、一枚ずつ、持ち帰りできるらしい。ポスターを丸め、輪ゴムで止めながら、本展で見た作品のことを思い返してほしい。世界の出来事は、お互いに鏡写しになりながら、様々に影響しあっていることを。

おわりに
同時開催のコレクション展と六本木のギャラリーで開催されている「アルフレド・ジャー、和田礼治郎」展も見てほしい。特に六本木のギャラリーの展示は本展の展示とも関連性が強く、両方を見ることで気づくこともあると思う。
展覧会名 アルフレド・ジャー あなたと私、そして世界のすべての人たち
会期 2026年1月21日から3月29日
会場 東京オペラシティ アートギャラリー
公式サイト https://www.operacity.jp/ag/exh294/