生誕130年 武井武雄展 幻想の世界へようこそ
目黒区美術館|東京都
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ファンタジストにしてイノベイター
絵本画家の展覧会って結構多くて人気あるんだなと、AA投稿し始めてから知った。そういう作家さんの絵を好きになる理由なり背景には、二通りあると思う。
一つは、自分が子供の時に読んだり読み聞かせしてもらったりの体験がある場合。二つ目が自分の子供に買い与えたり読み聞かせしたりした大人の場合。
その両方だというお母さん方も多かろう。記憶に残っている絵本の原画を見れる展覧会とあらば、行きたくなるのはごくごく自然の摂理だ。
私の場合、知ってる絵本画家は最近でこそヨシタケシンスケとか五味太郎とか、女房の教えによって刷り込みが行われたが、それまではたった二人だけだった。
一人がいわさきちひろ。そしてもう一人が武井武雄だ。
幼稚園時代に定期購読していたのがキンダーブックで、その中にある絵の作者名で覚えているのがその二人なわけだ。
いわさきちひろは、美術館もあるし話題になることも多いから知ってる方は多い。が、武井武雄を知ってたかたはちひろほど多くないのでは?
私がなんで覚えてたかというと、妙な名前だから。武井武雄だなんて、なんちゅう手抜きな命名か。今ならさしづめ花沢花子とか犬山犬子じゃん(笑)
その武井武雄が描く絵は明瞭に覚えてたわけじゃないが、ちひろのフンワリ感に対してもっと細密でファンタジー感に満ちた絵だったという記憶がある。
それが数年前に周南市美術博物館で武井武雄展があっておよそ半世紀ぶりぐらいに再会できた。絵を見たら園児時代の記憶がよみがえって懐かしかった。
で、今回の武井展。会場は目黒区美術館。巡回はこのあと石川県美、次が愛知の三岸節子美だけなので上京することにした。
7月猛暑の中、1年ぶりに権之助坂を下った。平日午後で客は少なく、来場されてたのはやはり中高年女性ばかりだった。
展覧会構成は時系列に沿っており、戦前戦後の武井画が存分に鑑賞できる。武井は信州諏訪の出身で、諏訪中から東京美術学校西洋画科に入った秀才だ。
経歴紹介は他で見ていただくとして、とにかく当展に出てる作品は、どれもが絵本画のお手本というか、子どもたちの夢と希望が溢れてる美しい絵ばかりで、見ていて心が躍り、楽しい気分になる。
「童画」という言葉の発案者は武井だそうで、まさにそんなワラベたちが遊ぶ夢の世界へといざなってくれる。しかもそれがめっぽう上手い。
最近の絵本画って、漫画やイラスト的なものが多く、わざとヘタウマ感に走る作風も見受けられるが、武井は違う。
日本における絵本画家のパイオニア的存在でもあるので、妥協や手抜きをしたような作品は皆無だ。
そしてそれは既存の童話の他にオリジナルなストーリーが多いことも驚異的。
「コドモノクニ」はさすがに私の生まれる前のものだが、キャプションに「キンダーブック」とあり、それが昭和30年代後期とあらば、まさに幼稚園で配布されてた絵本の中にあった奇妙な名前の画家が描いた絵だ。
キンダーブックは今でも刊行されてるそう。本より画像という現代でこれは貴重だと思う。
でもタブレットでユーチューブばかり見てる子どもたちが興味示すかとなると、難しいかもねえ。フレーベル館さん、がんばってくださいね。
さて、今回の武井展で最も注目すべきは「刊本」のコーナー。
刊本とは、装丁、函、本文、絵で構成される本の総合芸術で、武井はいろんな技を駆使してそれをやっている。これがすごい。
木版画、銅版画での細密画は言うに及ばず、特に驚いたのは本の素材。
なんと、パピルス紙を漉いて用いてたり、ゴブラン織りで絵を織り上げたり、絵付けをした陶板が挿絵だったり、螺鈿があったり、レーザーカットした切り絵があったり、ありとあらゆる伝統工芸から最先端技術まで面白そうと思ったから全部やってみました的な好奇心と探求心が全開している。
これ、ほんとに見ものです。
他にはこけし絵とか、カルタ、古はがきを使って娘に作ってやったトランプなど貴重な資料も多く展示されている。
最終章は、文:黒柳徹子、画:武井武雄による「木にとまりたかった木のはなし」。
これがまた奇跡的な制作秘話がありますので、会場でその経緯を読んで驚いてください。
「生誕130年 武井武雄展」、今のところ2024年度上期のMY BEST展です。
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