鑑賞レポート一覧

魂を込めた 円空仏 ―飛騨・千光寺を中心にして―

魂を込めた 円空仏 ―飛騨・千光寺を中心にして―

三井記念美術館|東京都

開催期間:

  • VIEW389
  • THANKS1

円空仏 総まとめ

円空仏が数多く現存する飛騨から大集合、貴重な機会です。
ちょくちょく目にするのとは違い、本展は総まとめなので、しっかりと円空の足跡に向き合いたいと思いました。

円空は江戸時代初期の地方密教の修験者。
北海道から関西まで修行旅の範囲は広く、30歳代から64歳で没するまでの約30年間を修行として造仏に励み、現存5千体、総数12万体を制作したといわれます。修験者として、山岳修行もあれば民への祈祷もあり、時間の制約はあったでしょう。12万体はやや非現実的な数字ですが、作像は大事な修行の柱。木を刻むこと自体が目的であり、造形美を追う意は乏しく、数を造る意欲はとことん強い、ということでしょうか。

このような動機・目的なので、驚異的な速さで彫り上げる技が研鑽される。
工程は極限的に簡略化・効率化される。
薪割りのごとく丸太を斧で割り、丸太中央部にできる三角形の頂点が像の前面になるよう鉈(なた)で成形し、最後は鑿(のみ)で仕上げる。小さい木端も使って活かす。像の頭部や肩胸部の面取りは大胆に、お顔の目・眉は横真一文字に溝ひき。
修行としての作像なので、必然的に、こんな、装飾性ないシンプル・抽象的な造形となったのでしょう。
仏像制作の歴史において、江戸期は低調な時代。そのなかで、速攻で数多く刻む目的と荒行としての精神性が合わさり、ゴツゴツして抽象的、現代彫刻的な円空仏の造形美が出来たのかと、興味深く理解しました。
(アイヌの木彫り人形を連想したり。北海道行脚の折にクロスオーバーはあったのかしら)

樹木には樹神が宿る。円空にとって、彫る作業は樹神との真剣な向き合い。
作られた像には慈みが滲み出ています。粗く残された木肌・木目年輪が時を経て幾分朽ち、木特有の柔かく温かい質感が慈みを一層引き立てています。この慈み、本展の円空仏にほぼ共通する印象です。横真一文字の目眉のお顔はすべからく。代表作でメインビジュアルの《両面宿儺座像》は、彫が深く、慈悲と忿怒を併せ持つ相とされますが、見る角度を正面から斜めにずらすにつれて、忿怒が慈悲に置き換わるように見えます。

高さ2m超の2体物、《護法神立像》、《金剛神立像》は、もちろん迫力あり見事です。
《三十三観音立像》は第4展示室奥の壁という当館のベストポジションで整列してます。ライトアップされ、心なしかかしこまったお姿に映ります。

代表作の傍らで、小品の数々にも心が寄せられます。
第1展示室の白山神像(小川神明神社蔵)、
第4展示室の伊勢・富士・立山・熊野・鹿島の神像群(小川神明神社蔵)、
第5展示室では男神形・狐頭形各3体ずつの稲荷明神(錦山神社蔵)、
など、微笑みかけてきたり愛らしかったり、端正だったり、素敵です。

《柿本人麻呂座像》は別次元です。
第2展示室は本作単独の空間。円空は柿本を歌聖と崇めており、本座像は神像であり観音菩薩である、と説明されてます。私は、よりお慕いの心を感じます。左に傾いた姿勢で微笑みかける柿本の姿は、旧知の来客を迎えて膝を崩し、語りかけているような。造形面は特筆です。正面から見ると、まずで『サンピエトロのピエタ』彫刻を髣髴とさせる安定の三角形構図。ところが横から見ると、奥行きは薄く、最上部の烏帽子、次のその下の顔の部分が前に大きく出張る、超不安定な緊張感構図。頭部のノミ跡は大き目だが端正。これは彫刻造形として、時代を超えた秀作だと感銘しました。

四月に入り深雪が解ければ、皆さん飛騨にお戻りのことでしょう。
またどこかでお目に掛かれますように。

THANKS!をクリックしたユーザー
morinousagisanさん

鑑賞レポート一覧に戻る

こちらの機能は、会員登録(無料)後にご利用いただけます。

会員登録はこちらから
SIGN UP
ログインはこちらから
SIGN IN

※あなたの美術館鑑賞をアートアジェンダがサポートいたします。
詳しくはこちら

CLOSE

こちらの機能は、会員登録(無料)後にご利用いただけます。

会員登録はこちらから
SIGN UP
ログインはこちらから
SIGN IN

ログインせずに「いいね(THANKS!)」する場合は こちら

CLOSE


がマイページにクリップされました

CLOSE マイページクリップ一覧を見る


がお気に入りに登録されました

CLOSE マイページお気に入り一覧を見る


を訪問済みに移動しました

CLOSE マイページ訪問済みイベントを見る

CLOSE

name

参考になりました!をクリックしたユーザー 一覧
CLOSE