特別展「法然と極楽浄土」
東京国立博物館|東京都
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想像以上に楽しめた展覧会でした。
浄土宗開宗から850年という節目に、全国の寺院から宗祖・法然ゆかりの至宝が多数集結する、トーハクの特別展「法然と極楽浄土」行かせていただきました。有難いことに、入場の並びもなく、会場内もとても意外に空いていて、ゆっくり鑑賞出来ましたし、撮影可能なポイントでも、他の人を気にする必要もなく、思うままに撮影もできました。内容豊富でボリューム満点なので、基本、文書類はさっと文字の雰囲気を捉える、或いは料紙を観るだけで、敢えて詳しく観たり読んだりを考えませんでした。
入ってすぐの場所に展示されている、奈良・當麻寺奥院の本尊の《法然上人坐像》は、比較的若い時代のものであるとか。肉付きがよく、表情はわずかに微笑んでいるようで柔和な印象でした。この親しみやすさは、浄土宗の大衆性につながっているのかも知れませんね。国宝《法然上人絵伝(鎌倉時代)》は文字も絵も奇麗でした。
今展第一の見どころは、パンフレット等になっている京都・知恩院(浄土宗総本山)蔵の、「早来迎」の異名で知られる国宝《阿弥陀二十五菩薩来迎図》の修理後初公開。鎌倉時代の仏教絵画の傑作として教科書などにも出ているので、知る人は多いでしょう。臨終を迎えた念仏者を極楽浄土へ連れるべく、菩薩衆を従えた阿弥陀如来が雲に乗って降りてくる様を描いた絵画を、「来迎図」と呼びますが、「早来迎」の名は、対角線構図であたかも滝の水が一直線に落ちていくような疾走感を強調した飛雲の表現から来ているのだそうです。少しでも早い来迎をという人々の願いが反映されているのでしょうね。「早来迎」は紡ぐプロジェクトの文化財修理事業で、最初に助成対象となった作品の一つだそうです。洗浄と肌裏紙の交換などによって、図像が明るく鮮明になったそうで、修復にかたむけられた努力に、心から敬意を表します。さらにX線で下書き線など新しく分かったことも色々らしいです。プロジェクトのサイトで詳細を観ることも出来ます。これ、凄いです!ぜひ見てみてください。次に注目なのは、右大臣藤原豊成の娘中将姫(架空の人物)が、阿弥陀如来の力を借りて、蓮糸を使って一晩で織り上げたという伝承が残る、奈良・當麻寺の秘蔵本尊で国宝《綴織當麻曼陀羅》です。曼荼羅と言っても密教の大日如来を中心とした曼荼羅とは異なり、浄土三部経の一つである観無量寿経の教えに基いた浄土変相図で、中央に阿弥陀三尊が大きく織りだされ、左右には観無量寿経の説話が、下部には九品往生の様が織りだされています。縦横4メートルに及ぶ圧巻の極楽浄土図です。唐時代の中国、もしくは奈良時代・8世紀の日本で制作されたと考えられていますが、極彩色で染めた絹糸や金糸を使い、一寸幅に60本の経糸という精密な織りが、微細な線描や色調のグラデーションなど、描画に迫る表現をしていただろうことが想像され、これほど高度な技術で創られた8世紀の遺例は他にないとのことです。一応自分の持つ西陣綴織の帯が、さらに細かく、サイズが巨大になったことを想像すると、気が遠くなる重いです。奈良県外で公開されるのは今回が初とのことでした。実は私は以前當麻寺の特別公開で観たことがあるのですが、その時既に残念ながら色彩はほとんど失われているように見えました。今展でも同じと、《當麻曼荼羅図 貞享本(重文/江戸時代)》で観ました。原寸大の迫力ときらびやかさに、国宝では見えていなかったものが色々見えて、動きのある描写にはまさに感無量でした(笑)。この中将姫の当麻曼荼羅は、鎌倉時代に法然の弟子証空によって絶大な信仰を集め、多くの写しがつくられ、各地に伝わっています。サイズも色々なのですね。比較してみるのも良いかも知れません。因みに国宝《綴織當麻曼陀羅》には厨子もあり、そちらも国宝と以前お寺で聞きました。
仏教系の展覧会で一番嬉しいのが、寺では決して観ることの出来ない状態で、仏像と出会えることです。《阿弥陀如来の三尊像(重文) 》《蒔絵厨子入阿弥陀三尊立像(重文) 》,京都・知恩院蔵の康如・又兵衛等作《八天像(江戸時代)》のうち《帝釈天像》《持国天像》《金剛力士像》《密迹力士像》の4軀、香川・法然寺の《仏涅槃群像(江戸時代)》全82軀のうち26軀、感動ものでした。釈迦入滅の場面を群像で立体的に表した作品で、等身大を上回る釈迦の涅槃像と、それを取り囲んで嘆く羅漢、天龍八部衆、動物など計82軀で構成されていて、その一部の展示でした。高松藩初代藩主・松平頼重が京都の仏師を招いて造営したもので、このような大型の涅槃群像は他に例がないそうです。それからまた、最後を飾っていたのが、四条派や土佐派などの画風をほぼ独学で学んだ後に狩野派へ入門したとされる幕末の絵師・狩野一信が画業の集大成として、およそ10年の歳月をかけて挑んだ増上寺蔵の《五百羅漢図》100幅のうち24幅もまた今展のハイライトと言ってもいいでしょう。羅漢とは釈迦の弟子の中でも悟りを得た聖者を指す尊称 日本では江戸時代中期以降に各地で五百羅漢の木彫や石像が盛んにつくられるようになったそうです。こちらは数・迫力ともに破格の羅漢図であり、文字通り500人の羅漢を5人ずつ、計100幅に描き分けた大作です。羅漢の修行や生活、六道や人に降りかかる厄災と羅漢による救済といった個性の強い情景を、日本画の枠にとらわれず西洋の陰影表現・遠近法までも用いながら、極彩色でドラマチックに表現しています。四隅まで力を抜いている部分がまるでなく、情報量の多さとそこから伝わってくる情熱に圧倒される筈です。実は私は、2011年に江戸東京博物館で全100幅が初公開された時と、スミソニアンから戻って来たあと、家康公没後400年の記念として完成の新宝物館で、2015年の秋~2016年春に増上寺の特別公開(前後期で全幅)、を其々観に行っていますから、三度目の再開なのですが、何度観ても、とても面白かったです。
ともあれ、充実の内容です。キャプションも分かりやすく、とても良い展覧会でした。投稿が大変に遅くなってしまいましたが、これから巡回する二館の地域の方に、「法然と極楽浄土」はやや地味な感じの展覧会かも知れませんが、観て損はないはずです。展示替えや場面替えが多くありますので、観たいものを事前に決め、訪問の日を決められると良いと思います。是非、観に出かけてください。
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