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特別展 漂泊の画家 不染鉄 ~理想郷を求めて

特別展 漂泊の画家 不染鉄 ~理想郷を求めて

奈良県立美術館|奈良県

開催期間:

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寂しさの中の暖かさ

私が最初に不染鉄の名を知ったのは、6年前の『美の巨人たち』。今回のキービジュアルである『山海絵図(伊豆の追憶)』が『今日の一枚』。しかし印象的だったのがこの回で合わせて紹介された『廃船』。

暗く重い雰囲気の中、圧倒的な存在感の巨大な舟に魅了されずっと記憶にあった一枚。

今回、この2枚の絵を含む氏の回顧展があるというので、楽しみに行ってきました。
私は彼の事を全く知らないので、当然、他の絵についても全くの知識を持ち合わせておりませんでしたが、今回の展示会ですっかりと魅了されました。

『廃船』などは、ゾワゾワする不気味さ、画家の感情が封じ込まれた作風でしたが、ユーモラスで、愛嬌のある作品があったり、画家の寂しさが伝わってくる作品があったり、『仙人掌』のような、明るく穏やかな作品があったりと、その時の彼の心情はこうであったのではないか。と想像しながら観ることができました。

俯瞰で描く漁村の家々には人がちゃんと暮らしている。飯を食う。赤子に乳をやる。将棋を指す。暑くて寝ている・・かなり省略して描いているのに何をしているかわかり、そこに物語やリアリティが味わえるのは、安野光雅さんに通じるところがあります。いわれてみると前出の『仙人掌』の色彩はまるで安野光雅。

もちろん、安野さんのほうが35年も後に生まれているのですが、安野さんは不染鉄氏を知っていたのか、すごく気になるところです。

今回のヒットは法隆寺所蔵の『雪之家』真っ白の掛け軸に、雪に囲まれた民家が2軒。軒先にはつららが下がっています。

音もなく、時間すら止まっているような絵なのに、なぜか生活感が感じられる。
そして、家の周りを囲むように塗られた薄墨がまるでエンボス加工のように民家を浮き立たせていました。

寂しさの中にある暖かさ。悲しみの中のユーモラス。
それが彼の真骨頂ではないだろうか。そんな気がします。

それはいくつかの絵に書き込まれた彼の文章からも読みとることができます。
久しぶりにいい画家に出会うことができました。


余談ですが、今回は『廃船』観たさに足を運んだんですが、他の絵がすごすぎて『廃船』の影が薄くなってしまった気が。。それはそれで、楽しい思い出です。

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