UKIYO-E 江戸の美人画
MOA美術館|静岡県
開催期間: ~
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休日は江戸美人と珈琲を
海風に乗った花粉に涙目になりながらも久々のMOA美術館訪問です。
【UKIYO-E 江戸の美人画】は表題通り、浮世絵、肉筆画含むお江戸の美女たちをテーマにご紹介。
色々ありつつも、大都市に成長し安定政権の続いた江戸時代。
花開いた町人文化の代表である浮世絵/美人画。
特に花魁や遊女、お茶屋の看板娘らをモチーフとするお江戸の美人画が流行しました。
展示品の作者は菱川師宣、勝川春章、葛飾北斎、鈴木春信、喜多川歌麿と一流浮世絵師がズラズラ並び、浮世絵好きな人には垂涎の内容です。
そんな一級揃いの展示から注目作と美人を何点かピック。
①【重文】婦女風俗十二ヶ月図 勝川春章 江戸時代 18世紀
展示後半の5室をまるっと贅沢に使った12ヵ月の歳時記と美人達を絡めた10幅です。2幅は消失。
隣の部屋は巨大スクリーンでこの10幅を大写しにして詳細をダイジェストに紹介していて、映像と作品を往復しちゃいました。
子供から大人まで、美女たちが月毎の年中行事を過ごす様子を描いています。
春章は葛飾北斎の師匠で肉筆画が得意ですが、この歳時記美人画は最高峰なんじゃないかと勝手に思いました。
特に好みは七月と九月。七月は七夕の節句の風景で三人の美女の競艶。
上部には笹に飾られた短冊が揺れ、女性は機織りや針仕事の上達祈願を表す針を持ち、家紋が散る豪華な水桶を覗く女性は水盤に七夕の星を映す行事を表しています。
縦長構図を活かし、七夕行事が分かり易くて美しい画です。
九月は重陽の節句。今はマイナーですが、江戸時代は五節句を締めくくる美と長寿を祈願する節句で盛大に行われていたのが伺える絵です。
設定はおそらく遊郭。2階建ての階上では鼈甲簪をいくつも飾った花魁らしき女性が欄干に持たれながら節句の菊酒を嗜み、
階下では成人前らしき女の子たちがよいしょよいしょと大輪の菊をいくつも活けた花器を数人がかりで運び入れています。
上階の気だるげ(お酒のせいかも)な女性と、溌剌と菊の大華を運ぶ少女達の対比がお互いを引き立てているし、華やかな衣服も目に楽しい。
他の月も含めて皆生き生きとした美女たちが眼福な作品です。
②【重文】二美人図 葛飾北斎 19世紀
本展の中で、独断の一番の美女でした。
『冨嶽三十六景』シリーズや『北斎漫画』で有名な北斎ですが、35~50歳代にけっこう美人画を描いてます。
これは北斎美人画の代表作としての定評がある作品で、顔が小っちゃい八頭身のモデル体型美人と座って振り返る美人の対比が絶妙なバランス。
楚々として嫋やかな風情ですが、少々着崩れた衣装、無造作に縛られた腰紐がどこかなまめかしいです。
③【重文】花見鷹狩図屏風 伝 雲谷等顔 桃山時代(16世紀)
美人図じゃないですが作者的に珍しくて、明朗な筆致が素敵な群像絵。向かって左隻が「武家の鷹狩」、右隻には「庶民の花見」を描いています。
雲谷等顔(1547~1618)は西国大名の毛利氏お抱え絵師で、雪舟の画風復刻を命じられて雪舟ぽい画風雲谷派を興した、ちょっと珍しい経歴の方。
なにより、見知っているのが大体山水図なんで、カラーの屏風絵がやたら新鮮に見えます。
保存状態もよくて、表情や細かな仕草も良く見えるし、往時の様子が鮮明に描かれていて鑑賞推奨です。
この他にも文を興味津々に読む人や、さっそうと出歩く女性、美味しそうにグラスのお酒を傾ける美女など、約60点のお江戸美人達の生活が垣間見え、浮世絵を堪能できます。
余韻に浸りつつ館内カフェの珈琲(美味しいし稀少!らしい)でまったり休憩し、200年前の女性達をつらつら思い描く、オツな休日となりました。
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