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歌川国芳展 ―奇才絵師の魔力

歌川国芳展 ―奇才絵師の魔力

大阪中之島美術館|大阪府

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浮世絵の普遍性

平日の開館直後に訪れたが、前評判通り、既に多くの人で混雑していた。中高年の方が大半を占めていたが、意外と若者の姿が目立ち、やはり現在放送中の大河ドラマの影響や漫画の原点とも言うべき浮世絵に関心が高まっているせいかと想像した。
国芳を初めて知ったのは約30年前の展覧会だった。本展でも展示されている巨大な骸骨が描かれている「相馬の古内裏」と裸の男達が集まり顔を作っている寄せ絵を目にした時は衝撃を受けた。それまで浮世絵といえば美人画や風景画しか知らなかったが、その大胆かつ斬新な発想力、ユーモアセンス、そして、あまりの自由さに既成概念が覆される思いだった。
それ以来、国芳作が出品される展覧会には足を運んできたが、今回のような数の作品を鑑賞したことはなかった。それに加え、他の方も書かれているように摺りの状態がすこぶる良く、眼識に優れたコレクターのおかげでどっぶり国芳の世界に浸り、幸せな時間を過ごすことができた。
そして、今回は浮世絵に関して理解が深められ、感慨深かった。国芳の多くの作品を通して、痛感したのは浮世絵とは大衆のためのものであり、大衆と共に発展、進化してきた存在であるということである。今では世界的にも芸術として周知されている浮世絵であるが、当時はお高くとまった美術品ではなく、版画であるので大量生産され、誰もが安価に手にできる娯楽誌といったところであろうか。本展でも国芳は武者、花魁、各地の風景、動物、役者と描く対象は多岐に渡るが、それら全ては版元がマーケティングした、大衆の興味関心の高いコンテンツだったのだろう。そして人々が見たいものは何でも見せ、流行を創り出す、その時々の世相を映し出すメディアであることが窺える。そうして大衆の人気を得た浮世絵により風紀風俗の乱れや政治批判の扇動を危惧したお上が規制を行ったならば、動物を擬人化し、風刺するというジャーナリズムも発揮する。それも大衆の精神の反映であり、それらを見た人々の痛快な表情が思い浮かぶようである。
文明が発展し、メディアの形は変われども興味関心に突き動かされ、行動する現代人と何ら違いのない江戸時代の生き生きした庶民の姿を浮世絵は我々に観せてくれる。そして、その当時の人々が心躍らせ、夢中になった浮世絵が数百年経た今でも感動を与えるのは今回の国芳を始めとする絵師、彫師、摺師という職人が卓越した技能を持ち、創り上げた「芸術」だったからであり、そこに普遍性が生まれたのだろうと感じた。

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