佐野史郎写真展 瞬間と一日
彫刻の森美術館|神奈川県
開催期間: ~
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最高!でも展示数少ない(泣)・・・
12月中に見たんですけど、どう書いていいか悩みました。
展示内容は最高!なんですけど、作品の展示数が少ないんですよ・・・。
都内のギャラリーとかなら絶賛!以上!なんですけど、これだけの為に箱根に行くのを勧めるには、さすがに展示少ないようなぁって・・・。
だけど、行けるなら是非見て頂きたい!
私はこれだけの目的で行ったのですが、本当に行ってよかったと思いました。
まず展示場所がわかりにくいというか、地図を見てもギャラリーの表記がない。
スタッフさんに伺って行ってみると、彫刻の森美術館敷地内の、一番奥のピカソ館近くにある、カフェ+お土産屋さんの上の休憩スペース「丸太広場キトキ」の一画に仕切りを立ててギャラリーと言い張ってる感じです。
しかも同館の敷地内で「こんなのやってますよ~」という告知的なものが一つっきりで、他に見た記憶なし。
勿体ない! 勿体なさすぎる!!
展示の内容ですが、前半はなんと佐野さんの写真ではなく、お父様が撮った写真。
おじい様の話、昭和29年にご両親がご結婚されて、住んだ土地の景色、家族の写真などから始まります。
そこへ佐野さんが素晴らしい文章を寄せているのですが、
「両親は戦時中の話を全くしないわけではなかったけれど、多くは語らなかった。
父は戦時中、16歳から20歳。
兵役検査で不合格となり、出兵は免れた。
父が戦死していたとしたら、私はここにはいない。」
「日本国民も、戦争責任のありかの真実と向きあうことができずに、あるいはわからずに、ならばと過去を捨て忘れて自由を謳歌し、豊かさを求めて猪突猛進したのだろうか?」
「『歴史はくり返す』というが、東日本大震災や新型コロナウイルス感染拡大以降の現在と、大正12(1923)年に襲った関東大震災後の、戦争へと向かっていったこの国の姿とが重ならないことを祈るばかりだ。」
このような文章から、
「見えない 何か とは?」
「危険の感覚を 失せては ならない」
というような詩のような言葉だけが壁に掛かっていたり、本の中にすっぽり入って本を体験しているような不思議な感覚に陥りました。
で、前半は佐野さんが生まれ大きくなって現在へ、というような流れで、カメラがつなぐ佐野史郎の歴史と、佐野家を取り巻く昭和という時代を、現在の佐野史郎が感覚的に捉えた何かを表現しているのでは、と感じました。
そして後半は、佐野史郎が彫刻の森美術館と美ヶ原高原美術館をピンホールカメラで撮影した作品です。
これが素晴らしかった!
全部パネル展示で、こんなに満足度が高いなんてありか!と自分でびっくりでした。
何時間も露出しているので、動いているものは映らなかったり、不思議な写り方をするのですが、これがもう!
幸せを呼ぶシンフォニーというステンドグラスの塔を映した写真は、塔は動かないけど光が動くんで、その動きがむわあぁ~っと不思議な煙みたいに写っていて、この世のものじゃないみたい。
終りのない対話という風見鶏みたいに風で動く作品は、風によって動いた分だけもわっとぶれていて、そこに何故か生命力を感じる。
逆にジュリアーノ・ヴァンジのフロレンツィア(これはピンホールカメラなのかしら?石の彫刻なので動きません)は対比もあってすごい存在感。
今ね・・・ウクライナ、ガザと来て、さらに能登半島と・・・毎日祈ってばかりで正直辛いです。
勿論私だけじゃないし、当事者の辛さなんて悲惨すぎて想像つかない・・・
できることも少なくて、思い出しては「はぁ・・・少しでも、何とかならないもんか・・・」と祈る位しかないわけなんですけど、この幸せを呼ぶシンフォニーの写真見た時に、祈るってやっぱり何かあるんじゃないか、と思ってすごく感動したんです。
当たり前だけど、ピンホールカメラって、人間が絶対に見ることも捕まえることもできない「時間」ってものがそこに写る。
生きるってことは時間の流れそのものだし、写真のあの煙みたいに、その数時間の光の命というか、光の持ってる時間そのものがあんなに神々しいのなら、生きることっていうのは神々しいことで、その神々しい時間を祈りに費やしたなら、それも決して無駄じゃないんじゃないかと思えたんです。
メインビジュアルにも九相図的な「生きること、死ぬこと」を感じるんですけど、それは亡くなったとしても無かったことにはならない、って当たり前のことを強く認識させてくれました。
写っている全てがいつかなくなるとしても。
文章も流石でしたが、これはもう定期的に写真展見たいですね。
お体をいたわりつつも・・・佐野さん、ファイト!(笑)
彫刻の森に行ったら、どうか見逃さずに、絶対見てほしい!
館内の案内少なすぎて、知らずにスルーしちゃいそうだよ・・・トホホ・・・
鑑賞の機会を下さったアートアジェンダ運営様と素晴らしい写真を撮って下さった佐野さんに、心から感謝です。
最後に佐野さんの言葉です。
「目に 見える もの と
見えぬ もの と が 溶け あう」
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