フィンランド・グラスアート-輝きと彩りのモダンデザイン- / ムーミンの食卓とコンヴィヴィアル展-食べること、共に生きること-
兵庫陶芸美術館|兵庫県
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フィンランド・ガラスアートの饗宴
美術館「えき」KYOTOの『イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき』に感銘を受けたので再びフィンランドのガラスを特集した展覧会に行ってきました。
二つの展覧会の違いはデザイナーに重心が置かれているか否か。前者はイッタラという一企業の歴史を概観することでフィンランドデザインの根底に流れている水脈を歴史的に紹介したものでしたが、この展覧会はデザイナーの個別の作品を通してフィンランドのガラスデザインの多様な作品群を紹介するものでした。双方が補完し合えるような関係になっている、と勝手に感じました。
Art Agenda展覧会ページのサムネイル画像を通して作家の作品について紹介したいと思います。
イッタラのiーラインロゴをデザインしたティモ・サルパネヴァ。《カヤック》は木の質量感とそれが浮かぶ水の透明性という大自然の異なる要素がガラスで融合した詩的な造形です。透明なカヤックは掲載画像を通して想像するよりも複雑で、複層的に光を集めたり反射する洗練された姿は壮大な自然の時間軸の交錯をも想像させてくれます。
他にも『カレワラ』神話の解釈を通してバルト海に浮かぶフィンランドの小さな島々を造形した《アーキペラゴ》シリーズも展示されています。
グンネル・ニューマンはかなりの量が紹介されていて彼女の様々な挑戦が見れます。アアルト夫妻とは違い、ガラスの重厚な質量感を感じる《ストリーマー》は、器の内と外の間に一筋のリボンのような乳白ガラスが渦巻いています。この宙に浮いているような繊細な造形を加えることで、透けるというガラスの特徴に加えて生命感のような新たな次元を感じさせます。
「グラスアート」という名前がしっくりくるマルック・サロの《ユニークピース》は異なる素材を制作中に組み合わせたことがわかる作品です。ガラスが金網の格子にはまって宙に浮いていてることから、網の内部にガラスを詰めた後、絶妙な塩梅で膨らませたのでしょう。オレンジ色の灼熱の塊が膨張し、冷えた金属の格子とせめぎ合いつつ融合する。この主体的に自立することを放棄したガラスは、それゆえに周りの環境との関係が強調されている様に感じます。所有者の感性次第で実用的機能を放棄した彼の作品群は空間を豊かに飾ってくれそうです。
異形な素材感が印象的なヨーナス・ラークソ《リコリスみたい》の花器は単色で透過しないというガラスらしからぬ表面をしています。FRPやプラスチックのような光沢でツルっとした表面に旋回しながらまとわりつくソースのようなガラスはその求心性も相まって融合・調和のような抽象的な概念を想起させます。他にもカラフルで透明な作品も多々あり素材との新たな対話が始まったのだと感じました。
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美術館「えき」KYOTOで2024年早春に開催された【イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき】には『ストーリー性と実用性を兼ね備えた美しさ』として鑑賞レポートを記載しています。宜しければ一読ください。
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