建立900年 特別展「中尊寺金色堂」
東京国立博物館|東京都
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文句なしの感動体験でした。こんな機会はもうきっとないと思いました。
特別展『中尊寺金色堂』行って来ました。建立900年を記念して開催された今回の特別展「中尊寺金色堂」は、金色堂中央壇に安置される国宝の仏像11体をすべて展示されています。《阿弥陀如来坐像》《増長天立像》《持国天立像》など11体の仏像がそろって寺外で公開されるのは、初の機会となるのだそうです。因みに、世界遺産認定の後、NHKスペシャル「世界遺産 平泉 金色堂の謎を追う 」を視ましたが、今度また「中尊寺金色堂 デジタルで解き明かす900年の謎」がNHKBS8Kで放送されたそうですね。再放送も何度かあったようですが、とても残念なことにわが家では8K番組を視ることが出来ません。予習不足でしたが。
本館特別5室、入って最初が中尊寺金色堂大画面8K超高精細CGです。すんごくきれいです。ゆっくり歩み寄るように映像は進み、須弥壇の仏たちのごく間近まで進んでくれます。実際現地で拝観してはこんなことは出来ません。迫力あります。想像を超える没入体験でした。
そしてスクリーンを回り込めば、金色堂の入側柱を模した宝相華文の丸柱が4本立ち、壁も天井も黒い展示室に、スポットライトに照らされて浮かび上がる金色の仏像たちが迎えてくれます。神秘的でよい展示空間の演出でした。そしてトーハクさんの最新照明技術、流石です。国宝の仏像11体たちの、漆のツヤと金箔の輝きが、照明により品一層美しく引き立てられていました。また、全ての仏像が映り込みの少ないガラスを使った中置の展示ケースに展示されていて、360度から、現地では決して観ることの出来ない背面も横面も足元までもしっかり鑑賞出来、ホント素晴らしかったです。博物館だからこその鑑賞を堪能させて頂きました。今回私はやはり、袖が波打つ躍動感のある動きの《増長天立像》《持国天立像》が最も気に入りました。のちの鎌倉時代慶派などの作像を先取りしているような二体です。また浄土思想は、煩悩で汚れた現世から阿弥陀仏の浄土に往生して成仏することを願うもので、阿弥陀如来・観音菩薩・勢至菩薩が人々を救い損ねた場合も、地蔵菩薩が救ってくださるのだそうです。会場の仏たちは、二天像以外はいずれもふっくらとして愛らしく、優美で慈悲深いお顔立ちでした。それでも皆少しずつ表情に違いがあります。仏像はいずれも平安時代の作ですが、《阿弥陀如来坐像》の螺髪の刻み方などに新しい造形や技法が用いられているそうで、奥州藤原氏が新しい試みを受け入れる柔軟性があり、やはり新しい時代の先駆けという存在だっただろうことがうかがえます。
行く前には、第5室のみのコンパクトな展示なので、ちょっと寂しい気もしていましたが、どうしてどうして、かえってぐっと引き込まれる展示になっていました。
メイン11体の仏像以外も、ちゃんと凄いです。かつて金色堂を荘厳していた国宝《金銅迦陵頻伽文華鬘》やら、まばゆいばかりの工芸品の数々、でした。平安の職人達の高度な技術に、本当に驚かされました。藤原清衡が葬られていた木棺の副葬品の金塊も展示されていました。3-4cmの粘土のような金の塊です。重さは32グラムだそうです。こちらも照明を受け輝いていました。10世紀の奥州の黄金仏教文化を偲ばせる資料だと思います。それから感動したのが、全てが経の金文字で埋め尽くされ、宝塔の絵のように配された、《金光明最勝王経金字宝塔曼荼羅》です。屋根の先端にぶら下がる風鐸まで全てです。すんごい細かい!! そして きれい!! どれだけの集中力のなせる業かと思い、それだけでくらくらして来ます。仏塔をとりかこむ曼荼羅も繊細でとても優美でした。ちなみにこれら工芸品については、本館特別2室での親と子のギャラリーが、今回「中尊寺のかざり」で、修復やレプリカの製作工程やら何やら、とても詳しく説明がされていました。必見です。
最後に、昭和37年から行われた昭和の大修理の際に作成された『金色堂』5分の1の縮尺模型がありました。こちらのみは写真撮影可能なので、多くの皆さんがスマホやタブレットを向けていらっしゃいました。照明を受けて輝く金色堂の美しさを、実感できます。何より1/5なのに、須弥壇の螺鈿細工の輝きがとてもきれいで、それが黄金の床やらに映って、静かで複雑な動きのある輝きになっていることに、映像とはまた違う感動をおぼえました。模型ながら、清衡の思い描いた極楽浄土を、今観ているのだという気がしました。そしてあの中央壇には藤原清衡の、左右には基衡・秀衡の亡骸(ミイラ)が検証を終えて、今も納められているとされいるのだ…、と。
今回私が特に思ったことは、エジプトのピラミッド型墓所や王家の谷など、多くが盗掘されているとか、ありますよね。神仏や死者に対する感覚の違いや怨霊感のことがあったにせよ、日本だってちゃんと墓荒らしもあり、廃寺荒らしもあり、なのです。早々に中尊寺が頼朝に安堵を取り付けたにせよ、藤原氏が滅んだ後も、奥州の金は平安の頃から周知のことで、中尊寺金色堂のことは、江戸の頃にもなればかなり一般の人にも知られていたのにもかかわらず、900年も、火災や戦乱によって失われることもなく、盗難にすら遭うこともなく、これらの黄金遺産が守り抜かれてきた、奇跡とも言える事実に、なんだか涙が出て来ました。
平日午後、延長開館時間以外では一番空いているはずの時間帯でしたが、なかなかに混雑していました。でも物がモノですから、観辛いという程の事はありませんでした。会期が進むにつれ、更なる混雑も予想されます。興味のある方はお早めに行かれるのが良いと思います。一部展示替えはあるそうです。一通り観終えた後で、最初に観たCG映像をもう一度見ました。今観て来た11体の本来ある姿を、大画面でしっかり観ておさらいさせてもらいました。
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