超絶技巧、未来へ!明治工芸とそのDNA
三井記念美術館|東京都
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神技の向こう側
超絶技巧展もこれで3シリーズ目。毎回毎回「超」とか「絶」とかを通り越したアンビリーバブルなスゴ技に驚かされてきた。
今回も各地を巡回中で、待ってれば私の地元にも来るのだがそれは1年後。
そこまで待てぬ、もはや辛抱たまらんとなって、11月上京時に三井美へと突入した。
会場に入っていきなり驚くのが福田亨の《給水》だ。板の上の水たまりに止まった揚羽蝶を木工で作っている。
解説読めば驚きの追い討ち。蝶の色は着色せずに色が違う木を使った立体木象嵌という手法でつけているんだと。
さらに、驚きのだめ押しが板の上の水たまり。何かの透明樹脂を乗せているように見えるが、実はその下の木を凸状に彫って磨き上げているんだと。
もうそれだけで、この展覧会に出てくる作品がレベチだとわかる。
日美で取り上げてた大竹亮峯作品も実物が見れて感無量。
《眼鏡饅頭蟹》はそこに魚屋さんから買ってきた蟹を並べただけに見える。
《月光》は、月下美人の花が開くやつ。素材にチタン合金とかNiTiとかの記載があったので、形状記憶効果によるものか?
超絶技についにサイエンス導入ってことだね。
同じく日美にも出演されてた前原冬樹も木彫作家だ。
スルメやグローブは、それが1枚とか1個の木片から掘り出されたものだと聞いてにわかには信じ難い。
「なんで?」とか「どうやって?」とかの疑問はこれらの作品の前では無意味だ。
ただひたすら、これは今この世で創作活動中の一人の作家さんの手によるものだという事実と現実を受け入れるしかないのだ。
その疑問がわく典型かつ当展でのハイライトは稲崎栄利子の陶芸だ。
私は会場でその作品を見て、微小なビーズあるいはリング状の陶磁物体を一つ一つ接着剤でひっつけて塊状にしたオブジェだと思った。
が、しかしTVでそれを持ち上げたシーンを見てぶったまげた。
なんと、それは織物だったのだ。早い話が、陶製のレース編み。
神技なんて呼び方さえも陳腐に思えてくる。
ここまで来たら、神をも畏れぬというか、神さえもやらない領域じゃないかと言いたくなる。
神の向こう側に踏み入った作家たちは、他にも続々と登場する。
金工の本郷真也は「自在」の伝統を今に受け継ぐ現人神だ。しかも扱うのが鉄という最高難度素材。
明治期の鉄の蛇や伊勢海老を21世紀に作れる人がいるのかどうかが、私の心配事だったが杞憂だった。
世界にはどんな超絶技巧があるのか知らないが、おぞらくこの手の精密工芸においては日本人以外に出る幕はないのではなかろうか。
ノーベル工芸学賞がもしあったら、当展出展者全員は受賞するだろうし、私が人間国宝を選ぶ権限があるならば、現役のかたは全員を認定する。
展覧会の後半は、もはや神となられた明治期の作家さんがたアゲイン。
清水三年坂美術館からのおなじみの名品群が所狭しと出展されている。とにかく、こればっかりは実物を見て腰を抜かしてください。
当展、現在は富山県水墨美術館で2月まで開催中。次は9月に山口県美、11月に山梨県美が判明しています。
水墨美と山口県美の間にもどこかであるかもしれませんので、もしお近くに来たら何を差し置いてでもご覧ください。