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特別展「やまと絵 ‐受け継がれる王朝の美‐」

特別展「やまと絵 ‐受け継がれる王朝の美‐」

東京国立博物館|東京都

開催期間:

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四大絵巻を堪能。この秋、日本美術好きには外せない凄い展覧会です。

日本絵巻史上最高傑作として名高い四大絵巻(《源氏物語絵巻》《信貴山縁起絵巻》《伴大納言絵巻》《鳥獣戯画》、全て国宝)、更に神護寺三像(《伝源頼朝像》《伝平重盛像》《伝藤原光能像》、全て国宝)、三大装飾経(《久能寺経》《平家納経》《慈光寺経》、全て国宝)、が集結!! 国宝に重文、教科書に載るレベルの資料がぞろぞろ!!ボリュームは本当に半端ないです!!さすがにトーハクさん、力の入った凄い展覧会です。日本美術の王道の歴史を辿ることができる、超貴重な機会なのだそうです。
この展覧会は特に、事前にHPで出展リストのチェックは必須です。4期全て観に行ける人は好いのですが、普通の人はそこまで出来ないものです。せいぜい私のように「2回、頑張って行っちゃおうかな」、というのがいいところでは? 皆さんもうご存じでしょうが、「四大絵巻揃い踏み」と言われていますけど、それは第1・2期だけになります。もちろん四大絵巻だけが今回の目玉な訳ではないですが‥。それなら何を観たいか、がとても大事ですよね。自分の興味とリストをじっくり検討して、行かれるのがよいでしょう。私は、リストを検討し、公開画像を見て、まずは第2期にと決めました。そうして第1期の間に『京都・南山城の仏像』展を観たついでに、会場前のVTRを見、本館で関連展示されている『仏画のなかの“やまと絵”山水』『近世のやまと絵-王朝美の伝統と継承』も事前鑑賞して、ネットで研究員さんの解説講演Vを見て、IMや美術展ナビ等の解説や画像や、色々な方が書かれた口コミ等もチェックして、それからかつて自分が観た展覧会(過去にも《鳥獣戯画》は2007年にサントリーで観、2014に京博で、2021年にトーハクで観、《信貴山縁起絵巻》は2016年に奈良博で観、《伴大納言絵巻》は2016年に出光で観、《源氏物語絵巻》は2010年五島美術館の特別展で五島・徳川両美術館がお持ちのモノと「平成復元模写」も含めて観、と、各館其々の特別展で観て来ていました。《聖徳太子絵伝》も2011トーハク法隆寺館で複製展示され8K画像と細部解説も観ました。)での資料やらその後に入手した資料やら、其々でギャラリートークのVが公開されているものなどは再度見させて頂き、各巻・部位の内容・あらすじもチェックして、その上で出かけさせていただきました。因みに四大絵巻の第2期での展示は、《源氏物語絵巻》は徳川美術館の《柏木二(国宝) 》、《源氏物語絵巻詞》は観たことなかった春敬記念書道文庫の《松風》。朝護孫子寺の《信貴山縁起絵巻(国宝)》はとりわけ面白い、ケチな長者が法力托鉢にお布施を拒み、鉢を倉の隅に捨て置いたところ、鉢が倉ごと持ちあげて飛んだという《飛倉巻》。人々の慌てふためく様子や表情、風景描写に、飛ぶ米俵の何ともリズミカルな間合いがとても好いですね。高山寺《鳥獣戯画》は、以前に観た中で一番印象の薄かった、擬人化されないままの龍や麒麟も含めた色々な動物の生態が描かれ、動物図鑑としての性質が強いと言われる乙巻です。《伴大納言絵巻》は2期には展示がなく、初めて出会う《粉河寺縁起絵巻(国宝)》が展示されています。《伴大納言》は観たこともあり出光美術館蔵なので今後も観る機会も多いかと思いました。
「やまと絵」を扱ったトーハクの特別展は、1993年の「やまと絵―雅の系譜」以来、30年ぶりとなるそうです。30年となると、ちゃんと観ている筈ですが、私も記憶がはっきりしません。前回は平安から江戸時代を扱っていたそうですが、今回は平安から室町時代に絞った上で、その系譜を追っているということです。まず、「やまと絵」を理解するためには二つのポイントがあるのだそうです。一つは「やまと絵」とは中国美術の「唐絵」や「漢画」に対するものとして「やまと絵」という概念が生まれていて、単独では成り立たない概念なのだということでした。同様画題を同様の技法や画材で描いても、中国の風俗や景観が描かれているものと、日本の風俗や景観が描かれているものの違い、なのだそうです。また別に、「やまと絵」は奥行き感を排除した表現であることも、大きな特徴だと言われています。二つ目は、時代によって「やまと絵」の概念が変化するということでした。これは益々解らなくなるのですが、鎌倉時代以降には水墨画がとても多くもたらされ、これを「漢画」とし、対して「唐絵」から引き継いだ彩色画を、より日本風に美しく進化させしたものが「やまと絵」とされるようになっていったようです。このように、常に外国との関係性によって定義されながらその概念を変化させて来たのが、「やまと絵」なのだそうです。それってそのまま日本人の国民性そのもののように思えて、なんだか不思議に納得してしまいました。で、私はその程度の基礎知識でしたが、展示は序章の《浜松図屏風》と《四季山水図屏風(伝周文筆)》の対比に始まり、「やまと絵」が外来の「唐絵」「漢画」から影響を受けつつ、独自の発展と成熟を成して行く様子を、時代を追って紹介されていて、それなりの作品配置で、ちゃんと比較も楽しめるように観せてくれていました。四大絵巻や日記や経で横長の世界に少々疲れると、壮大な屏風や精緻な工芸調度品などで、少し違った目の愉しみも、良い塩梅にちりばめられていました。《源氏物語図扇面貼交屛風(室町)》など、絵巻の場面を屏風に貼られた扇面で観るのも、豪華でなかなか楽しいかったです。終章ではやまと絵において描き続けられて来た四季の景物に焦点を当て、やまと絵を通して日本人の美意識の所在を探っていました。
長くなってしまいました。私はとても日本美術の王道を観切れたとは思えません。展示替えで作品が変わると若干は受ける感覚が違うのかもしれません。それでも、とても充実した素晴らしい展覧会でした。3期4期もこれから続きます。私ももう一度行ってみるつもりです。『やまと絵展』ボリュームではこの秋一番、日本美術好きには質・内容共に「皇居三の丸尚蔵館」開館記念展と同じくらいに優れて貴重な展覧会なのではないかと思います。まだの方はぜひ、またこの時期とても内容のいい本館総合文化展もおすすめです。トーハクに足を運んでみてください。

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