鑑賞レポート一覧

「横尾忠則 寒山百得」展

「横尾忠則 寒山百得」展

東京国立博物館|東京都

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横尾ワールドはやっぱり私には難解でした。

「やまと絵展」二度目で第4期を観に行き、「ついでに」と言っては申し訳ないですが、横尾忠則「寒山百得」展、も観て来ました。85歳を過ぎた横尾忠則が、コロナ禍の約一年余に手掛け、独自の解釈で再構築したという、寒山拾得シリーズ102点が公開されています。
トーハクの解説によれば、「寒山と拾得は、霊地・中国天台山を背景に生まれた伝説的な人物で、奇妙な笑いを浮かべ、常軌を逸した振る舞いで知られ、仏教では真理を目覚めさせる「散聖」ともされました。古く多くの知識人を惹きつけ、東洋においては伝統的な画題となっています。」「その世俗にとらわれない暮らしぶりは、森鷗外や夏目漱石といった日本の近代文学にも取り上げられています。高い教養を持つにも関わらず、洞窟の中に住み、時には残飯で腹を満たすと言った脱俗的な寒山拾得の振る舞いは、世俗世界の現実からの逃避に憧れを抱いた知識人たちを魅了したのでしょう。」「新型コロナウィルス感染症の流行の下、横尾は、寒山拾得が達した脱俗の境地のように、俗世から離れたアトリエで創作活動に勤しみ、まさに時空を超越し、あらゆる世界を縦横無尽に駆け巡りました。描き出された寒山拾得からは、めくるめく物語が紡ぎ出されています。画家活動の最大のシリーズとなる「寒山拾得」は百面相のように、観る人にさまざまな問いを投げかけることでしょう。」と‥。
横尾氏いわく「複数の私が自分の中にいて、それを寒山拾得画の中に開放」「じっくり考えていては1年に30作くらいしかできない、それでは面白くない。とにかくスピーディーに描く」「観念と言葉を排除して描き続けた」と‥。
混雑はなく、そこそこに観覧者はいらしていました。写真OKですし、自由に観て回れました。観に来ている方は、お若い方もいらっしゃいましたが、わりと私と同世代かそれ以上の方が多い様でした。私が学生時代やそれから10年くらい?? 横尾氏は凄く人気でした。友人に引っ張られて展覧会も何度か行きました。その頃も氏の作品を全く理解できなかった私です。最近の国立新美も都現美も観ていません。今展はあの頃、70年代以来の横尾氏でした。昔とはずいぶん違った印象でしたが、やっぱり私の理解できる範囲を外れた展覧会でした。
曽我蕭白の『寒山拾得』には、私もすごく衝撃を受けましたので、蕭白の作品を下敷きに描き始めたという作品たちに、興味があったのは確かです。そして85歳を超えてもなお、この作品数と描き殴ったような凄まじい勢い、腱鞘炎の痛みで思うように手が動かせなくてもなお、不自由すら力にして描き切る横尾氏の、気力体力と執念には感服してしまいます。便器やトイレットペーパーやクイックルワイパー? マネやゴッホやルノワールの作品も。ユーモアもイロニーも、オマージュも、それなりに良いのですが、それでもやはり私はどうしても好きになれませんでした。捉え方すらも自由??と敢えて言われても、アートはそもそもそういうものだと思っていました。どうしても、現代アートが苦手な私ですので、今展の力作を観終わっても、「考える前に描け」とまで横尾氏が求めていた面白さは感じることが出来ず、ただ「おつかれさま」としか思えませんでした。横尾氏とトーハクさんとファンな方にはごめんなさい、ですね。こういう者もいる、それも自由のウチでしょうか?
表慶館でのこちらの展示に合わせて、前に「やまと絵展」の第1期に来た時には、本館2階で、特集『東京国立博物館の寒山拾得-伝説の風狂僧への憧れ』が催されていました(こちらは11/5までで、今はもう終了しています)。中近世の絵師たちの描いた『寒山拾得』と、現代アーティストの横尾忠則の描いたそれとを両方観て、日本人の心に不思議な吸引力を持つ『寒山拾得』とは、を観る人各々に考察してほしいというトーハクさんの意図でしょう。伝周文筆/春屋宗園賛《寒山拾得図(重文)》、伝顔輝筆《寒山拾得図(重文)》伝因陀羅筆/慈覚賛《寒山拾得図(二幅)(重美)》などなど、国宝重美重文含め18作品23点、なかなかのものでした。異色なのは鈴木春信筆《中納言朝忠》。三十六歌仙藤原朝忠「人をも身をもうらみざらまし」ですが、二人の美人が隆とした立ち姿で描かれ、一人は文を読み、もう一人はなぜか箒を手にしています。この箒がアイコンとなり、見立て寒山拾得とも呼ばれる作品だそうです。へぇー(笑)です。それから唯一明治の作品、河鍋暁斎が寒山と拾得と師豊干さんと虎を描いた《豊干禅師》も観られました。ちょっとおかしな1畳ほどのこの作品は、暁斎が川越の内田斧右衛門宅で描いた席画(即興画)だというから驚きです。『寒山拾得』、不気味と言えば不気味で面白いと言えば面白い色々を観ることが出来ました。

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