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企画展 物語る絵画 涅槃図・源氏絵・舞の本

企画展 物語る絵画 涅槃図・源氏絵・舞の本

根津美術館|東京都

開催期間:

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夏期講習より役に立つ

根津美に来ることはあまりない。よほど他にいく展覧会や美術館がないときぐらい。
一度、本物のカキツバタが咲いてる時期に燕子花図屏風を見に来たいけど、GWで人が多かろうし。

企画展や特別展はかなりいいのやってるんだけどね。
ただ、その企画が偏差値高いというか、私みたいな右脳でアート楽しむ人間には左脳を使わせすぎな嫌いがあるのも行きにくい理由の一つだ。

6月上京時は「お地蔵さん」がテーマで、仏教美術は嫌いじゃないんだけど、地味だなあ、水子供養なんかも頭をよぎるなあと、行くのやめた。
で、この7月は「物語る絵」。
サブタイトルに、涅槃図、源氏絵、舞の本とあって、これならいいかもと、やって来た。

日曜の表参道は、外国人でごったがえしてる。
美術館に入れば少しはマシかと思えば、むしろ逆。どこで情報仕入れるのか知らんけど、客の比率は日本人より多い。
だけど、皆さん神妙に鑑賞されてて、大声でしゃべくりながら会場回る日本人マダムよりはよっぽど行儀いい。
まあ、展示作品の質の良さが、見る者を黙らせるってとこもあるんだけどね。

で、物語る絵。絵物語じゃいかんのかと、言うなかれ。
物語として書いた絵じゃなくても、絵が語るってこともあるわけだ。
《仏涅槃図》は典型的な「語る絵」。
右手を枕に頭を北、お顔を西に向け横臥し亡くなったお釈迦様の周囲に十大弟子や八部衆を筆頭に、眷属から動物まで集まって嘆き悲しむおなじみの図。
右上のお約束は、母上の摩耶夫人が雲に乗って駆け付けられたシーンも。
今回出てたのは、南北朝時代に行有と専有なる僧が描いたもので重文だ。
同じく重文で並んで出てる《釈迦八相図》もそうなのだが、退色が著しく肉眼では細部が見えにくい。
ガラスケース内での奥行きが割とあるので、眼鏡かけて視力1.5の私でもキツイ。
最近は望遠鏡で展示品見る人増えたけど、そうまでして見たいかねと今まで冷ややかに思ってた。
でも、これはそうでもしないとお釈迦様のご尊顔をしっかり拝むことはできませんな(笑) 見られるお釈迦さまも照れくさいだろう。

その反面、絵巻物はくっきりはっきり至近距離で鑑賞できる。
国宝展なんかの絵巻物は、最も見にくいというか、動かない人垣で前面に出れず、見る気が失せることは多々あるがここはそんなことない。
見たかった《北野天神縁起絵巻》も《酒呑童子絵巻》もバッチリだった。何重にも人垣ができてないのはもちろんだし、当館のガラスは反射がなくていいし、何より20度くらい前傾させてあるのが嬉しい。
巻物をベターっと平置きにするセンスない美術館にはこれまで辟易してきたから。どこも根津を見習ってほしい。
もうちょっと広げてほしいと思うのは贅沢かな。絵巻物専門展じゃないしね。
それにしても天神様って怖いねえ。大宰府に流された恨みはわかるけど、祟りまくりだもんね。「闇落ち」の元祖はこの人だね(笑)。

「絵物語」自体もちゃんと出てる。源氏と平家が揃い踏みだ。源氏は光源氏のほうだけど。
《源氏物語図屏風》は華やかでいいね。
ただ、お話のほうは恥ずかしながら全文読んではいないので、「これがあのシーンか」と絵に没入できないのは悲しい性。

一方で《平家物語画帖》では、古文の時間に何度も群読させられた那須与一の名場面に感激だ。
扇の的を見事射抜いたシーンに、あの有名な文章が書き添えてあるのだが、読めない。
しかし、ご安心あれ。ちゃんと読める字でキャプションにありますので。

与一、かぶらを取つてつがひ、よつぴいてひやうど放つ。
小兵といふ条、十二束三伏、弓は強し、浦響くほど長鳴りして、あやまたず扇の要際一寸ばかり置いて、ひいふつとぞ射切つたる。
かぶらは海に入りければ、扇は空へぞ上がりける。
しばしは虚空にひらめきけるが、春風に一揉み二揉み揉まれて、海へさつとぞ散つたりける。
夕日のかかやいたるに、みな紅の扇の日出だしたるが、白波の上に漂ひ、浮きぬ沈みぬ揺られければ、沖には平家、ふなばたを叩いて感じたり。
陸には源氏、えびらを叩いてどよめきけり。


これですよ、これこれ! 絵も語れば字も語る。右脳と左脳がフル回転でシンクロし、平家物語を今によみがえらせる。
高校生は予備校の夏期講習帰りの息抜きに来てごらんなさい。難解な古文も好きになるかもしれませんよ。

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