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開館20周年記念展 コスチュームジュエリー 美の変革者たち シャネル、スキャパレッリ、ディオール 小瀧千佐子コレクションより

開館20周年記念展 コスチュームジュエリー 美の変革者たち シャネル、スキャパレッリ、ディオール 小瀧千佐子コレクションより

パナソニック汐留美術館|東京都

開催期間:

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モードの主役はむしろこっち!コスチュームジュエリー

もうすぐ師走の会社帰りにようやく訪問のパナソニック汐留美術館コスチュームジュエリー展。
会期後半で焦りましたが無事行けて良かったです!期待以上の展覧会でした。
アクセサリーブティック経営者でコレクターの小瀧千佐子氏が個人所有するコスチュームジュエリーの展覧会。
まず驚くのが展示品数446点という膨大な数(展示は一部でしょうから所蔵数どのくらいなのか。。。)と、その内容の充実ぶりです。

そもそも『コスチュームジュエリー』とは?
------------高価な素材で作られたハイジュエリーとは異なり、デザイン性を重視したアクセサリーの総称。
      プラスチック、ガラス、木や人造宝石など自由な発想で多種多様なものが使われる(by日本コスチュームジュエリー協会)------------------

ちなみに日本だとネックレス、イヤリング、イヤーカフ、バレッタ等々の事を「アクセサリー」と呼んでいますが、海外ではこれらを「コスチュームジュエリー」と呼んでいるそうです。
アクセサリー➡『付属品』という意味なので。
服以外の全部(帽子、靴、バッグ、ベルト、スカーフetc)ひっくるめてアクセサリーと称すのだとか。
展示ではコスチュームジュエリーの草創期に始まり、今日の世界経済の一翼を担うまでに進化したファッション業界形成に至った歴史と発展、その魅力を伝えています。
そして蛇足ですけど本展の作品リスト、紙が厚くて情報多くて素晴らしいです!これで各メゾンの特色とか年表付いてたら図録不要かも。。。
会場は3章に区分され、各章の注目人物とポイントをピックします。

第1章:美の変革者たち-----オートクチュールのコスチュームジュエリー
注目3名は女性ファッションをコルセットの拘束から解き放ったポール・ポワレ。
ジュエリーにファッションツールとしての選択肢を拡げたココ・シャネル。
そしてデザイナーを支える職人を抱える工房メゾン・グリポワです。
特筆はファッション界の女王というか、逸話に事欠かない女傑のココ・シャネル。
彼女の名前を画像検索すると、黒のワンピースに真珠のネックレスを何連も重ね付けした上半身フォトが最初に出てきます。
このネックレスが淡水でもない模造パールという人工パールで作ったコスチュームジュエリーのひとつなのです。
ジュエリーを自分の美を高めるツールとして着こなすシャネルの姿が象徴的。
【美しさは女性の「武器」であり、装いは「知恵」であり、謙虚さは「エレガント」である】
【服の優美さは、身動きの自由さにある】
【大切なのは洋服にマッチしたジュエリーを身につけること】etc..
深イイ名言を量産したシャネルはジュエリーを貴石をメインに据えた富裕アイコンではなく、ファッションスタイルを表現する手段という役割を創りました。
この実践によってコスチュームジュエリーはどんどん多種多様に進化し、かつ量産➡産業化に向かいます。
メゾン・グリポワは1924~1969年までシャネルの創作を支えるジュエリー工房として模造パール、人工素材のネックレスやブローチを制作。
展示されていたシャネルの代名詞とも言えるカメリア(椿)ブローチは今も度々新作ファッションでリバイバルするモチーフで、シックで愛らしいフォルム。
これは欲しい。。。会場鑑賞の皆様も男女問わずケースに張り付くように熱心に見ていました。
その他ディオール、バレンシアガ、ジバンシィと老舗メゾンを支えた、ランウェイに映えそうな大振りコスチュームジュエリーがキラキラと展示されて眩しいです。

第2章:躍進した様式美-----欧州のコスチュームジュエリー
コスチュームジュエリーが高価なルビー・サファイア・エメラルド等の貴石から、鋳造ブロンズ・ワイヤー・ガラス等の素材も用途も広がる過程展示です。
注目は日本ではマイナーながら、世界で著名なフランス人アーティスト、リーン・ヴォ―トラン。
素材にベルベットやフェルト、羽根、コルクなど自由な表現を創り上げたリナ・バレッティ。
そして貴石ではなくてガラスビーズ版のヴァンクリーフ・アーペルのようなキラキラガラスを多用したモチーフを作るシシィ・ゾルトフスカ。
リナ・バレッティとシシィ・ゾルトフスカのバラエティに富んだ作品は汎用ジュエリー躍進の見本市、あるいは枝が広がるような進化の図解のようです。

第3章:新世界のマスプロダクション-----アメリカのコスチュームジュエリー
マスプロダクション=大量生産という名に相応しく、資本主義と経済拡大を驀進する20世紀前半~後期アメリカのジュエリーメインです。
40点以上が並ぶミリアム・ハスケル(MIRIAM HASKELL)は現在の日本にも店舗のあるジュエリーブランド。
銀座三越店を覗いたことがありますが、マットな質感のゴールドとパールの組み合わせが豪奢なアクセサリーですね。
会場のハスケル製品も職人による手作業の技術の高さが発揮された逸品ばかりで眼福。
もう1人、産業面で特筆したいのがユージン・ジョセフが創業したジョセフ・オブ・ハリウッド社の作品。
名前でわかるようにハリウッド映画業界のご用達で、『風と共に去りぬ』や『スエズ』を始めとした作品衣装に貢献しています。
映画を見た女性達はきっと競ってヒロインの身に着けたジュエリーを買い求めたのでしょう。
考えてみれば、普通のトランクメーカーだったルイ・ヴィトンがハイブランドの象徴となったのも、O・ヘプバーン主演の『昼下りの情事』とか『シャレード』で使われたのが切っ掛けの1つだったりするのですから、役者の持つアクセサリー(コスチュームジュエリー)はそのまま流行商品。
鑑賞者の購買欲を刺激する映画が作る流行とかスポンサーや広告等、今の経済社会のスタイル確立です。
廉価な素材を使用したことで大量生産が可能になったジュエリーはアメリカだけでなく、世界中での生産が可能になりました。
展示品もアール・デコ調の大振りなすずらんモチーフや、透明なクリスタルガラスの羽根がライトに照り映える蝶のブローチ等、見ているとだんだん欲しいな~身に着けたいな~。。。。
と欲求が湧いてきてしまいます。そして今の私達は、そんな欲しいジュエリーに似た商品をネットや駅ビルのセレクトショップで買って楽しむ事ができるんですよね。
マリー・クワント展でも思いましたが、ファッションの先端はオートクチュールであっても、大衆に広めるのはマスプロダクションの力。
量産可能なコスチュームジュエリーの方が、モードの主役と言っても過言では無さそうです。

ジュエリー史として見応え満点なコスチュームジュエリー展。
パナソニック汐留では12月17日に最終日を迎えますが、2024年2月17日より京都の三条にある京都市文化博物館にて巡回予定とのこと。
関西が守備範囲の方にお奨めです。入場価格も優しくてちょっと羨ましい。

ちなみに会場ジュエリーのマイベスト1は同点1位の2点。
【No.407ネックレス”ジャッキー・オナシス・スタイル”】は数少ない撮影コーナーの品。
ガラスと金属・ラインストーンのみの素材ながら金地カラーの豪奢なネックレス。
J.Fケネディ大統領のファーストレディ、ジャクリーヌ夫人お好みスタイル。
スワロフスキーを埋め込んだ金地に囲まれた赤・緑の大振りカボションガラス。ぽってりとしたフォルムがつややかに光っています。
例え安物無地のノースリーブワンピだけしか着ていなくても、このネックレスを身に着けるだけでパーティのドレスコードをクリアできそうです。
【No.2ネックレス”葉”】は展覧会チラシ、ポスターにも掲載されたツヤツヤの赤茶色エナメル(七宝)とメタルの葉っぱを巻き付けたようなネックレス。
キラキラの玻璃の輝きは一切無い、エナメルのみの茶色の葉っぱのみです。色彩的には抜群に地味なはずなのに最も印象的でした。
自分にとってのマイベストを選ぶのも楽しいと思います。

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karachanさん、さいさん、morinousagisanさん

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