鑑賞レポート一覧

メモリアル 節目を迎えた日本画家たち

メモリアル 節目を迎えた日本画家たち

足立美術館|島根県

開催期間:

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年中無休

今年は西暦2023年。1923年生まれの作家なら生誕100年、同年没なら没後100年なんて企画展が開かれる年です。
別に100年でなくともよい。生年や没年の下一桁が3なら、生誕150年だろうが没後30年だろうが、全部OKってこと。
足立美術館では、3の年に生まれたり亡くなったりした日本画家たちを総登場させて一堂に会する企画展をやっちまいました(笑)
「節目を迎えた日本画家たち」なるタイトルはそういうことなのです。

ちょっと並べてみます。
川合玉堂、下村観山 1873生 生誕150年
橋本関雪、小林古径 1883生 生誕140年
山元春挙 1933没 没後90年
松林桂月 1963没 没後60年

錚々たる面々です。これだけでもかなりのものなのですが、足立美術館はまだまだやります。下一桁8も加えてしまいます。

横山大観 1868生 1958没 生誕155年 没後65年
鏑木清方 1878生 生誕145年
村上華岳 1888没 没後135年
伊藤深水 1898生 生誕125年
木島櫻谷 1938没 没後85年
入江波光 1948没 没後75年
安田靫彦 1978没 没後45年

ここまでくると、いささかコジツケ感もあって、企画展テーマがネタ切れのときの秘密兵器だったのかとも思えてきます(笑)
だけど、それでちゃんとした展覧会になるほどの作家であり作品数を有しているのが足立美のスゴイとこ。
展示室の最初から最後まで一点一点心ゆくまで堪能させてもらいました。

今回の足立行は、夫婦でのバスツアー利用。女房は未訪だったので、いつか一緒に行こうと言ってたのが実現した次第。庭も企画展も喫茶室も大満足してくれました。
行った日は月曜でしたが大雨にもかかわらず来館客大勢。観光バスからマイカーまで、足立美の人気の高さは相変わらずです。

入館して庭園をざっと拝見し、美術鑑賞へ。
小展示室では、島根県花のボタンを描いた作品が大集合。日本画の牡丹は誰が描いても、まさに「華」があって素晴らしい。
今やってるNHK朝ドラでも牧野富太郎が牡丹をスケッチしてましたね。

大展示室では前述した「節目」の日本画家が大集結。
大観の《無我》は初見。東博も水野美術館のもまだ見てなかったので会えてよかった。三点のうちではいちばん地味なのですが、そこがいいんじゃないと納得。
玉堂は4点。おなじみの長閑な絵もあれば、《鵜飼》はこんな激流でやるかというダイナミックなシーンです。
五雲の動物画もいい。《寒梅》のミミズク、《凍夜》の猟犬、いずれも惹かれました。
関雪《玄猿図》はテナガザルの毛並みの触感が視覚で感じとれる傑作です。
珍しかったのは大観と観山の合作《巌上之両雄》。左の軸は観山が虎を、右の軸には大観が鷲を崖の上に描いた対幅。断崖が大半を占める絵の上方に小さく描かれた虎と鷲が「両雄並び立って」かっこいい。

大観室では《雨霽(は)る》が見れて嬉しかった。足立善康氏の大観収集歴における屈指のエピソードを有する作品。
実物を初めて見て、善康さんの気持ちがよくわかりました。それほど素晴らしい作品です。

魯山人室では、改めてこの人のセンスと技量に感服してしまいます。
彼の陶芸作品見ていつも思うのは、この皿で食事したい、この徳利と猪口で一杯やりたい、そればかりです。
そんな思いを逆なでするかのように、作品脇には料理が盛られた写真があるのが腹立つわぁ(笑)

本館見終わって、喫茶で一休み。喫茶室は大庭園に面した「翠」と中庭に面した「大観」、茶室「寿楽庵」の三つあり。
「翠」は、窓際の順番待ちが4組ぐらい。ならばと、「大観」に行けば運よく窓際にすぐ座れました。こちらのケーキセット1100円は、ドリンクだけで1000円の「翠」より断然お得です(笑)

その後はショップで絵葉書買って、地下道通って新館へ。藝大卒の現代日本画の俊英さんがたの作品をたっぷりと鑑賞できます。
釘付けになったのが小田野尚之さんの作品。抽象的日本画が多く並んでる中、かなりの写実派でモチーフは田舎の鉄道や駅舎。
昨今のスーパーリアリズム画に近いとも言えますが、ホキ美術館にあるような写真と見まがうほどのものでもありません。今も日本のどこかにこんな風景があるのかと思うと、ノスタルジーと共に旅心が湧いてきます。
この方の作品、昨秋の東京ステーションGでの「鉄道150年展」に出てたのではと思って調べたら出てません。これはキュレーターさん、痛恨の抜け落ちではないでしょうか。
全国の「美術鉄」の皆様、小田野尚之という名前を是非覚えておいてください。

足立美術館については当サイト美術館感想欄にも書きましたが、書き足らなかった部分を追記しときます。
当館の展示室は大きく分けて、5室。小展示室、大展示室、横山大観室、廬山人室、新館展示室です。企画展は大展示室で。他の展示室もそれに合わせて作品が入れ替わります。
もちろん、すべて収蔵品なのでいつ来ても見られる名品もかなりありそうです。
そして何より素晴らしいのが、本館は年中無休なこと。年に4回ある企画展示の入れ替え作業を一晩でやってしまうなんて神業以外の何者でもありません。
新館はさすがに展示入れ替え休館日があるようですが、それでも2日間ですませてあとは平然とオープンしてます。
盆暮れ正月、全部やってる美術館っておそらくここだけでは?

美術館以上に有名な庭園については、私がここに書くまでもありません。
アートアジェンダユーザの皆様には、当館コレクションを是非見ていただきたいと願うばかりです。
東京からだと米子鬼太郎空港へ1時間15分、そこからJRで安来駅へ、さらに無料シャトルバスに乗れば足立美へは午前10時には着きます。(足立美術館は島根県安来市にあります)

本日6月1日からは夏季企画展「日本画壇を彩る東西の巨匠たち」が始まりました。
会期は8月30日まで。翌31日からは秋季企画展です。

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