没後50年 福田平八郎
大阪中之島美術館|大阪府
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知らない画家。その画風の変遷を知る。
去年ぐらいから中之島美術館で告知チラシが配布されていた福田平八郎。
初めて知った画家です。
むしろ「へぇ、奉行でありながら絵も描くなんて渡辺崋山みたい」なんてわけのわからないことをつぶやいていました(奉行は大塩平八郎ですね)
しかし、チラシのキービジュアルである「漣」や「雲」の絵は一目見て気に入り、開催をずっと楽しみにしていました。
まだ、様々な画風を描いていた『手さぐりの時代』。
『野薔薇』のような細密な絵から、琳派のような「池辺の家鴨」などバラエティに富んだ画風からスタートします。
やがて、指導を受けていた中井宗太郎氏のアドバイスに写実の道を歩みだした「写実の探求」。まさしく「探求」にふさわしい情念すら感じられる絵の数々。
特に鯉の描写がすごい。残念ながら私が訪れたときは現在は国の所有物で、帝展で特選を取り、結婚を許されたという曰くのある『鯉』の展示は終わっていましたが、代わりの『遊鯉』も見ごたえ十分です。
そして『漣』のような大胆かつ繊細な「鮮やかな転換」。
特に『漣』は一見波紋を単純化しただけのように見えますが、線の一本一本考えて描かれており、下絵にはきちんと書き写した後として、すべてにチェックマークがついていました。こういう下絵まで展示されているのも今回の回顧録のいいところではないでしょうか。
そして、『新たな造形表現への挑戦」を経て『雲』に代表される、まるでグラフィックアートと思わんばかりに図案化された「自由で豊かな美の世界へ」
緻密な写実の積み重ねがあったからこそ、この単調化やデフォルメができるのだろうと思います。
ピカソもまた、写実的な素描があってこそのキュビズムだと思っているので、それに近いものを感じました。
そういえばピカソは「子どものように描くには一生涯かかった」という言葉を残していましたが、今回、『模写―児童画展』(前期展示)という作品もあり、彼もまた子どもの絵に特別なものを感じていたのだろうか。。なんてことを考えたり。
不染鉄といい、今年はどんどん知らない画家を知る機会に恵まれています。
ありがたいことです。
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