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テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ

テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ

大阪中之島美術館|大阪府

開催期間:

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この展覧会の人気の正体は何なのか?

「テート美術館展 光 — ターナー、印象派から現代へ」が、世界巡回展の最終開催地である大阪中之島美術館で始まりました。

東京展での観覧者は29万人で巡回先でも最高の来館者数を記録したそうです。東京展でのアートアジェンダのクリップ数も多く、投稿されたコメント数も多く、会期後半はかなりの混み様だったことも伝わってきました。関西地区でみてもアートアジェンダのクリップ数は、1位が長沢芦雪展@大阪中之島美、2位がテート美術館展@大阪中之島美となっており、その人気の高さ、展覧会への注目度が伝わります。東京では珍しくないかもしれませんが、人気の高い展覧会を同時期に開催する大阪中之島美術館って凄い!と思いました。(拍手)京セラ美でも開催されますが、共催という形であって、”貸館”的な形式なのではないかと思うのです。

本展についての詳しい情報及びレポートは、東京展の際に掲載されたアートアジェンダさんの【FEATURE|内覧会レポート】がありますので、それをご参照ください。私も事前にこの詳しいレポートと皆さんの感想すべてを読ませて頂きました。
「テート美術館とは」と、公式サイトの[見どころ]タブの一番下に説明があります。本展の[見どころ]とともにそちらもご参照ください。
 大阪、京都、神戸、たまに奈良という私の美術館、展覧会巡りでは(それでも金銭的にも、体力的にもいっぱいいっぱいです)、関西へ巡回のなかった画家、アーティスト、展覧会の作品にお目にかかれることが一番のお目当てで、本展では、ハマスホイ、リヒター、オラファー・エリアソンに加えて、アートアジェンダさんの【FEATURE|内覧会レポート】にあったペー・ホワイト《ぶら下がったかけら》がとっても楽しみでした。
と言う訳で、心の準備OKで展示会場に足を踏み入れる事が出来ました。ワクワクしながら。

・テーマ:アートの主題・媒体としての”光を”、約77,000点に及ぶテート美術館のコレクションから厳選した117点で検証。
・出品内容:ターナー、コンスタブルからロマン主義、印象派、ラファエル前派、バウハウスをはじめとした写真から現代美術まで
・世界巡回:上海、ソウル、メルボルン、オークランド、東京へと巡回、大阪が世界巡回の最終会場

本展も内覧会に参加させて頂きました。
菅谷大阪中之島美術館館長は、「大阪で世界水準の作品を同時代的に観る機会を作ると言うことが、大阪中之島美術館でテート美術館展を開催する大きな意義である」と話されていました。テート美術館 国際巡回展シニアプロジェクトキュレーター ローレン・バックリーさんの挨拶とその後の質疑応答は、かなり腑に落ちるものでした。通訳もいらしたが、やはりもっと自分に英語の理解力があればとその点は悔やまれます。
テーマは「光」だけではなく「光と色彩」「人間の知覚に注目した展覧会」とも言えるとのお話になるほどなぁと思った次第です。

イギリス、「光」というキイワードからは「光の画家」とも呼ばれたジョセフ・マロード・ウィリアムターナー(1775-1851)がすぐに思い浮かびます。そのターナーがロイヤル・アカデミーで「遠近法(透視図法)」の講義の為に描いた図解が展示されています。それらは光の屈折や反射、光と影の関係などを図解しており、本展のテーマにも通じるところです。球体の図に私はかつて見たエッシャーの作品を思い出しました。ターナーと並び称されるイギリスの風景画家・コンスタブル、その後の印象派を知っている私たちの目にはそれほど目新しく写らず、何故小さな版画シリーズがこの展示に加わったのか?と疑問に持つ方もいるかもしれません。コンスタブルは生涯イギリスを離れることはありませんでした。自然を理想化せず忠実に描いたことから図録には「風景画に革命をもたらした」と説明されています。後半生は版画家と協働でメゾチント技法による版画を制作し「光と闇の究極のコントラストを追究し、風景の中で移ろう光の劇的な効果を表現しました。」印象派へ繋がっていきます。

 ラファエル前派の一人、ウィリアム・ホルマン・ハント《無垢なる幼児たちの勝利》ちょっとばかしゾワッとする濃密な作品です。転がる球体は青く反射して周りの景色を映し出しています。山本芳翠《浦島》思い出しませんでしたか?ホルマン・ハントの展覧会あればゾワゾワとしながらも見てみたいです。
 印象派の作品が映り込む草間彌生《去ってゆく冬》のある展示室はとても魅力的でした。確かに草間はいつも私たちをちょっと違う視点へ誘ってくれるようです。光の移ろいの連作を描いた日本人が大好きなモネは、来年2月にここ大阪中之島美に巡回展があるので楽しみにしておきましょう。

 室内の光(と影)を描いたハマスホイの静謐な空気感が漂う作品です。北欧特有の柔らかな光が映し出す室内、もっともっと知りたい画家であり、関西への巡回がなかったことがとても残念です。新しい表現手段である「写真」という技術を獲得したアーティストたちは「光」を捉えようと様々な実験的な試みを行います。「芦屋カメラクラブ」のハナヤ勘兵衛の作品がテートに所蔵されていることに吃驚しながらも、前衛的な集団として世界的にも認められていたことを再認識しました。モホイ・ナジ、また来たかと。2011年京近美で開催された「視覚の実験室 モホイ=ナジ/イン・モーション」全く近づけず、以来苦手意識が抜けないでいる。繰り返し見ることで他のアプローチもあるかもと。
 昨年ベストに上げた方が多かったリヒター展観たかったです。「私の絵画における中心的問題は光である」と述べています。昨春たまたまエスパス ルイ・ヴィトン大阪でリヒター作品を見る機会があったのですが、本展で間近で、離れてとスキージーの生々しい痕も見る事が出来ました。なん層にも重なったメタリックな跡が鈍く光を放っているようでもありました。

いつもの調子でのほほーんと自分のペースで展示室を回っておりますと、内覧予定時間となり最後のオラファー・エリアソン《星くずの素粒子》へと促され、目の前に現れた、想像以上に美しいキラキラ空間に魅せられました。エリアソンもゲーテの「色彩理論」の影響を受けているそうです。鑑賞者の位置に応じて展示空間の見え方が変化し、自分の行動が周囲の世界に影響を与える事に気付かせる作品だそうです。(11月24日から麻布台ヒルズギャラリー開館記念で「オラファー・エリアソン展」が開催されるそうですね。いいなぁ~皆様のご感想楽しみにしています。開催情報読んだだけでも、なんだか圧倒されそうなインスタレーションですね)
 
 結局、大阪展ではペー・ホワイト《ぶら下がったかけら》の展示はなく、その点はとても残念でした。音声ガイドのナビゲーターは板垣李光人君、ドイツ語の”Licht”つまり「光」でピッタリな人選で、解説も聴きやすかったです。

「光をどのように表現するか」「光と色彩」「光と影」「人間の視覚」など様々な200年「光の美術史」が次々と展開する展覧会でした。
本展は、講演会やコンサート、担当学芸員によるギャラリートークと「光」と言うことで11月1日からSHIP’S CAT(Muse)とのイルミネーションコラボなどイベントも盛りだくさんです。事前申し込が必要なイベントもありますので、公式サイトか、大阪中之島美HPでご確認ください。私は11/23の宮下規久朗先生の特別講演会を聴講したい。
本展では、著作権が切れた絵画作品とインスタレーション作品の一部が写真撮影OKです。

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