特別展 生誕270年 長沢芦雪
大阪中之島美術館|大阪府
開催期間: ~
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商魂込めて
「アレ」の影響は長澤芦雪展にまで及んでた。グッズ売り場にアレコラボのコーナーができてたの見て、こんなとこまで出てくるかと呆れてしまった。
やっぱ、さすが浪花の商魂はたくましいわ。恐れ入りました(笑)
しかし、冗談抜きでこの芦雪展、商魂丸出しじゃんと思うフシはある。
出展数は全116点で通期展示はわずか4点、残りは前後期で全数の展示入れ替えがある。料金は当日券で1800円なので、全点見るには3600円かかることになる。(後期はさらに半期ずつで入れ替わるのが数点あるので、コンプリートするには5400円必要)
これはいかがなものか。展示リスト見ると個人蔵が多く交渉の苦労があるのはわかるが、そこを説得し一気通貫で借りられなかったのか。
国立、公立の美術館までもがMAX1か月しか貸さないってのもなんだかなあ。
百歩譲って国指定の重文、重美を半期にするならわからんこともないが、それ以外が追随することもあるまいに。
スペースなら当館4階と5階の2フロアなら十分すぎる広さがあるわけだし。
10月下旬からは並行してテート美術館展をぶち込んでるので、それと合わせての集客効果も見込んでのことか。
ともあれ、今年度下半期で私が最も楽しみにしていた芦雪展、存分に楽しませてもらった。
開催することに意義があるということに異議はございません。
芦雪はさすが応挙の一番弟子だけあって、画力はものすごい。応挙の「静」に「動」を加えてパワーアップしたのが芦雪だと言ってよいのでは。
それが如実なのは、前期の超目玉、はるばる南紀串本からやってきたタイガー&ドラゴンの襖絵だ。
本州最南端の地にある臨済宗東福寺派錦江山無量寺の寺宝、《虎図》6面、《龍図》6面は、天から龍、地から虎が迫りくるかの如く眼前に現れ、見る者を圧倒する。
長年、串本への憧憬のみで訪問かなわなかった者にとって、それは本当に幸運をもたらす龍虎だ。芦雪ファンはこれを見ずには人生終われないだろう。
芦雪が描くのは人物、花鳥、動物と師の応挙同様に多岐にわたるが、そのどれを見ても一筆入魂の集中力で師に学び師を超えんとする絵力を感じる。
唐美人の美しさ、寒山拾得の剽軽さ、仔犬の愛らしさ、孔雀の絢爛豪華さ、幽霊の不気味さ、さすがは応挙が名代で紀州に派遣しただけの実力の持ち主だ。
芦雪オリジナルと感じたのは、鳥や動物を連続写真的に描いた絵。
《千羽鶴図屏風》の多数の鶴は、一羽が分解写真のように描かれたかのようで面白い。
薬師寺から来た《岩浪群鳥図襖》でも海鳥が降下し岩に着陸する様をストロボ撮影したかのよう。
はたまた《蓬莱山図》の亀も岩の門を複数の亀が縦列で潜り抜けて行く様がなんともユーモラスだ。
後期にも、是非とも見たい絵が多数あり。
兵庫県北部の大乗寺《群猿図》、島根県松江市西光寺《龍図襖》は、現地参拝するには遠いのでこの機会を逃したくないのだが・・・思案投げ首だ。
当展、来年2月に九博へ巡回するが、出展数は前後期合わせて53点と大阪の半数以下に激減、なのに料金は当日2000円とUPする。
これは九博の商魂というより、地方の悲哀とでもいうべきか。やれやれです。