光の芸術家 ゆるかわふうの世界 宇宙(そら)の記憶
そごう美術館|神奈川県
開催期間: ~
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画材は発泡スチロールとLED
所謂、「光のアート」なんだけど、直接光ではなく間接光。
その間接光が透過して来る材料が発砲スチロールということだ。
発泡スチロールは何でもいいというわけじゃなくて、強度や密度に優れた特殊なもの。畳の芯材として一般によく知られている発泡スチロールだ。
(商品名は書きませんが、聞けば皆さんよくご存じのはず。)
もちろん、畳買ってそれをバラして中身を抜いて使うんじゃなくて、そういう材料を最初から購入するわけです。
で、それをどうするか?
まず彫る。
ハンドグラインダ、やすりで切削する、半田ごて、シンナーで溶解するといった方法で表面に凹凸をつける。凹凸は、点、線、面と自在なので、これによってレリーフができる。
石や木ならそれで完成だが、ここから先が作者の発明した芸術技だ。
発泡スチロールの裏側から白色LED光を当てるわけだ。
すると、光は青く変わって透過し、切削度合いが異なり厚みが違う部分に濃淡ができて、描画として可視化される。
したがって、鑑賞空間は暗室となります。
そごう美術館で、この光アート展を見た。
作者はゆるかわふう氏。藝大卒のアーティストだ。
暗い会場に入ればそこはもう、青い光に溢れたファンタジックな動物画の世界。1作品が大きいので迫力もある。
クジラ、白熊、パンダといったモノクロ系動物が主役なのは納得だけど、それが理由でこういった動物を選ばれたわけではなかろう。
白と青が最も活かせる動物や背景を考慮してのものだろう。もちろん海は空でもOKだ。
白熊の毛の1本1本まで細密に浮かび上がり、海の青の深さや明るさも自在に表現できている。
時折バックライトが消え、表側からの逆光が当てられて、発泡スチロール表面のみが明暗を伴って現れる。それを見れば、切削作業がいかに緻密であるのかがよくわかる。
モチーフは、動物から人物(藤田ニコルさんカワイイ!)、風景などにも及ぶ。
中でも印象的だったのが、能舞台の背景画の松。これは斬新と言うか、伝統芸能と現代アートが見事にコラボした傑作だと思う。
薪能なんかでやったら客席から歓声が沸き上がりそう。
後半は、掘った面を裏向きにしてそちらから光を当てる作品が出て来る。
これだと、どうなるかと言うと、「朦朧体」となるのだ。まるで杉本博司さんの写真のようでもある。
サイズも小さくなって、シリーズものとしてズラリと並んでた。
えてしてアイデアアートは、見かけ倒れだったり、後が続かなかったりの一発芸で終わる場合があるが、この手法は奥が深い。
まだまだいろんなことがやれそうで、注目に値すると思う。
会場出たら、家庭用光彫りの設置方法映像が流れ、発泡スチロールメーカーのPRコーナーもあった。
デパートの美術館だから販促もいるし、メーカー支援もあっての芸術活動だからこういうのも必要なんだろね。
でも、家にこの作品あったらカッコいいと思う。配線の隠し方もレクチャーされてたので絵画以外に面白いものをお探しの方には打ってつけだ。