幕末土佐の天才絵師 絵金
あべのハルカス美術館|大阪府
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祭ばやしが聞こえる
展覧会場には屋台が組まれ、照明落とした夜祭の雰囲気がとても心地よかった。
お囃子が流れていたわけではないが、頭の中には笛や太鼓や鉦の音が鳴っていた。
そして、屋台には絵金の絵が掲げられ、人は顔をあげてそれに見入る。
ああ、これはやっぱり現地で見るもんだ。土佐の高知の夏祭り、行ってみたいなあ。
絵師金蔵。略して絵金。
幕末に土佐に生まれ絵描きの才ありと江戸に遊学。土佐に戻り御用絵師となるも贋作事件に巻き込まれ追放の憂き目にあう。
土佐藩内各地を放浪後、赤岡に落ち着いて絵筆を奮った。
その絵は、芝居絵屏風と呼ばれる土佐独自の様式で、歌舞伎や浄瑠璃の名場面を大胆な構図と極彩色で2曲1隻の屏風に描き上げたもの。
ド派手な絵なので、当然場面的には修羅場や土壇場がよく登場する。
見る者が期待するのもクライマックスシーンであり、絵金も得たりおうとばかりに役者が髪振り乱し、目ん玉ひん剥き、虚空を手で掴み、断末魔の叫びをあげる、そんな絵をこれでもかと繰り出してくる。
当然「血みどろ絵」もあったりするが、芳年や芳幾ほどのスプラッター度ではない。
描いた演目は知ってるのも知らないのもいろいろ。
「知っちょらんでも関係ないがじゃ。わしの絵を見りゃ話の筋はわかるき。」と、絵金先生は言うちょられます。
でも本当にそんな気になってしまう。なぜなら絵金は「異時同図法」なる必殺技を駆使してるから。
会場でもらった小冊子にその解説がある。すなわち、「遠近法を使って一つの画面に複数の場面を描き、時間の推移を表す図法」。
過去・現在・未来が一枚の絵の中に凝縮されて、ストーリーを表現してるわけだ。
これって、知識と技術がないとできないことで、絵金のすごさが身をもって感じ取れる。
私が絵金の絵を初めて見たのは、2020年に山口県美であった「奇才ー江戸絵画の冒険者たち」展だった。
前後期2作ずつの屏風が来ていて全部見た。そしてぶっ飛んだ。
わずか4隻の屏風だったがその衝撃は、同展での若冲も国芳も暁斎も凌駕し、以後この絵師への興味はずっと続いてた。
そして今年、ついに土佐から一挙にあべのハルカスに絵金襲来だ。
前後期展示替えあったので、見れたのは後期のみ。それでも絵金の破壊力には圧倒されっ放しだった。
展覧会は終わった。巡回展はない。でも、お楽しみはこれからだ。
高知県の夏祭りがいよいよ来週から始まるからだ。
絵金のホームタウン香南市赤岡での7月14日と15日を皮切りに、高知市、安芸市、南国市、須崎市と各地の夏祭りに絵金屏風絵が続々と登場。
「土佐で待っちゅうき」と、絵金先生もおっしゃってます。
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