特別展「京(みやこ)に生きる文化 茶の湯」
京都国立博物館|京都府
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京博さんと出展ご協力くださったすべての所有者さんに感謝
根が単純な私にとって、展覧会を評価するポイントの一つに「興奮度は国宝と重文の数に比例する」ってのがあります。
2022年秋の京博特別展「京に生きる文化 茶の湯」はまさにその定義がピッタリでした。
まあ、よくぞこれほどのお宝を引っ張って来てくださったと京博さんに感謝感激、お貸しくださった各所有者さんにも感謝感激、本当に涙チョチョ切れました。
時を同じくして東博では国宝展をやっており、そっちはオール国宝ですからさぞかし興奮度MAXではないか、と言われるかもしれませんが、別の私的評価基準「興奮度は客の数に反比例する」により、テンションは下がるはずです。
でもミーハーな私は来月上京の折に行こうと思います。
って、予約サイト見たら前半はすでに満員札止めじゃん! げに恐ろしきは国宝の威力。
京博も行く前はかなりの人手を覚悟していました。
快晴の土曜日、しかもその日は時代祭りが開催され、私が行った時間帯は行列が終わった後で、流れて来る人も多いはずだと踏んでたから。
ところがところが、意外に客は少なくて新館をフルに使った会場はどこもソーシャルディスタンスが楽勝で確保でき、快適に鑑賞できました。
思うに、テーマが「茶の湯」ですから、お茶を嗜まない方々には若干の近寄りにくさがあったのかも。
私も断然コーヒー党なので(違うか)、お茶の世界は難解でとっつきにくいとの思いはありました。そんな門外漢でも、この圧倒的な質と数の名品の前ではただただ感激して鑑賞するのみでした。
会場は3階から1階へと降りてゆくいつもの京博パターン。
お茶というものの歴史が、中国から日本に伝来した平安時代から時系列を追って時代背景と共にわかりやすく解説されており、素人も玄人も納得&満足いく展示が為されています。
だから当展の先行レビューには、「学べた」との感想がまず出てくるのは自然なことでしょう。
私も全くその通りで、茶道の何たるかを国宝と重文を拝見しながら学べたのは本当に幸せな時間でした。
茶道の何たるかなんて偉そうに書いたけど、展示品見るのに夢中で解説そっちのけってとこもありますが。
以下、ダイジェストで気ままにご紹介。
茶碗。
これはもう私ごときがくどくど書くまでもない。スーパースターが集結だ。
国宝は4点。龍光院さんの曜変天目、三井さんの卯花墻、孤篷庵さんの喜左衛門、相国寺さんの玳玻天目。
再会もあれば初見もある。でも何度見てもいいものはいい。
卯花墻なんて描いてあるのは鳥居にしか見えないが、垣根に咲いた卯花と見立てるとこが素晴らしい。
花生。
青磁鳳凰耳の名品二点、国宝《万聲》と重文《千聲》が同時出展で感無量。
「万」は知ってたが「千」があるとは知らなかった。名前の如く、大きさは万>千です。
ハラミュージアムからの《青磁下蕪花瓶》も、シンプルにして重厚感あり。見惚れてしまう。
肖像画。
秀吉、利休、隠元、栄西の4人が登場。どれも前後期で別バージョンとなるのが心憎い。
利休は等伯筆。前期は真筆、後期は伝等伯です。
後期オンリーでは若冲の売茶翁が登場します。
茶入・茶杓。
小さいので派手さはないけど、一品一品が実に渋い。
特に茶杓は、箱と合わせて色が歴史を感じさせる。そこに千利休作となければ、古臭い竹製品だなあぐらいにしか思わないだろう。
新島八重さん作の茶杓もあった。鉄砲も撃てば茶杓も作る。スゴイ女性だ。
屏風。
出展品には「これとお茶とどう関係あるの?」というのも出て来るんだけど、例えば茶室には相応しくないようなデカくてド派手な屏風が展示されてる理由は、その絵の中に茶席や茶を飲むシーンが描かれているからだ。
国宝の狩野秀頼《観楓図屏風》が白眉。展示期間は前期最初の2週間で、その後は実家の東博へ帰って国宝展を飾ります。
墨蹟。
書は読めないけど、解説はきちんとあるので、それを頼りに鑑賞し勉強できた。
とはいえ、やっぱり「読めないけど、いいね」なんて全然思わない。読めた方がいいに決まってる。
その点、楷書やそれに近い文字の美しさはどんな展覧会でも共通で見入ってしまう。当展にも、「字がわかる」墨蹟名品はたくさんありますのでご安心を。
国宝の《破れ虚堂》や《流れ圜悟》は前期展示の後に、これも実家の東博へ帰ります。
待庵と黄金の茶室。
両方とも会場内に復元されていた。前者の製作工程は映像が見れます。
待庵ってどこにあるのだろうと調べたら、なんとJR山崎駅の向かい、アサヒビール山荘美術館へ行くシャトルバス停の目の前だ。
そういえばあそこに何か史跡みたいな建物あったなあと思い出した。ほんと、勉強不足が身に染みた。
両茶室とも、照明が暗いので中が見えにくいのがやや不満。レプリカなんだから明るくしてもよかったのでは?
その点で、金ピカ茶室はMOAのほうが好きです。
ラッキーだったこと。
国宝 《宮女図》 (伝 銭選筆)に会えたこと。
当展に来る前日、神戸市立博物館での「よみがえる川崎美術館展(前期)」に行ったら、この絵は後期出展だそうでガッカリしてた。
そしたらなんと、京博に出てるではないか! これは嬉しかった。
以上、お宝の山を興奮しながら散策した感想を書きなぐりました。
でも実際はこんなもんじゃありません。とんでもない数の名品が次から次へと登場し、休む間を与えてくれません。
今年はどこの美術館もここまで順調にオープン、企画展も予定通り開催されてきた中、私のBESTは、今のところこの展覧会です。
何より、東博国宝展ほど人が殺到しないのが最高。
おいでやす京都へ。
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