特別展 生誕150年記念 板谷波山の陶芸 -近代陶芸の巨匠、その麗しき作品と生涯-
泉屋博古館|京都府
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生涯一陶芸家
板谷波山の葆光彩磁を初めて見たときの感動はいまだに忘れない。
紗のかかった色絵磁器の美しさに吸い込まれるかのごとく、しばらくの間そこから離れられなかった。
どうやったらこれができるんだろうと、答えを聞いてもわからない疑問を持ちながら。
今年は波山の生誕150年だそうで、生まれ故郷の茨城県下館の3美術館では早々に記念回顧展が開催された。
全国的には、東京と門司の出光美術館と、京都と東京の泉屋博古館で記念展が開催中だ。出光と泉屋は別々の企画展なので、両方行く方もあろう。
私は京都展最終日に行く機会を得た。
その日は3年ぶりの時代祭り開催日で、最初はそうと知らずに上洛日を決めた。
あとで気づいて「しまった」と思ったが、早めに行動すれば人混みは避けられるだろうと10時からまずは京都市美でウォーホル展とボテロ展を連チャンで見て、その後徒歩で泉屋へと向かった。
お昼時のど真ん中、岡崎公園横を通れば、相変わらず人気のうどん屋2店と洋食屋1店の前は大行列だ。
私はさらにその先の美味いラーメン屋で腹ごしらえし、岡崎神社を参拝してから、目指す泉屋へとやって来た。
入館料はJAF割きいて800円。客の入りはそこそこ多かったが混雑と言うほどではない。
波山作品は葆光彩磁だけでなく他の様々な技法を使ったものがあることがわかった。
どれもが妥協を許さぬ陶芸家としての矜持に満ち溢れた完成度の高い作品だ。
葆光という接頭辞が付かない「彩磁」のみの作品も実に素晴らしい。
絵付けと彫りの技量を堪能するならむしろこちらのほうがわかりよいかもしれない。
ジャパニーズ・アール・ヌーヴォーとの小テーマ名が付されていたが、その通りだ。
そして葆光彩磁。
これはもう神技と言っていい。波山についての解説なんか読むと、この技法は伝承されてないとのこと。
だとしたら残念ではあるが、人間国宝を拒絶し孤高のアーティストであることを望んだ一陶芸家のレジェンドは作品と共に未来永劫語られ鑑賞されていくに違いない。
明治期以降の陶芸で初の国指定重文となった《葆光彩磁珍果文花瓶》はじめ、形状、大小、文様がさまざまな作品で葆光の魅力が存分に味わえる。
泉屋所有品のみならず、国内各所から名品が集結しています。
葆光彩磁以外にも、波山が命名した至高の作品もある。
一つが「氷華磁」。
白磁に掘られた陰影部分を青磁が担っているような、得も言われぬ美しさが表出している。
氷山や氷河を見たことがあるかたはご存じだろうが、真っ白な氷の塊の深奥部や影の部分はコバルト色である。
そんな氷の白と青を華のごとく磁器の表面に開花させた波山の技術。
茨城県指定有形文化財《氷華磁仙文花瓶》は必見です。
もう一つが「太白磁」。
これは彩磁と対極にあるような白一色の白磁だ。
作品は廣澤美術館から来ている《太白磁紫陽花彫嵌文花瓶》のみだが、一目見たら忘れない白磁の美しさには彩磁に勝るとも劣らないインパクトがあった。
泉屋博古館の企画展示室は広くないので、展示品の数はいつも多くないが、そこに凝縮されたクオリティの高さは他を圧するものがある。
今回の波山展がまさにそうで、展示室の単位面積当たりの充実度では国内TOPクラス間違いなし。
最後に、当展の解説読んでて知ったのは、波山には専属のロクロ師さんがいて50年間製作を共にされてたのが、現田市松というかた。
1963年に亡くなったのだが、それに落胆した波山も同年逝去。
レジェンドの生涯を思うとき、このロクロ師さんの名も忘れてはなるまい。
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