没後70年 南薫造
東京ステーションギャラリー|東京都
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ひかりかがやくキャベツのひとたま
帝室技芸員(戦前の人間国宝の上位互換のようなもの)にもなった洋画家、南薫造。しかし今では知らない人のほうが多いだろうと思う。東京ステーションギャラリーは、こういう忘れられてしまった画家の展覧会を良く開催する。
しばらくは退屈な絵だなー・・・と思ってみていたのですが、後半、ソファーに座ってキャベツ畑の絵をぼーっと眺めていたら、ある瞬間から、キャベツの塊ひとつひとつが光輝いて見えてきた。いやほんと。展示ルートを戻って改めて作品を見直してみたのですが、すみません、やはり帝室技芸員は伊達じゃないと思いました。
あまり上手くは言えないのですが・・・。円熟期の作品は、一見とても乱雑に筆を巡らせているように見えるのですが、立体と奥行きの表現力が高いため、モノがグズグズと崩れてしまうことがないのです。ルノワールやセザンヌなどは、印象派の切り開いた光の表現が、代償として「モノのカタチやボリューム感」を損なってしまったことに悩んでいました。南薫造はそれをこともなげに解決してしまっている。「まばゆい光」と「モノの確からしさ」の両立。
それはただ単に遠近法や立体のデッサンがうまいというだけではなく、色による奥行き表現(色価、バルール)のセンスが卓越しているのです。西洋近代でも、こんなにバルールで空間を巧みに構成できたのは、コローとピサロ、マルケくらいではなかろうか。少なくとも日本の近代洋画家で彼に及ぶ者は一人もいないと思う。
キャベツの塊ひとたまひとたまが輝いて見えたのは、そういうわけだと気づいたのでした。
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