特別展 生誕151年からの鹿子木孟郞 ―不倒の油画道―
泉屋博古館東京|東京都
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リアリズムを根幹を突き詰めた画家の全画業を
明治の洋画家として広く知られるのは、黒田清輝・浅井忠・岡田三郎助・藤島武二らでしょうか。一方、印象派以前の古典的な西洋絵画表現に学んだ、重厚で堅牢な表現を追求する画家としては、高橋由一・中村不折・五姓田義松らはよく知られていますね。「鹿子木孟郎」は、私は申し訳ないことに全く存じ上げない画家さんでした。「写実」ということで、知らない画家さんでもそれなりに楽しめるだろうと、行って来ました。今展は、四半世紀ぶりの大規模展ということで、私と同じく知らなかったという人も多かったのではないでしょうか。京都からの巡回展で、前後期でかなりの入れ替えもあるようです。鹿子木孟郎氏の初期から渡欧期、そして帰国後の作品まで、約130点が、時系列で展示され、画業の足跡と写実表現の展開を検証する展覧会になっているのだそうです。住友の援助で3回の渡欧、と聞けば、作品を持っているのは泉屋さんがほとんどなのではと思いきや、展示作品のほとんどが個人蔵で、美術館としては府中市美術館さん所蔵が結構多かったですね。
冒頭の油絵以外の展示が、とにかく凄かったです。木炭画、特に《横向きの男》は、これ木炭???って感じです。皺や毛の1本1本まで、毛穴の凹凸までをも再現した、写真以上の写実性に、完全に驚かされ心を掴まれました。長い時間をかけ対象と徹底的に向き合って正確に写し取る。凄いです。更に単に物のかたちを正確に捉えるだけではない、対象の本質に迫る「写実」のあり方を示しています。チラシポスターになっていた、メインビジュアルの《婦人像》は、上半身のみの肖像ではありませんでした。後ろに窓のある洋間のソファーの端に座る着物姿の女性のほぼ全身に近い姿と、その洋間の少し乱れた諸々。女性は手に革?表紙の小さな本、聖書でしょうか、を開きかけの状態で持っていて、身なりは整っているものの、目線はここではない場所を見ていて、少し放心したような心ここにあらずの表情をしている‥。じっと見ているとちょっと息苦しくなる感じです。とるものも手に付かずの女性の不安感のようなものが、どっと押し寄せてきた感じです。これが鹿子木孟郎のリアリズムなのでしょうか。
一方とても明るくきれいな作品も幾つもありました。特に《加茂の競馬》は強い光の中神事に向かおうとする、やや緊張気味の人と馬の美しくリアルな描写は、とても印象的でした。《樹の幹》も好きです。ちょっと圧倒されて疲れるほどに、とても濃い内容でした。
時代の支援も、しっかりしたパトロンがありながら、これほどの画家さんが何故埋もれてしまったのか、も知りたいところでした。エピソードによれば、結構強気と言うか、なかなかの自信家の様でした。もう少しこの画家のことをいろいろ知りたいです。後期も来たいと思いました。
会場はとても空いていました。常時流されているVTR室には誰もいませんでした。撮影は《ノルマンディーの浜》一枚以外禁でした。
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