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第77回 正倉院展

第77回 正倉院展

奈良国立博物館|奈良県

開催期間:

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あおによし【正倉院展】

今年もやってまいりました『あおによし』奈良の正倉院展。
…なんでしょうね、鹿がのんびり闊歩する奈良公園界隈に来ると、妙に毎回ホッとしてます。
翌日に日曜美術館の「正倉院展」特集が控えた1日に訪問。
日美では予習できませんでしたが、1ヵ月前に読売新聞本社ホールで開催された<正倉院展講座>で予習済なので、やや気持ちに余裕を持ちつつ、お財布に優しいレイト割の17時入場。

あくまで私の印象ですが、今回の正倉院展は【科学】【遊戯】【グローバル】という3つの分野での面白さがありました。

【科学】:宮内庁正倉院事務所から毎年報告される『正倉院紀要』によると、改めての調査で笏(高位男性が手に持ってる板。式典のカンペにも使われた)や双六のサイコロ、櫛、刀子(文官の文房具の小さい飾りナイフ)等の素材鑑定で、象牙と思っていたら大型クジラの肋骨や水牛のツノだった、あるいは漢方の素材である【鹿のツノ】が、シカ近縁種で現在は絶滅レッドリストのシフゾウ(象じゃない)だったという新発見が紹介されていて、改めてのっぺりした笏をガン見してしまいました。
内陸の奈良(平城京)にあって、カンペ使いも可能な仕事用具がマッコウやナガスクジラの肋骨って凄い!
既に訪問された何名様かがご紹介されていた【黄熟香(蘭奢待)】も樹種や香木化した時期が判明し、香りの成分分析と再現が実現して現在上野の森美術館『正倉院 THE SHOW』で展示されています。
あいにく訪問できず、グッズ販売で入手した同僚に持参してもらった再現の香りを嗅がさせてもらいました。
・・・・・なんというか、八つ橋のニッキ?シナモン?風味の甘くてややスパイスを感じさせる柔らかな香り。
もうちょっとバリやタイの東南アジア雑貨店で香るような強さというか、重たい感じかとも思っていましたが、想像より控えめで落ち着いた香りでした。
奈良の会場では密封のガラス張りに設置されて【黄熟香(蘭奢待)】再現の香りはありませんので、傍目には古い流木の佇まいですが。
所々に数センチの切り込みと切り取った人の付箋があって、歴史上の偉人達もあの香りを嗅いだのか、と妄想が膨らみます。

【遊戯】:会場入って最初の展示品【木画紫檀双六局もくがしたんのすごろくきょく】という寄木細工の双六盤と、鑑定した象牙製のサイコロ、透明な碧や黄緑、琥珀色のおはじきのような駒といった双六道具一式が素晴しいファーストインプレッションでした。
特に台座横の寄木細工は葉っぱの緑色以外は着色無しの木材の色だけを使い、優美な曲線を描く草花や羽根を広げた線対称の小鳥が繊細で可愛いくて完全に足が止まってしまいましたw。

これは2人で自分の持ち駒を早くゴールさせることを競う、バックギャモンと呼ばれる双六の一種と考えられています。
発祥は古代ローマやブリタニアと曖昧ですが、中世のヨーロッパで隆興し、日本には飛鳥時代に持ち込まれたそうです。
聖武天皇もご夫婦でこの美しい盤上遊戯を愉しんだのではないかな~と優雅な絵面をまたもや夢想。
ちなみにバックギャモン自体は、その後日本でも伝え続いていたようなのですが、時の政権に賭博性を危険視されて禁止されたので今ではマイナー遊戯となり、あまりお目に掛からないのが残念です。
もう1つは【投壺とうこ】。高さ40cmくらいの金属製の壺に、羽子板の羽根のように下部分に鉛やそれに類する重りを付けた長い羽根を、離れた壺の中へ投げ入れていく遊びだそうです。今でも中国では余興として遊ぶことが伝えられているようですが、日本ではあまり流行らなかった模様。
展示は壺も羽根もあり、特に羽根は木製で大体長さが6~70cmくらいはあり、けっこう長い。
重りを付けた先端とは逆側がやや広めに削られていて、矢羽根のように羽根模様が描かれています。

グローバル:最後のグローバルは、正倉院の特徴を最も表してる魅力。
フェルトの敷物【花氈かせん】や、ポスターにも掲載された青く美しいガラスの杯【瑠璃坏るりのつき】等が秀逸でした。
【花氈かせん】は縦272cm・横139cmと、2メートル越えのかなりの大きさで、フェルトも厚みのありそうなふっくらした敷物。
端の部分は一部欠損や失われていますが、いくつもの花模様がくっついた大きな2つの花の塊り=団花文と呼ばれる花模様は、盛唐期の特徴が強いもの。
浅葱色の地にピンクや薄い黄色、緑、赤の鮮やかな花模様は1000年の時間経過が信じられない華やかさです。
しかもフェルト=羊毛なので、当然中央アジアや中国内陸部からの輸入品になります。
最後の室に単独展示された【瑠璃坏るりのつき】も同様で、均等に小さな輪っかの模様を付け、青く輝くガラス部分の加工は現在のトルコ・イラン・アフガニスタン・トルクメニスタンといった中央~西アジアで。
そしてガラスを支える銀の台座には龍の紋が刻まれていて、こちらは中国・韓国の東アジア謹製と見られています。
羊毛やガラスが何千キロも先にある、海を越えた東の島国までどれほどの時間をかけて伝えられたのかと考えると、その長大な時間と、1000年以上前から国を跨いで何かを伝える事ができていた文化のリレーに改めて感動です。
そして他の鑑賞者の皆様もコメントされてますが【瑠璃坏】、照明のやり方、ライティングが本当に素晴らしかったです!
ガラス杯のコバルトブルーが真上からの照明の光を映し、白い台座に万華鏡のような幾何学の色模様を描いていてカップも銀の台座も煌めいています。
ティファニーかバカラのティアラかと見まごう輝かしさ。見る人全員(特に女性)の眼もキラキラしていました。

毎年お約束な古文書は、住民の家族構成を把握する今の国勢調査(?)や地方の財政報告など、時代を超えて共感する楽しい内容。
どうみても中央アジアなお顔の伎楽面や、東大寺開眼会で使用した(大仏様と繋いだ)筆の藍染紐など、眼福な展示に今年も大満足な正倉院展でした。
ただ、グッズについてはお目当てのマルチクロスが早々に売り切れていたのと、靴下の柄に君主の格言を記した《鳥毛篆書屏風とりげてんしょのびょうぶ》文言はちょっと違うんじゃないかと、画竜点睛を欠いた感なのがやや残念・・・
とはいえ、20時過ぎても近鉄奈良駅周辺の飲食店があちこち開いてる旅人に嬉しい変化(●年前は夜の奈良駅周辺、閉店後のシャッターしかなかった)もあり、年々旅人に嬉しくなる古都奈良。
鹿が寄り添い、ブロッコリーみたいな古墳が点在したのんびりした空気感なのに、常に先端技術でアップデートする底なし魅力だからこそ、また正倉院に行かずにはいられないんだよねぇ・・・と感慨にふけりつつ、真っ暗闇の公園をシカフン避けで爪先立ちしながら帰途につきました。

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エイミーさん、karachanさん、morinousagisanさん、ぷーながさん

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