諏訪敦|きみはうつくしい
WHAT MUSEUM|東京都
開催期間: ~
- VIEW47
- THANKS1
これぞリアリズム。表現の技法も、対象も。
超写実主義の絵画にとって、主題の王道は「美」、うつくしいことだと思う。風景画なら自然の美、人物画であれば生命の美、静物画であれば造形の美。
本展の諏訪敦氏の主題は、死。そこに「きみはうつくしい」とのタイトルを付してくる。死者の美であり、生と同居・内在する死の美であり。
この「うつくしい」へのアプローチは、観者の私に対して、自ずと真剣さと覚悟を要求してきました。
第1章では、若い女性のほとばしる生に同居する死のイメージ。
骸骨とともに描かれる若い女性は、古典的なヴァニタスの西洋絵画よりも、いま、ここにある生死を意識させられる。怖い。コロナ禍で散々思い知らされた、あの感覚がよみがえる。
豆腐と脊椎人骨を描く静物画では、本物の豆腐というより高橋由一の豆腐をリアルに描き、そこから、洋の東西をまたぐ死生観との読み解きを導いている。おもしろい。
進んで、第2章では実際に亡くなった人と今との時空のつながり。
更に第3章では、諏訪氏自身の父・母・祖母の死に対峙し、デスマスク等のリアリズムが展開される。
諏訪氏は母親の死に際して「ちゃんと悲しむことができない」と記しており、この心境もリアリティのひとつだと思う。諏訪氏のリアリズムは、表現の「技法」にとどまらず、表現の「対象」にも及ぶ。
2階ホールには、本展のメイン作品≪汀にて≫。
天井から釣り降ろされた大画面の絵画、モチーフの人体造形、そして造形物を囲む複数の下絵のようなドローイングから構成される、連作である。会場に流される作成時映像では、骨格標本に諏訪が自ら石膏と建築用発泡ウレタン材で肉付けして、等身大の人型を作る様子が映される。
死体が朽ちゆく変化を描くのが仏教絵画の「九相図」であるのなら、諏訪氏はここで、ひとつの大きな絵画を仕上げるのに、死から生へと向かう逆向き九相図の手順を辿り、その過程を作品に残す徹底ぶりである。どうせやるなら、生きとし生ける姿まで逆戻ししてくれると、観者の私も活力を得られるのだが、諏訪氏の制作は、半戻しで止め。即ち、生と死の接する「汀(みぎわ)」になっている。
ここに至ると、「技法」のリアリズムはどうでもよく、「対象」のリアリズムが表現の中核をなしている。
本展を通じて、現在の超写実主義の代表作家のひとりによって、リアリズム追求の進化のかたちが示されたように感じた。重い問いかけである。
来場者多数、殆どが若者。
(補記)
隣接する寺田倉庫G1ビル会場では、「NAKED meets ガウディ展」が長蛇の列。諏訪敦展のあと、週末日19時の最終入場に2900円払って鑑賞。
これ、体験型、没入型の今どきアートイベント、パビリオンでした。サグラダファミリアの「模型」展示の前に長蛇の列で通行止め、など、なかなかの状況にて、約20分で退出。
- THANKS!をクリックしたユーザー
- morinousagisanさん