具体美術協会と芦屋、その後
芦屋市立美術博物館|兵庫県
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記憶にも記録にも残る一発芸集団
具体美術協会という前衛アート集団の評価は低すぎないか?
今はもう存在しないグループとその作品を私が知ったのはほんの数年前で、それから現在に至るまで、他の所謂「現代アート」と呼ばれる作品を見、比較してみて思う感想がそれだ。
具体美術協会の沿革や業績については、検索すれば山ほど出てくるのでここでは書かないが、今から60年ぐらい前に旺盛な活動をしており、その期間はわずか18年間であった。しかし彼らが残した作品群は、今を盛りと活躍する最先端の前衛芸術家たちのルーツとも呼べるものだ。
早い話が、具体の二番煎じ、三番煎じが21世紀の今もなお大手を振ってまかり通っているということ。
彼らの作品見てると、「それって具体が60年前にやってるよ」なんてのが腐るほどある。もちろん、まんまパクリってわけじゃないけど、「人のやらないことをやれ」のスローガンのもと、具体がやってやってやりまくった結果は、どこかで今の現代アート作品にダブるものは多い。
具体美術協会は兵庫県芦屋市で誕生した。芦屋だから金持ちの道楽だったんじゃない? という指摘は当たってると思う。
協会の発起人であり、リーダーの吉原治良は、BIGな製油会社の社長さんだったから。かつて「ゴールデンサラダ油」って食用油があり、そのメーカーである。今は経営統合でJ-オイルミルズに。
ただ、道楽とはいえ吉原社長は企業経営を疎かにしたわけではない。そこが、同じく経営者でありながら、東洋陶磁器収集に走って自らの会社を破綻に追いやった安宅某とは違う点だ。
具体の聖地芦屋の市立美術博物館で具体展が開催中だ。7月に関西遠征した際、時間があったので行ってみた。
兵庫県美、小磯記念美と回って、次に芦屋へ。阪神芦屋駅で電車を降りてバスで美術館へと向かう。バスのルートが少し変更されてて、やや遠回りした後、緑町バス停で降車。
道路から階段降りて美術館に到着すると、庭の松の木に何やらビニール袋に赤い液体が入った氷嚢のようなものがぶら下がってる。新種の防虫剤かと思ったら、あとでそれは元永定正の作品だと知ることになる。
館内はいつものように空いている。展覧会にもよるんだろうけど、空いてることはいいことだ(笑)
1階フロアにはさっき見た色水入りのビニールが今度は水平状態で頭上にかけ渡してある。あ、こりゃ作品なんだとキャプション探せばありました。
元永さんかあ。抽象画ばかりのイメージだったがこういうのもあったのか。
ただし、作品名はない。これも具体の特徴の一つだ。そして作品名がないというスタイルも現代アーティストがよくやってる手だ。
当展で最も古い作品は1955年。今じゃ珍しくないこの名無しスタイルも具体が70年前に発明したものだ。
1階から2階へ上がる階段の下にボタンがあった。これはアレだ! 2022年の秋に行った中之島美での具体展でも押したあのボタンだ。
あの時は会場スタッフさんに押していいかと一応聞いてから押したが、今回は問答無用で押した。
館内に大音響で鳴り渡るベル。知らない客は、火災だと思って逃げだすはずだ。
ボタンから指を離すと音は止む。続いて二度目のPUSH。今度は指を離さずに長めに押し続ける。すると、ベルが時間差攻撃で、遠くへ遠くへと連続的につながって鳴る。
これこそ田中敦子の《作品》だ。
2階へ上がれば、他の具体作家たちの《作品》の波状攻撃に曝される。そのどれもが1950~60年代のもの。これらすべて、当時の具体会員作家が世に初めて問うた「一発芸」だ。
とにかくそれまで誰もやったことのない制作法を重視した吉原が手塩にかけて育成したチルドレンたちの青春がここにある。
私が覚えた具体作家たちはみんないる。吉原も白髪も嶋本も村上も元永も田中も。
彼らは鬼籍に入ってしまったが、その作品は古典となって21世紀に生き続けている。
芦屋市美術博物館での具体展はすべて同館所蔵作品で構成されているという点で素晴らしい。
そして、かつて芦屋市内の各所で開催された具体の野外展示とその記録についても当展で詳しく紹介されている。
これまで私は現代アートに揶揄を込めて「一発芸」としてきたが、具体に関しては見方を変えることにした。
アイデア勝負の一発芸が、ここまで詳細に記録に残り、そして見た者の記憶に残るなんてことは、アート界において稀有だと。
1階の別室で流されていた、元永の「カーペインティング」映像を見ながらそう思った。