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Sereneの写実 森本草介・島村信之2人展

Sereneの写実 森本草介・島村信之2人展

ホキ美術館|千葉県

開催期間:

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時空間体験

写実絵画を専門とし、2010年に開館したホキ美術館。
地面からニョキっと突き出る、塊(マッス)のキャンチレバー構造が特徴の建築が気になっていて、行きたいと長らく思っていたところ。
開館と同じ年に生まれ、すでに訪問経験のある息子は「あぁ、あの階段のところね」ドヤ顔。
行ったことのある人しかわからないエレメント。
階段と言われてもわからないわよ、存分に空間体験してくるわ!
地上1階、地下2階のこの建築、敷地の地名はあすみが丘だけど、崖の上にある建物ではないから、
意図的に地下空間を造ったとなると、作品を鑑賞する空間にこだわりがあってのことだろう。
この地下展示室は、2019年の豪雨で被害を受け、改修のため長期休館したことも話題になっていた。

建築も注目ポイントだが、写実絵画を専門とした美術館でも有名。
日本で初めて、世界でも初めて(?)の珍しい施設。
“写実絵画” とは、写真のように忠実に描く手法。
写真ではないとは言われても、ポスターやwebでは写真にしか見えない。これはやはり実際にみてみたい。

東京駅から電車で約1時間、千葉の土気駅(とけ)から、タイミングよくローカルバスに乗って到着。
  このバスに乗れないと、約20分歩くことになる。炎天下の中はキツい。
  そして帰りは見事に歩くことになる...
エントランスは特徴的なニョキっとマッスとは反対側。
左手に白樺の木のような鉄の棒をみながら、ゆるりとスロープを昇って館内に入る。
ショップを通過して展示会場へ。会場内は撮影禁止。ゆっくり落ち着いて作品を鑑賞することができる。

開催中の企画展は「Sereneの写実 森本草介・島村信之2人展」
1作品目を前にして、本当に絵なの?から始まり、3作品目くらいになって、あぁ絵だとわかり始めてくる。
目が慣れてくるのか、細部から筆使いがみえてきた気がする。
“写実絵画”
19世紀中盤からの写実主義の西洋絵画とも、20世紀中盤からのアメリカのスーパーリアリズムも違う。
何が違うのだろうか、モチーフ? 
作家もモデルも日本人だから、身近に感じるのだろうかと思いながら進んでいくと、
だんだんと「静か」という言葉が湧き上がってくる。
企画展の展示タイトルは「Sereneの写実」
Serene=穏やかな、あぁ、落ち着いた”静か”な絵か。

美術鑑賞といえば、ゴッホのような激しい筆捌きから感じる情熱、モネの風景画から感じる美しさなど、
大きく感情が動くものをイメージしがちだけれども、
感情が動くのはそのようなものだけではなく、ここでみるように、穏やかさもある。

時が止まったような静かさ。
そう思って見るようになったら、いつもの絵画鑑賞にはない違和感というか、不思議な感覚になってきた。
1枚を仕上げるのに歳月を要する写実絵画、作家はずっと同じ感情を向けていられるのだろうか。
もしかしたら、顔を描いている時と手を描いている時では四季が違っていて、気温などの外的な影響を受けて気持ちが異なり、それが絵に反映されているかもしれない。
いや、そんなことが気にならないくらいの集中力が必要な緻密な作業だろう。
ひとつひとつに焦点をあてて集中する。
そう思うと、写実絵画はキュビズムのように、ひとつの絵の中に複数の視点がある気がしてくる。
普段人間は何かを見る時、意識的にも無意識的にも、みる・みないを使い分けている。
目には遠近法が備わっているから、写実絵画のように全てに作家の焦点が向いた作品は、時の流れが止まったように感じて、今まで味わったことのない感情になるのかもしれない。

受験のため絵を描いていた際、建築科の受験だったこともあり、空間把握能力を問われるため、遠景中景近景の描きわけを意識するように言われてきた。パースや光の角度などを正確にすること、その上で見せ場をつくって表現すること。
それが整っていないと、何が表現したいのかわからない(合格しない)絵になる。
今でも絵をみる際はこの感覚が残っているから、写実絵画には畏怖の念を感じるのかもしれない。

建物の空間構成も面白い。
左右に絵がかけられた(絵しかかけられていない)長いトンネルの中をゆっくり進んでいく。
トンネルの中にいるようなのに、足音はせず、天井には夜空のような不規則な配列の照明が埋め込まれている。
絵だけに集中できるような構成を意識したことが伝わってくる。
息子が言っていた「階段」は、ストリップ構造で、手すりもなだらかに壁と一体化していて、室内が彫刻のように感じられる。
写実絵画から感じる時間の流れと相まって、SF映画の中に落ちてしまったような、時空間体験だった。

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