小出楢重 新しき油絵
府中市美術館|東京都
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小出楢重を知るには良い展覧会
2月7日土曜日、雪交じりの天候の中、午前中に本展を鑑賞した。来場者は比較的少なく、各作品を落ち着いて鑑賞できる環境であった。
小出楢重については、アーティゾン美術館の《帽子をかぶった自画像》、東京国立近代美術館の《ラッパを持てる少年》、大原美術館の《Nの家族》など、これまで各美術館で断片的に作品を鑑賞する機会があり、いずれも印象に残る作品であった。本展ではそれらの代表作を含め、画業の全体像を通史的に紹介しており、作家理解を深める構成となっている点に大きな意義を感じた。大阪開催のみであった本展が東京へ巡回したことも、多くの鑑賞者にとって貴重な機会である。
展示は4章構成で、第1章では日本画から出発し、油彩画へと転向していく初期の制作過程が紹介されている。日本画的な要素を内包しつつ油彩表現を模索する姿がうかがえ、後の作風を理解する上で重要な導入部となっている。
第2章では、小出楢重の代表作が集中的に展示されている。《Nの家族》の前段階として、《芸術家の家族》がほぼ同構図で制作されていることを、本展で初めて知った。両作品が並置されていることで、画面構成や人物表現、画面サイズの違いを比較しながら鑑賞することができ、作家の表現の深化を具体的に感じ取ることができた。また、本章では風景画、静物画、人物画も併せて展示され、小出の幅広い表現領域が示されている。
第3章では、ガラス絵、書籍装幀、軸装作品など、絵画以外の仕事が紹介されている。谷崎潤一郎『蓼喰う蟲』の装幀および挿絵は、当時の文学と美術の関係を知る上でも興味深い内容であった。さらに、信濃橋洋画研究所に関する展示を通して、関西洋画壇における小出楢重の位置づけが示されており、周辺作家との比較の中でその独自性を理解することができた。特に《街景》は、構成の明快さと画面の完成度において印象に残る作品である。
第4章は晩年の作品を中心とし、静物画、風景画、人物画が展示され、裸婦作品が主題的に取り上げられている。「裸婦の楢重」と称され、マティスの影響が指摘されることが多いが、本展を通して鑑賞すると、その影響は表層的というよりも、独自の造形感覚の中に消化されているように感じられた。一方で、京都国立近代美術館所蔵の《卓上静物》に見られる静物画の造形的な強さは、小出楢重の魅力を端的に示す作品であると改めて認識した。
本展は、代表作の提示にとどまらず、関連作品や資料を通して小出楢重の画業を多面的に紹介する内容となっており、初学者から関心の高い鑑賞者まで幅広く有意義な展覧会であると感じた。なお、ミュージアムショップにおける関連資料やポストカードの点数が限られていた点については、今後さらに充実することを期待したい。
また、常設展において長谷川利行、松本俊介、古賀春江の作品を併せて鑑賞できたことは、日本近代洋画の流れを理解する上でも有意義であった。
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- BY fab4takahiro