池田蕉園と輝方 ─夢見る美人画
山口県立萩美術館・浦上記念館|山口県
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仲よき事は美しき哉
萩は今が1年でいちばんいい季節です。と、個人的に思う理由は夏みかんの収穫時期だから(笑)
GWを挟んだ1か月間ぐらいの間は取れたての甘夏が市中に出回り、萩を訪れればいろんなとこで格安で買えます。
5月中旬には夏みかんまつりも開催され、萩焼フェアなんかとも合わせて賑わうので行くなら今がおすすめ。
夏みかんの木は市内いたるところにあり開花も今が盛り。バニラ香をわずかに含む甘い香りはこの時期の萩の風物詩です。
ちなみに何で開花と摘果の時期が一緒かというと、夏みかんは酸っぱいので秋に実がなってもそのまま摘まずに年越しさせて酸味を抜くからです。
アートファンの方々には、もちろん萩美での企画展も必ずやってますからご安心を。今年は「池田焦園と輝方」展です。
恥ずかしながら私はそのお二人を知らず、展覧会場で初めてご夫婦だったことを知った次第です(汗)
晴れて一緒になるまでの経緯には山谷あったみたいで、そのへんはHPなんかで読んでください。
書き遅れましたが、焦園さんが女性、輝方さんが男性で、ご両人とも水野年方門下の日本画家です。
焦園というと、今大阪で上村松園展やってますが、こちらは池田焦園。焦園の現役時代は、西の松園、東の焦園と言われたんだそうです。
十代後半から画壇に登場し、二十代には文展の常連となるほどの早熟女流画家だけあって、明治~大正期の日本画美人のマイスターであることは作品を見れば十分に頷けます。
当展では肉筆画と多色刷り木版画の優品の数々が来ており、特に肉筆画において焦園の個性が存分に発揮されていると思います。
それは描かれた女性の表情に残る幼さや可愛さといったもので、同時代に双璧を成した上村松園とはいくぶんか趣を異にするものです。
私個人的には、松園は他者の追随を許さない日本の美人画史上最高の画家だと思ってるので比較は酷かもしれません。
でも焦園美人には松園美人にない親しみやすさというか、庶民性みたいなものを感じます。江戸浮世絵美人に近い雰囲気があるとでも申しましょうか。
焦園は小説や少女雑誌の口絵、挿絵も多数描いており、そんなとこからも庶民受けが良かったのだと思えます。
当展目玉はメインビジュアルでもある《かえり路》。東近から来た4曲1隻の屏風絵ですが、解説ではもう2曲あったのが行方不明なんだそう。見たかったぁ。
見たかったのはもう1作。東博所蔵の《髪》は5月13日からの展示だそうです(泣)
夫の池田輝方は年齢にして焦園の三つ上。同じ師である水野年方の媒酌で一度は焦園と婚約したものの、すぐに別の女性と駆け落ちし7年間行方をくらましますが、戻って来て結婚します。
以後は真面目(?)に画業に専念し、焦園ともども文展入選を果たしたりします。
画風は焦園と大きな差異はなく一流の腕前、やはり同門で夫婦とあらば納得です。展覧会には二人の共作掛け軸も福富太郎コレクションから来ており、夫唱婦随ぶりがうかがえます。
当展での輝方作品の白眉は、何といっても多色刷り木版画の連作《江戸の錦》です。四季折々の江戸情緒に美人を配しての16枚から成る版画で、とにかくその色が素晴らしく美しい。
先般、静嘉堂@丸の内で見た豊原国周の錦絵みたいに保存状態が奇跡的に良いもので日本の色刷木版画の最高峰の一つでしょう。
仲睦まじい夫婦の日本画家を紹介する「池田焦園と輝方展」。夏みかんの花の香のような甘く爽やかな好企画展です。
同時開催の工芸、陶芸、浮世絵のコレクション企画展もお見逃しなく。
特に、昨年亡くなった人間国宝山本晃さんの彫金作品は必見。この展示は8月31日までのロングランでやってます。