表装 ―肉筆浮世絵を彩る
太田記念美術館|東京都
開催期間: ~
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日本画や書の軸物の名脇役にスポット
「表装―肉筆浮世絵を彩る」展へ行って来ました。太田記念美術館さんの600点を超える肉筆浮世絵コレクションから、優れた表装をともなう約40点が選ばれ、表装文化の研究者である濱村繭衣子氏の監修のもとで紹介されています。肉筆浮世絵そのものの美しさを、表装というもうひとつの視点から深く味わわせてくれる展覧会です。いつもは脇役の「表装」にスポットを当てた、すばらしい企画です!! 布モノ好き、工芸好きの私は、料紙と表装はいつも割合しっかり見て楽しんでいました。豪奢なモノや素朴なモノ、遊び心のあるモノ、美しい刺繍などのモノ、作品と絡めた柄模様のモノ、流行を掴んだモノ‥。本紙絵を見ることが、そのまま布を見る楽しみにもつながっていました。加えて今展は表装された「肉筆浮世絵」の展示ともなるため、なかなか肉筆の作品は少ない有名浮世絵師たちの名品ズラリ! で、勝川春章「桜下詠歌の図」・喜多川歌麿「美人読玉章図」・葛飾北斎「源氏物語図」などにも出会える、という貴重な機会と、とてもとても楽しみにしていました。
絵は本紙絵だけで完結しているのではなく、どの裂地が選ばれどんな色や模様で包まれたかによって、見え方も雰囲気も驚くほど変わることがよくあるのです。色味の近い裂地が添えられることで画面に統一感が生まれ、逆に意外性のある取り合わせによって本紙の華やかさが際立つこともあります。「表装」は単なる作品保護のための外枠ではなく、画中の主題や空気感を受け止め、鑑賞者の視線の流れや気持ちや鑑賞の余韻を、静かに絵の外へと広げ導く役割も担っているそうなのです。一点一点の作品に合わせた生地の色や素材など組み合わせて、そのコーディネートパターンは本当に無限にある、と言っても過言ではない訳です。これは洋画の「額装」とはずいぶん違うモノだと思うのです。作品に合わせてどんな表装をするのかは、作品を手がげた作家自身、若しくは.その作品のオーナーが、表装してくれる職人(表具師)としっかり相談しながら決めていきます。つまり作品のテーマや背景をよく知った上で、そこに絡めた素材を使ったり、作品に使われている色を、または作品に登場している花や生き物を、どこかに取り入れたり、あるいは作品の裏ストーリーをのぞかせたものを取り入れたり、といったことが多く行われます。また作品をより”粋”に見せたり”大胆”に見せたり、”素朴”に見せたり、可愛いらしく見せたり‥、などの手助けもします。お金をかけてて豪華に仕上げたから良いというものでは決してないのです。肉筆浮世絵の魅力を損なうことなく、むしろいっそう引き立てる、そのバランスのよさも大事なポイントなのです。それはあくまでも「脇役」、名脇役な訳です。時にオーナーさんの思い入れが強すぎて、作品の印象が変えられてしまうことも、あるかも知れないのですが‥。そんな風にオーナーの作品への理解や知識、思い入れや、そして美意識、好みも見せてしまう「表装」は、面白くもちょっぴり怖~い一面? かも知れません。
喜多川歌麿「美人読玉章図」の可憐な更紗、勝川春章「桜下詠歌の図」に用いられた美麗な能装束、宮川一笑「吉原正月の景」を彩る刺繍や染模様の鮮やかなきもの地。市川団十郎に三升、沢村源之助に観世水と、役者にちなむ意匠を配した表装。とにかく凄いです。
会場の最後には、浮世絵版画の「掛物絵」も展示され、更に印刷された掛物絵にさえ表装柄の紙が用いられたということからも、表装がどれほど魅力的な要素として受けとめられていたかが想像できます。表装された作品への憧れ?の様なものがあったことにも触れられていました。
個人的に「表装」‥は昔、学生時代、博物館学芸員資格取得のための講義の中で、レプリカづくりと表装の実習がめちゃめちゃ楽しくて、自身で道具も買ったりして授業外でも色々トライした、古い思い出が‥。なんてつい余計なことでした。
平日昼時、混雑はありませんでしたが、そこそこに観覧者さんはいらしていました。タイトルのせいでしょうか、何時も結構多く見かける海外からの方は少なめでした。きものや染織、意匠に関心のある人には、また日本画好きな人には、是非是非!! おすすめの展覧会です。これまであまり意識されていなかった方には特にです。掛軸なとの作品を見る楽しさがより広がります。3月29日までです。会期が短いのでお見逃しなきように。なんて、行って来てから一週間以上過ぎての感想で、ホント申し訳ありません。