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黒の奇跡・曜変天目の秘密

黒の奇跡・曜変天目の秘密

静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)|東京都

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神秘の光彩の謎解明はまだまだ遠いです

『黒の奇跡・曜変天目の秘密』展、行って来ました。休日午後で、《曜変天目》を前面に押し出した今展だけに、割合混雑していました。初めての方も多くいらしていたようで、観覧の導線支持がはっきりしていないと、まごつかれた方もいらしたようでした(アーティゾンさんほどではないですが)。ホワイエから右手に入る第一展示室から順に第二第三第四へ左回りするだけなのですが、ほとんどの美術館はそうだと思うのですが、静嘉堂さんはこぢんまりした美術館ですし、順は気にせず空いている場所・観たい場所から観ればいいと思うのです。今展、既に皆様感想を寄せられていて、特に改めて書くほどの感想は、私にはありません。なので、かなりの脱線で申し訳ないのですが、曜変天目についてちょっとつぶやきます。
静嘉堂さんが世田谷だった頃、国宝《曜変天目》は丸の内で程ではないですが、年に一・二度くらいの頻度では展示されていたかと思います。その展示は、一応独立型展示ケースで四方から観ることが出来るようにされてはいたものの、特別なスポットライトを当てたりもなく、今展の様に高台と裏までしっかり見える様クリアボードに載せ下に鏡を配するような工夫は見たことがありませんでした。それに、時には展示室の方ではなく展望の良いホワイエ?あまり広くない入り口直結のロビーのようなスペースで展示されていたこともありました。国宝も無造作に、窓から見る富士山と並べて展示している雰囲気の三菱さんの「太っ腹ぶり」、などとよく言っていました。見に行くこちらも、美術館に行くというより、二子玉から歩き、国分寺崖線南端の地形と自然を楽しみ、旧小坂家と静嘉堂のお庭も散策する、ウオーキング気分で行くこともしばしばだったのですが‥。
もう随分と20年以上前だったと思うのですが、NHKBSのドキュメンタリー番組「幻の名碗 曜変天目に挑む」を見ました。世界にたった3点しかなく(東京静嘉堂文庫美術館・大阪藤田美術館・京都大徳寺龍光院に収蔵される3点は国宝。4点目の曜変天目とも言われるものがあります。旧前田家蔵から故大仏次郎所蔵となり現在はMIHO MUSEUM蔵のもので、国宝ではなく重文で、他の3点とはかなり異った表情で、曜変天目とも油滴天目ともいわれているそうです。あと現存しませんが、本能寺で所有者織田信長と共に焼失した幻の天目も、日本に伝わった曜変天目の中では最上といわれていたそうで、観たかったです)、それも完形のものは日本にしかないという曜変天目。かの放映当時、既に私は国宝3点全て直接見ており、特に個人的には一番素敵だと思う静嘉堂さんのものは、アクセスと入館料の関係で、度々見る機会があり、この曜変天目の魅力は十分感じていて、稀有な美に魅せられた何人もの陶芸家たちが曜変天目を現代に蘇らせようと悪戦苦闘する、この番組が、とても印象に残りました。三人のチャレンジャーの中の一人、美濃焼の林恭助氏は、一旦漆黒の天目茶碗を焼いてから曜変模様を付けるためにもう一度焼くというアプローチでしたが、この方法で林氏は、結果的になんとか、曜変天目の特徴である光彩を再現することが出来、曜変天目の特徴を持った茶碗を作り上げ、その作品を発表するに至ったということでした。果たして、その方法が正しい曜変天目の製法、とは結論されませんでしたが。放送後、私自身それまで以上に曜変天目が気になり、曜変天目についての書籍など図書館で色々読んだりもしてしまった訳です。
変わって、何故曜変天目は日本にしかないのか(産地である中国を含め世界中どこにも)。産地中国では曜変天目はさほど好まれ珍重されることはなかったのでは。などと言われていましたが、2009年、かつての南宋の首都である臨安(現在の浙江省杭州市)皇城の北門近く(旧迎賓館跡あたり)で、一碗の曜変天目茶碗の残器が出土したことが伝わりました。しかも日本に伝世する曜変天目と比較して、斑点周辺の暈彩部分の面積が広く、残器碗は見込みの六割以上を占めているとのことです。つまりは、中国に於いても、曜変天目は、国の重要な場面で使用される器であっただろうことが推察されます。それから、もう10年ほど前のこと、テレビの鑑定番組で「番組始まって以来、最大の発見!」と銘打ったリリースとともに《曜変天目》が出品されると話題になったことがありました。鑑定家中島誠之助氏が「間違いない本物、歴史的な発見!」として2500万円の値(ちょっと中途半端ですが)がつけられました。ところがそれに、長年にわたって曜変天目を研究してきた陶芸家や大学教授、研究者らから鑑定結果に疑義の声が上がりました。そこで、所有者はある大学に科学的分析を依頼しましたが、明確な結論は得られなかったのです。その後も長く、研究者たちが自信を持って偽物という根拠を提出しているのに対し、番組側は沈黙するばかりでした。そのうち話題にも上らなくなりました。研究者たちはちゃんと正しく声を上げましたし、たぶん誰も幸福にしない結論は、出す必要もないかも知れません。今、中国福建省の建窯近くの水吉鎮などでは大量に曜変天目の土産物が売られているそうです。つまり曜変天目は中国でもちゃんと高く評価されていて、観光客相手であっても、商魂逞しい中国の方々は、何としても模造品を造り上げますよね。どんな土産物曜変天目なのか見てみたい気はしますが。
土産で思うのですが、印刷技術が良くなった、布物の光沢や質感はかなりいろいろ出来る時代の今、静嘉堂さんのミュージアムショップの曜変天目ハットやポーチ類の曜変柄はヒドイと思います。ぬいぐるみは流石にちょっと質が良いですが。今度ぬいぐるみキーリングが新登場していましたね。キーリングにしてはデカくてじゃまくさですが(笑)。
「黒の工芸」は素敵なものが多いです。今回のお気に入りは《黒織部茶碗 銘うたたね》《黒楽不二図茶碗》《太平有象唐墨形火炎太鼓象嵌印籠・黒檀彫衝立に唐子根付》《黒釉銹斑共蓋小壺》でした。神秘の光彩の謎解明はまだまだ遠いですが、こういう展覧会もありですね。何よりめったに観れないでしょう宙に浮遊する如き国宝《曜変天目》、会期はまだあります。まだの方は、ぜひ丸の内に足をお運びください。

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