4.0
【古典篇】
石川九楊の作品は一見すると抽象表現にも見える。しかし、読み解いていくと確かに文字が、言葉が綴られている。そうした点で、いわゆる前衛書とは一線を画すものだと思われる。
石川九楊の作品を鑑賞するとき、2つの楽しみ方があると思う。まずは、全体を鑑賞し、作品から受ける印象を味わう。これは絵画的に見ると言っても良い。次に書いてある内容を読み解いていく。
釈文と照らし合わせれば1文字ずつの姿が現れてくる。その上で全体をまた味わうとことばの内容と合致した表現が見えてくる。
こうした点で、徳野大空《草原》や青木香流《ゆき》などの表現のひとつの深化した姿ともいえるのではないか。
また、極端にデフォルメされた文字で構築される作品を支えているのは、なんと言っても鍛え上げられた線。強い線だからこそ、画面が引き締まっている。これがただの線ならば素人臭さが残り、これほど魅力ある作品にならなかっただろうと思う。
後期も楽しみにしたいと思う。