3.0
今・巣立つアート―VOCA展―
The Vision of Contemporary Artの頭文字をとってVOCA。
VOCAは全国の美術館学芸員、研究者+関係者に40歳以下の若手作家を推薦し、その作家の新作出品で未知の優れた才能を発掘紹介している現代美術展。
全国の書店員が選ぶ『本屋賞大賞』の美術版のような感じでしょうか。
評価が十人十色の昨今、既に淘汰されまくった前時代の美術とは違って、作者も評価者も存命な現代は色々と賛美両論に満ちて難しい。。。
それでも今回で開催30回目という節目を迎え、世に新たなアートを開示し、受賞アーティスト達は淘汰の海に進出していく機会の1つとなるVOCA展。
同じ【今】を過ごす作家達の感性を共有できる展覧会は、過去の偉人達のものとはまた違う魅力があり、若手アーティスト達にエールを贈りたくなる展覧会でした。
今回運営事務局様よりいただいたチケットで10年以上ぶりの訪問が適い、この場を借りて御礼申し上げます。
改めて会場は上野公園内で最もJR改札に近い上野の森美術館。予約不要で撮影も基本的には可能です。
油彩、版画、陶器、ちょっと変わったところで枝(普通に木の枝)、衣服等、展示している作品のツールはバラエティーに富んでいます。
鑑賞の第一印象とは別に、ホームページで作家達の作品への想いやコンセプトをコメント動画で視聴できるのもポイント高いですね。その中の注目作をちょっとだけご紹介。
VOCA賞受賞【山衣(やまごろも)をほどく】永沢碧衣作
全体は夜の里山の風景ですが、中央の山は山岳信仰の対象ともなるクマの姿。
藍色ベースで、カラフルさで目を引くのでは全く無いのですが、根拠もなく妙に気配が強いというか、不思議に存在感のある作品。
斃れたクマの身体がそのまま山全体を表していて、山の中腹には人の生活を支えるダムがあり、信仰の場となる神社の鳥居も、生活感のある小さな集落もあります。
永沢さんは受賞コメントで、作品の場所が慣れ親しんだ東北地域の山地をモチーフにしている事や、猟友会で仕留めて対面した熊の体毛を膠(にかわ)材として使用した事など、思想や現実を踏まえた興味深いお話されていて、色々と鑑賞しながら考えさせられる作品です。
その他の受賞者のコメントもホームページから視聴できる(会場でも視聴できればなお良かったかな・・・)ので、何度も味わえる中国茶のように異なる愉しみの鑑賞となるVOCA展。今後も新たな才能の発見が楽しみです。