4.0
写真と向き合い、自分と向き合う
写真だけの展覧会はたぶんはじめての鑑賞だったので、正直、最初は写真の何を見ればいいのかわからず、30分ほどで会場を一巡してしまった。もう一度ゆっくりと回りながら、石内都が映したものから何が読み取れるだろうか、と考えてみた。
石内都の写真は、遺品など個(故)人性が強い被写体にもかかわらず、フラットな印象で匿名性が強い。そのせいか反射的に自分に思考が向かうような気がした。本展での石内作品のいくつかで印象的だったのは、死や過去を直視させる一方で、日常の風景やものは霞んでいるということ。私にとって何を見つめることが大切なのか、反省的に考えさせられる時間だった。
それを可能にしたシンプルかつ単調ではない展示デザインについても評価したい。さまざまな高さで壁面に余裕をもって配置された写真は、心地よいリズミカルさがあって、鑑賞者の歩みのペースとともに思考を促してくれるようだった。しばしの自分と向き合う時間がほしい方にはぜひ訪れてみてほしい展覧会。