4.0
秀逸な展示構成
奈良原一高のこれまで焦点が当たっていなかったシリーズに着目した展覧会。作り込まれた作品のイメージがあったが、ここでは、高度成長期のスペインの伝統と革新の間にある文化、人々が生き生きと映し出されている。世田谷美術館の展示室の個性をうまく捉えた展示構成で、見慣れた作品群も新鮮に見えた。
写真集『スペイン 偉大なる午後』の全ページをバナーに一挙掲載した最後のコーナーは少しわかりづらいので、見逃さないようにしたい。
最後に奈良原氏のご冥福をお祈りいたします。
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1950年代後半、極限状況での生を見つめる〈人間の土地〉や〈王国〉などのシリーズによって、戦後日本の新しい写真表現を切り開いた奈良原一高(1931-)。本展では、これまでほぼ取り上げられることのなかった1960年代のシリーズ、〈スペイン偉大なる午後〉に注目します。
経済成長とオリンピックに日本が沸いていた1962年から65年、若き奈良原はそこから距離を置くように、ヨーロッパで自らの表現を問い直す旅に出ていました。帰国後、ふたつの写真集『ヨーロッパ・静止した時間』(1967年)と、『スペイン 偉大なる午後』(1969年)が生まれます。
つくりこまれた重厚なイメージが展開する『ヨーロッパ・静止した時間』が高い評価を得たのに対し、闘牛や祭り、村の暮らしといった、紋切り型のスペインのルポルタージュに見える『スペイン 偉大なる午後』は、今日に至るまで本格的に検証されてきませんでした。
幼い頃に暮らした長崎の街への愛着からスペインへの憧れをはぐくんだ奈良原は、ヨーロッパ滞在中、3度にわたってかの地を訪れ、5か月あまりを過ごしました。自ら「約束の旅」と名づけた道のりの痕跡として残された作品の数々は、人々の生きざまへの共感と、歴史や文学、美術をめぐる思索に裏打ちされた類まれな想像力とが生み出した、ダイナミックなイメージの奔流というにふさわしいものです。
ところで当時、スペイン社会は過渡期にありました。内戦後長らく鎖国状態を保持していたフランコ政権が観光客の誘致に乗り出し、中世の面影をそのまま残すとさえいわれた地方の村々でも変化が始まっていたのです。奈良原の写真は、人々の暮らしも文化もいずれ姿を変え、失われてゆくとひそかに予感しながら撮られたものでもあります。
本展では、奈良原一高アーカイブズ所蔵のニュープリントにより、奈良原一高のスペインを鮮やかによみがえらせます。プロローグとして、シリーズ〈ヨーロッパ・静止した時間〉から15点、ついで〈スペイン 偉大なる午後〉から120点、計135点のモノクローム作品を展覧。
写真集『スペイン 偉大なる午後』は、闘牛がテーマの「偉大なる午後」に始まり、祭りの熱気を活写した「フィエスタ」、人々の生きざまを見つめる「バヤ・コン・ディオス」へと展開しますが、本展は奈良原がスペインと出合ってゆくプロセスをより身近に体感できるよう、異なる構成で「約束の旅」の軌跡をたどります。
会期 |
2019年11月23日(土・祝)~2020年1月26日(日)
|
---|---|
会場 |
世田谷美術館
![]() |
展示室 | 世田谷美術館 1階展示室 |
住所 | 東京都世田谷区砧公園1-2 |
時間 | 10:00~18:00 |
休館日 |
月曜日 12月29日(日)~1月3日(金) 1月14日(火) ※ただし1月13日(月・祝)は開館 |
観覧料 | 一般 1,000円(800円) 65歳以上 800円(600円) 大高生 800円(600円) 中小生 500円(300円)
|
TEL | ハローダイヤル:050-5541-8600 |
URL | https://www.setagayaartmuseum.or.jp/ |
4.0
奈良原一高のこれまで焦点が当たっていなかったシリーズに着目した展覧会。作り込まれた作品のイメージがあったが、ここでは、高度成長期のスペインの伝統と革新の間にある文化、人々が生き生きと映し出されている。世田谷美術館の展示室の個性をうまく捉えた展示構成で、見慣れた作品群も新鮮に見えた。
写真集『スペイン 偉大なる午後』の全ページをバナーに一挙掲載した最後のコーナーは少しわかりづらいので、見逃さないようにしたい。
最後に奈良原氏のご冥福をお祈りいたします。
4.0
ヨーロッパの写真がメインでした。その中でもスペインの牛追い祭りは人々の楽しそうな表情印象に残りました。
奈良原さんが旅した60年代スペインは高度経済成長期を迎えていたそうで、田舎の写真は人々の日常を上手にとらえていました。
1.0
スペインは今も昔もそれほど変わっておらず、古き良き時代を上手に残していると思いました。冬のパリの景色やヴェネツィアも展示されており、ヨーロッパ好きな方には楽しめるかも知れません。ゆったりと贅沢に鑑賞することが出来ました。
3.0
平日に訪問。天候のせいか空いており、ゆっくり観覧できました。テーマ別に展示があります。ヨーロッパの写真もありますがメインはスペインです。およそ50年ほど前の写真ですが、あまり古さを感じさせません。それが良くも悪くもあるのでしょうか、平板な感じがしてしまいました。最後のカレンダーやカラー写真は鮮やかでしたが、全体としてじっくり見入る感じではなかったです。出口を左に曲がった壁沿いに大きなバナーがあり、写真撮影可能とのことですので忘れずにどうぞ。
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奈良原一高《フィエスタ セビーリャまたはマラガ》〈スペイン 偉大なる午後〉より 1963-65年 © Ikko Narahara
奈良原一高《偉大なる午後 マラガ》〈スペイン 偉大なる午後〉より 1963-64年 © Ikko Narahara
奈良原一高《偉大なる午後 パンプローナ》〈スペイン 偉大なる午後〉より 1963-64年 © Ikko Narahara
奈良原一高《フィエスタ パンプローナ》〈スペイン 偉大なる午後〉より 1963-64年 © Ikko Narahara
奈良原一高《フィエスタ パンプローナ》〈スペイン 偉大なる午後〉より 1963-64年 © Ikko Narahara
奈良原一高《バヤ・コン・ディオス コルドバ》〈スペイン 偉大なる午後〉より 1963-64年 © Ikko Narahara
奈良原一高《バヤ・コン・ディオス》〈スペイン 偉大なる午後〉より 1963-65年 © Ikko Narahara
奈良原一高《フィエスタ セビーリャまたはマラガ》〈スペイン 偉大なる午後〉より 1963-65年 © Ikko Narahara
奈良原一高《バヤ・コン・ディオス コルドバ》〈スペイン 偉大なる午後〉より 1963-64年 © Ikko Narahara