3.0
三つのグループの、それぞれの構成各人の個性が、響き合っている展示。
都美術館ギャラリーABCは、特別展の当日半券で入場やぐるっとパスで入場可、全く無料の場合もありますが、現代アートが苦手な私は、いつも少々頭が痛くなります。今展は三つの団体のグループ展でした。
ギャラリーA「スティル・エコー:境界の風景」は、日本の「境界の風景」をテーマとする、グループ展でした。キュレーター小原真史氏の明治錦絵の博覧会コレクション(結構有名どころの作品見多くあり、見どころが沢山あります)と3人の写真家の作品で展示構成されています。都美術館の位置する上野公園は、1877年の第一回内国勧業博覧会以降、幾度となく博覧会が開催されてきた場所で、かつてここには植民地への理解や移住、投資を促すパビリオンがいくつも建ち並んでいたということなのです。日本が急激な近代化をおしすすめる中での、負の副産物の帝国主義的進出を行う過程で生ん出来たものの残骸と、サハリンの風景と、東日本大震災と、其々の過去と現在の、「境界の風景」を扱っています。当然にして、なんだか見ていてすごく辛い、としか言いようがありません。過去から現在へ連続する自己のアイデンティティに境界を見出すこと、容認することは。
ギャラリーC「回遊する風景」いずれも海外に滞在経験のある作家5人の風景をテーマとした作品で、「回遊魚が大海を巡ったのちに故郷の河川に戻るように、作者の記憶にある風景がそれぞれの心の真ん中を通過し、新たな風景として見る人の胸に届くこと」を企図したものだといいます。地下2階にあるギャラリーCは、一般住宅居室とほぼ同じ、美術館としてはかなり低い天井高2.4mの展示室と、地下3階(ギャラリーA)の天井高5.8mの吹き抜けとなっている部分の周りの廻廊状の展示空間とで構成されています。この特異な展示空間は、ややもすれば展示の連続性を絶ち主題をもぼやけさせてしまう難しい空間です。そこに、生け花の飾られる茶室など屋内(閉鎖的空間)の密閉感のある展示を展開し、回廊の開放的な空間では、文字や絵画の作品で、作品ともどもに開放感を増幅させて、上手く使いこなせていたと思いました。更に回廊展示室のL字型の最奥に向井三郎氏の《鳥》、最初の端にバックランド美紀氏の《Quiet after the snowfall》雪景があり、展示空間上の明暗を際立たせ、「回遊する風景」の演出を仕上げている感じでした。
ギャラリーB「ずれ はからずも … Read More