鑑賞レポート一覧

奈良大和路のみほとけ ―令和古寺巡礼―

奈良大和路のみほとけ ―令和古寺巡礼―

山口県立美術館|山口県

開催期間:

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仏像の後はコレクション展を是非

2024GW後半4連休の初日に山口県美へ。何かと話題になってる山口市だが、人通りはいつもと変わらず少ない。
まあ、日本一地価が安い県庁所在地、県は県で魅力度ランキングでも40位台の常連ですから。
でも、この県立美術館はいい企画展をやるんだな、これが。
今回は奈良の著名寺院から仏像を借りてきての特別展。山口の次がミホミュージアムなので、期待できると踏んだ。
訪問前日の地元ローカルニュースでは、当展入場者が1万人を超えたとのこと。
会期開始後19日で1万人だから、1日当たり500~600人。地方にしては好調な出だしだろう。

会場入口でお迎えしてくださるのが、聖林寺の十一面観音菩薩立像。大きな仏像だ。
ただキャプションには模刻とある。え?と拍子抜けするもその再現性は素晴らしい。
完璧といっていいほど素晴らしいのだが、やっぱりトップバッターには本物持ってきてほしかった。
レプリカを交えながら数合わせするのかと、いきなり疑心暗鬼になりながら歩を進めれば以後はそんなことなく、ホンモノがちゃんと来てくださってて一安心だった。

この企画展に参加している寺院は、奈良市およびその周辺の斑鳩、明日香、當麻と広範囲で、奈良県のお寺巡り的な様相もある。
各寺の解説に加えて、大和路の仏様たちを愛した文筆家たちの一文を紹介し、奈良に行った気にさせてくれるという趣向だ。
参加寺院は全部で15。うち私が行ったことあるのは9つ。一番最近ではこの2月に行った新薬師寺がある。
珍しかったのは柳生の南明寺。今は檀家以外には非公開とのこと。

国宝は2点で、法隆寺の観音菩薩立像、通称《夢違観音》と、東大寺の《弥勒菩薩坐像》。後者は前期展示のみ。
どちらもさすがのオーラを放っておられます。重文も多数あるが、奈良の仏像はどれを見ても全部国宝じゃないかと思ってしまう。

ちょっと異色なのは唐招提寺の重文《如来立像》。メインビジュアルにある数点の中の一つだが頭部と手の先がない「トルソー」なんですと。
物は言いようで、まあ珍しいっちゃ珍しいのだろう。
他には馬頭が紛失した《馬頭観音菩薩立像》(大安寺)とか、もうちょい選択肢はなかったのかと思ったりもする。
私含めて田舎もんは、やっぱり完全体を見たいのです。罰当たりな言いぐさですみません。

仏像以外では五鈷杵や独鈷杵などの法具、曼荼羅などに見るものあり。
當麻寺の中将姫の坐像が来てたのも、コロナ前に夫婦で行ったのを懐かしく思い出した。中将湯のロゴがなんでお姫様なのか、わかりますよ(笑)

展覧会の最後は入江泰吉の写真で締めくくり。
2月の新薬師寺参拝時に、隣の入江記念館にも訪問してたのだが、その時出てなかった仏像写真が見れてよかった。
奈良の風景と仏様たちを撮り続けた入江の数々の写真は、「そうだ、奈良行こう」との思いに駆り立ててくれるはずだ。

企画展会場出たら、いつものようにコレクション展示室へ。入場料300円は企画展に含まれていないけど、企画展半券見せれば200円引きになる。
今やってる展示は、日本画と写真と松田正平の素描&水彩画。これが実に良かった。

日本画は兼重暗香、横山松琴、松林雪貞の3人の大正~昭和期の女性画家。
兼重は当館常設展によく出てくるのでどうやら「推し」みたい。花鳥画が上手い。
松林雪貞は松林桂月の夫人だそうで、今回出ていた《雁来香朝顔図》と《長春花図》は素晴らしかった。

写真室のテーマタイトルは「レディ、レディ、レディ!-写真家が見つめた昭和の女性」。
名だたる写真家たちが撮った戦後の昭和女性ショットに感動だ。
林忠彦、木村伊兵衛、奈良原一高と、写真に疎い私でも知ってる写真家を始め、全13名が登場しその作品に完全に飲み込まれてしまった。
木村の《秋田おばこ》、生写真を初めて見た。美人の瞳は漆黒じゃないんだ。
常盤とよ子は当館ではおなじみだ。横浜裏街ガールたちのリアルさは何度見てもいい。
深瀬昌久。初めて見た写真家で今回いちばんガツンときた。《洋子》から5点出ていたが、そこにいる「人」の表情がいい。
そしてそれを仕留める腕。プロが撮って作品として発表する人物写真って、こういうのを言うんだろなと思った。

松田正平の部屋。今回のテーマは「線こそ命」だそう。
でもその線が上手いんだか下手くそなんだかよくわからんのが松田先生の良さ。香月の1本必殺の線とはまた違った、味のある線だ。
ハゲ(山口県でのカワハギの呼び名)、オコゼ、タコ、飼っていた犬、鯉のぼり、漁船、そしてバラ。
バラ描きの三名人は、梅原、児島、そして松田なんですと。梅原と児島はわかるけど松田先生を入れちゃっていいのかな(笑)
でもやっぱり松田のバラは好きだ。
裸婦像の素描もあった。これは香月が描いたのとよく似ていた。両者ともヌードはあんまり得意じゃなかったと思えます(笑)

2024年に行くべき世界第3位の山口市。冷やかしで来られたら山口県立美術館には是非行って見てください。来てよかったと思えるはずです。
7月からはいよいよシベリアシリーズ始まります。

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