日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション
東京都現代美術館|東京都
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現代美術という標本採集
アートでも美術でもよいのだが、そこに「現代」と接頭語が付くと途端に「難解」とか「前衛」とかのイメージが同時に発生し、素人の出る幕を拒否するかのような感覚に陥る。実際そんな現代美術を目にしてきた感想もやっぱりわしには何がえーんかわからんわ。である。
それでも残りの人生、見ておくべき作者や作品はあると信じて、この高橋コレクション展へと足を運んだ。
高橋龍太郎さんなるかたは全然知らず、展覧会告知の前書きですごいコレクターというのはわかった。精神科のお医者さんだそうで、戦後の日本現代美術に絞って3000点超のコレクションを保有されてるんだそう。
学歴紹介はなかったが、展示資料で慶応医学部に進まれた秀才だとわかった。東大理Ⅲ界隈の最高峰、日本でいちばん学力のある連中のお一人だ。
高橋さんと現代美術との関わりは合田佐和子や草間彌生からだったみたいで、特に初期の草間作品の出展数は多く、氏はヤヨイストだったんだなと思った。
前半の展示室には、私でも知ってる作家の所謂「わかりやすい」作品が並ぶ。村上隆、会田誠、山口晃、池田学、横尾忠則なんかは当展レビューのほとんどに上がってくる名前だ。
昔の8㎜カメラCM「私にも写せます」じゃないが、「私にもわかります」だね。まあだいたい、普通の感覚で美術鑑賞する方はみんなそうでしょう(笑)
私は勝手に会田、山口、池田の三人を「藝大細密三羽烏」と称しているが、やっぱ上手いしスゴイし美しい。
今回、会場入り口で展示リストと鉛筆もらって、好きな作品と嫌いな作品に○と✕をつけながら会場を回った。○が多かったのはやはり最前半の展示室で、私の好みは上記した作家たちに集約されているんだなと再認識した。昭和生まれは昭和生まれに愛着があるんです(笑)。
でも、M山D道とか、M村Y昌とか嫌いな作家も当然出てて✕をつけてます。
展示中盤あたりからは、未知の作家の世界。千葉一成の《ダンテ「神曲」現代解釈集》は良かった。今回の収穫。
だけど、○はそれで終わって、あとはもうほとんど記憶に残ってない。✕をつけるのもめんどくさくなって。
若手作家さん方のエンタルピーは感じるのだが、エントロピー拡大に抗えないというか、「芸術は爆発だ」の誤解釈も甚だしい作品が多すぎるね。
現代アートを自分なりに解釈し個人的な好みとしての良し悪しを決めたい。それには何らかの尺度的な指標がほしいとずっと思ってきた。
もちろんアートなんて動物的直感として右脳が反応するかどうかだと思ってるから、別にそういう分析は不要と言えば不要なのだが。
で、たどり着いたのが「エントロピー」という物差し。要は、乱雑さ、無秩序さ、ハチャメチャ度である。
エントロピーはほっとけば増大する一途であり、アートで言えばそれを抑制するところに人智であり技が介入し作品となる。
けど、人間楽して成功したいと思うのは常で、とにかくアイデア勝負の一発芸でウケたらそれで食ってくかみたいな作家が多すぎないか。
当展に出てた端的な例を三つほどあげておく。
一つは透明アクリル容器に砂を入れ、そこに蟻を放って穴を掘らせ、横から見た巣穴を作品としたもの。それって作者は蟻だろ。違いますか、柳幸徳さん。
国立国際美で初めて見て唖然としたのだが、評価する人はいるもんだね。
二つ目は前衛書道。当展には華雪なる書家作品が出てたが、この人に限らず前衛書道家はみんな同じ穴のムジナだ。彼らが書く謎の文字(らしきもの)は、とにかくエントロピー拡大しまくりのやりたい放題で、それに何百万もの値段が付くってんだからねえ。
三つめは、私でなくても誰もがそう思うはず。
作品名は忘れたが、ロボットアームにペン持たせてランダムに動かして書かせたグチャグチャ線画。それ以外にもあるのかどうかは知らないが、まあこれはエントロピー拡散芸の最たるもんでしょう。
高橋さんが集めておられる現代美術なるもの、果たしてどれもが「良い」と思って購入されるのでしょうか。上記したロボット画からすると、とにかく時代の最先端を担う作家・作品を青田買いしているようにも思えます。私にはそれが「現代美術」という標本をひたすら採集してるかに見えてくるのです。
もうすでにこの世に出てるかもしれませんが、AIが描いた絵は真っ先に高橋コレクションに名を連ねるはずです。
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