生誕110年 松田正平展
山口県立美術館|山口県
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わが町の誇り
松田正平生誕110年の回顧展に行ってきた。
10年前の100年展に行ってから、長かったような短かったような、待ちわびてたような、いつも見てきたような。
松田さんの絵は、そんな空気のような存在感があるなあと、改めて思った。
山口県が生んだ三大洋画家ってのを個人的に制定してる。香月泰男、小林和作、そして松田正平だ。
最初の二人に比べて松田さん(あえて敬称つけます)の知名度は劣るかもしれない。
でも、一度見たら忘れられない絵なんだなあ、これが。
東京美術学校卒だから、ベースは確たるものがある。事実、青年~壮年期は厚塗りの重厚な絵を主体に風景、人物、静物とモチーフも多彩に描き続けている。
が、還暦になろうかという頃、1970年ぐらいから画風が一変、薄塗りを繰り返しながらも素朴で色彩感あふれる作品となっていく。
晩年の30年間ぐらいが松田絵画が開花した次期だ。
開花と書いたが、バラの絵が最も松田さんが多く取り上げたモチーフだろう。
先ごろTV番組「なんでも鑑定団」にもそのバラの絵が出てきて、一見バラとはわからないがよく見ると確かにそうだと思ったかたも多かろう。
今回の展覧会にも3点出ていて、花弁を太線で縁取りして描いたバラは、切り花でありながら生命感がみなぎっている。
そして松田さんの飼い犬、四国犬の絵。これも数多く描いている。
この犬、名を「ハチ」といい、渋谷の忠犬と違っていかにも気性の激しそうなヤンチャ坊主のようだ。
特に1990年の作品は、上手いのか下手くそなのかわからないような絵なのだが、わざと頭を平面的に描いて、口から火を吐いているかのような真っ赤な舌が飛び出ている様がなんとも愉快痛快な傑作だ。
松田さん、パリにも行けば日本国内も旅して絵を描いている。その中で印象に残るのは《大威徳明王》。
六面六臂六足(顔と手と足が6つ)、水牛に乗ったものすごい明王を、これまたユーモラスというか軽妙に描いているのだが、青の身体、赤の光背、黄色の水牛の薄塗トリコロールと相まって、閻魔をも打ち倒すという強さを温和な親近感に変えてくれている。
キャプション読めば、この明王は真木大堂のそれだとのこと。3年前にコロナの合間を縫って、GOTOで行った国東半島で邂逅した大威徳明王の記憶がよみがえった。
私が松田さんを好きな理由は、故郷山口県の瀬戸内海風景を数多く描いてくれていること。
香月は山口県の風景画はほとんど描いておらず、小林は居を尾道に移し、そこでの絵が多いことに対し、松田さんが描く海や島、港の風景は、宇部、光、祝島といったわが山口県のものだ。
そこが本当にうれしくて、わが住む町の誇りだと思うのだ。
うちには松田さんの絵が飾ってある。
何年か前の山口銀行のカレンダーが松田画シリーズで、その中の1枚、秋吉台の絵を切り取ってダイソーで買った額縁に入れて壁に掛けた。
松田さんの絵は空気のような存在感があると書いた理由は、いつもその絵が目に入るからかもしれない。