画人たちの仏教絵画 ―如春斎再び!―
西宮市大谷記念美術館|兵庫県
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仏画に浸る秋天好日
10月下旬の秋晴れの日曜日、久しぶりに大谷美術館へと足を運んだ。
最寄り駅は阪神香櫨園駅で、駅からは阪神高速沿いを歩いて10分弱で到着。「せとうち美術館ネットワーク」の割引券使って入場料は200円引きだ。
2階の展示室へと上がり、この秋の特別展「画人たちの仏教絵画」会場へと入る。客はほとんどいなくて快適快適。アレで沸き返る阪神地区の喧騒とは無縁の世界だ(笑)
この企画展の中心人物は二人、勝部如春斎と原在中。いずれも初めて聞く名で江戸中期の絵師である。仏画は専門の仏画師がいたそうだが、この二人は専門ではないとのこと。
会場に入って反時計回りに歩を進めていくと、まず目を引くのは二幅並んだ大きな涅槃図だ。
仏画展の導入としてナイスな作品で、向かって右が原在中の作、左が作者不詳とのことだが、どちらも絵が鮮明かつ色が美しいのが素晴らしい。
いろんな寺院にある国宝や重文級の涅槃図は古いのが多く、お釈迦様以外は何が描いてあるのかわからないことがよくあるが、この二点は涅槃図とは何ぞやの問いへの回答としてはパーフェクトだ。
続いては、いよいよ勝部如春斎の《三十三観音図》が全点登場してくる。
如春斎は地元西宮の造り酒屋に生まれ、家業は継がずに大坂狩野派を学んで絵師となった人物。
この仏画は、地元の禅寺茂松寺(もしょうじ)所蔵のもので、数年前に一度公開され今回は二度目だそう。
サブタイトルに「如春斎再び」とあるのはそういう意味だ。
サイズは縦1m✕横50㎝ぐらいですべて軸装。画面の上部に仏様、下部に人々という基本スタイルとなっている。
この絵の元ネタは、東福寺の画僧明兆が描いた三十三幅で、如春斎はそれをほぼ完コピしたんだそう。墨絵がベースで部分的に彩色されており、これが効果的。
全33点は、最初のうちは丹念に見るのだが途中からやや退屈にはなってくる。でも、如春斎が妻の三回忌供養のために描いたものなので、いかんいかんと自分を戒めながら鑑賞です。
続いては原在中の《三十三観音図》で、京都府田辺市の酬恩庵一休寺所蔵のもの。原在中なる人も全然知らなかったが、応挙の門人ともそうでないとも諸説ある絵師だ。
この観音図も、如春斎のとほぼ変わらない構成で、上部に仏様、下部に庶民から貴人までが描かれている。
当館二階の展示室は、今回この二人の観音図66点で埋まっているので、やはり単調と言えば単調だ。
しかし全部異なる観音様を味わい尽くすコンプリート展という意味からすれば、大谷美術館渾身の企画展と言っていいと思う。
階下の展示室へと降りれば、江戸期の著名画人たちの仏画が並ぶ。探幽に始まり、白隠、大雅、文晁、竹田、其一と、ビッグネームが描く仏様を有難く鑑賞できた。
日ごろはさほどこういうジャンルに馴染みないかたにも、例えば、岸連山と耳鳥斎の《野菜涅槃図》のような面白可笑しい絵もあったりするので、単調さや退屈さも紛れるはずです。
仏画に合掌礼拝した後は、綺麗に手入れが行き届いた庭園も必見です。
館内からのんびりと池を眺めるもよし、外へ出て庭を回って流水を愛で、水琴窟の音に癒されるもよし。
今週末から11月下旬ぐらいまでは紅葉もピークとなって、秋の静かなひとときを満喫できると思います。