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出会いと、旅と、人生と。ある画家の肖像 日本近代洋画の巨匠 金山平三と同時代の画家たち

出会いと、旅と、人生と。ある画家の肖像 日本近代洋画の巨匠 金山平三と同時代の画家たち

兵庫県立美術館|兵庫県

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間違いなく巨匠です

神戸市出身の画家というと誰を思い浮かべますか?
いちばん有名なのは小磯良平でしょう。神戸市立小磯記念美術館もあるぐらいですし。
(ただ、アートアジェンダには登録ないのが残念。何度もお願いはしたのですが。)
日本画では、先日まで京都で記念展やってた橋本関雪でしょうか。

そしてもう一人、神戸市元町生まれの洋画家に金山平三がいるのであります。
その名を聞いてすぐわかるかたは、多くはないかもしれません。
かくいう私も、兵庫県立美術館の常設展示室で、小磯と同等のスペース割いて展示してある金山作品に出会うまでは知りませんでした。
それがちょうど昨年の今頃です。
絵はそれまでにも見たことあったかもしれません。でも小磯ほどは知名度ないので記憶に金山という名は刻まれていませんでした。

そして、2023年、金山生誕140年(関雪と同じ年の生まれなんだ!)の年に、兵庫県美で特集企画展が開催です。
彼の略歴はウィキや、展覧会HP、あるいは当サイトでの先行レビューなどに詳しいので、ご参照ください。
とにかく、東京美術学校の洋画科を首席卒業したという経歴は、同郷の小磯の大先輩にもあたります。
作品も流石首席というだけの腕前で、どの作品も安心納得の満足感をもって鑑賞できます。

そのモチーフは風景が主体。人物画の小磯、風景画の金山という一文がありましたが、まったくその通りです。
当企画展は、いくつかのテーマ毎に作品を集めてありますが、そのテーマは金山の画業に沿った概ね年代順となっています。

第1章「センパイ、トモダチ」では満谷国四郎、柚木久太、新井完、児島虎次郎らの作品と共に、金山の明治末期から大正初期の作品が並びます。
特に柚木や新井らと中国大陸へ写生旅行に頻繁に出かけており、当地での風景画に往時がしのばれます。

第2章のテーマは「壁画への道」。
壁画とは、聖徳記念絵画館に寄贈される絵画のことで、その依頼を受けた金山は、なんと9年もの歳月をかけて絵を完成させたそう。
金山がその献上作品のモチーフとしたのは、日清戦争における平壌での戦いで、本物は来ていませんが下書きが何枚も展示されていました。
聖徳記念館に行けば、その作品は見られるのですが、私は正直記憶に残っていませんでした。
平原で戦う日本兵、軍馬などを背後から描いたもので、画面の半分以上を占めるのは空。
戦争画というには、インパクトは弱いのですが、倒れた兵士を介抱する者、馬上から身を乗り出して兵士を見やる将校など、想像上の従軍体験を感じさせる入魂の作です。

第3章は「画家と身体ー動きを追いかけて」。
金山が描いた芝居絵の世界です。大病後に余興的に描き始めたものだそうで、忠臣蔵の各場面が断片的にスケッチ、彩色された作品が並びます。
ただ、本章タイトルにあるように、人の動きや所作の探求には熱心だったようで、金山が夫人と共に踊っているのを撮らせたフィルムが会場で流されていたのを面白く拝見しました。

第4章「生命への眼差し」では、静物画。
目を引くのは花瓶に生けた菊を描いた作品《菊》。ルドンほど華やかではありませんが、白、黄、紅の菊が萎れたのを含めリアルに描かれています。
他にも皿の上の果物や魚なども取り上げていて、静物描かせてもやはり上手いなあと感心してしまいます。

最終章「列車を乗り継いでー風景画家の旅」。
洋画家金山平三の実力が遺憾なく発揮された名品群で当展は締めくくられます。
そのモチーフはやはり風景。日本全国を旅した金山、就中、東北と甲信越での作品が本当に素晴らしい。
《冬の諏訪湖》での空と湖と雪の青と白がなんと美しいことか。
はたまた、山形県大石田でしょうか、《猫のいる風景》には頬を緩めてしばらく見入ってしまいました。

金山は80歳没ですが、晩年になるほど風景画に磨きがかかっているように思います。
いや、若い頃の作品でも十分素晴らしいのですが、えてして大作家が晩年は幼児回帰みたいになる例はあるので、金山の画家としての練達曲線は最後まで右肩上がりだったと思うのです。

「私の最高傑作は次回作だ」と言ったのはチャップリン。金山平三も同じ言葉を言ったのではないでしょうか。

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